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プロローグ
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『前方 敵機体 多数 防御形態 移行 推奨』
耳に流れてきたのは残酷なAIオペレターの危険信号だった。目の前で起きる残酷な真実に目を背けてしまいたいとそう思ってしまった。
「───た、助けてください!!隊長おぉぁおぁぁぉ!!!うぁあああ───!!!」
「───隊長!早く指示を!!このままでは……」
「───第二防衛ライン突破!このままでは最終防衛ライン到達まで時間がありません!!」
聞こえてくる通信はすべて助けを求めるもの。命が紙屑同然に潰され、消えていく。
ここは尊き命が塵も同然に失われる場所。空は決して陽を差すことはなく、生命など育つはずもない荒廃しきった場所を蒼く染め上げている存在こそが人類の敵───神兵
多くの仲間たちは死んでいった。人類の為だと言って散っていった機体の残骸が大地に無数に転がっている。聞こえてくるのは死ぬ刹那の仲間の声、怒り悲しみに染まったその声を前に思考は停止した。
「───隊長!!?前ぇぇぇええええぇぇええ!!」
気を抜いていたその一瞬だった。目の前に飛び掛かってきたのは二体の神兵。危険を知らせるその声が耳に届いたときには手遅れだったことに気付いた。防御態勢を即座にとろうとするが全く持って時間が足らなかった。
「───うわぁぁぁあああああぁぁぁぁぁぁあああ!!」
「ホント邪魔だな、こいつら」
後方から風の如く現れたのはローブを全身に纏った漆黒の機体。迫りくる神兵達を赤黒く禍々しい大鎌で一瞬にして胴体を二つに切り裂いた。その勢いは収まることを知らず、助けを求めて叫んでいる機体に群がっていた神兵ごと容赦なく横一線に一刀両断した。走り抜けながら切り裂いたその斬撃は周辺の砂煙を吹き飛ばした。
時間差で爆発した炎に照らされたその全体と大鎌を見た誰もが口を揃えていった。
「───戦場の死神」
軍の指示には従わず、己が欲望の為に戦う。どの部隊にも属さずにこの最前線を闊歩する存在。仲間を仲間とも思わず非人道的行動を繰り返し、その見た目から『戦場の死神』と呼ばれていた。
「───あれは……零部隊のザックス!!?」
「───バカな!!あの数の神兵を一瞬で!?」
「───アイツ!!我らの同志ごと切り裂きやがった!!」
近くで見た者は驚愕していた。自分もその一人だった。仲間もろとも殺したこともそうだったが、それよりもあの一瞬で5体もの神兵を瞬殺したことに驚きが隠せなかった。その時、一本の直接回線で通信が入ってきた。
「───オズワルド第一隊長、これは好機です。奴が、死神を使えばこの状況は打破できます!!」
「───だが……奴に連携は無理だ」
「その話乗った」
回線に割り込んできたのはザックス───死神だった
「貴様!?通信を傍受すr……」
「マキノから預かってきたものがあるんだ。これを使えばこの状況は抜け出せるよ。どうする、隊長さん?」
その声はどこか怪しさを感じた。声色の奥底から嘲笑っているようなそんな感覚に苛まれた。
そう言って取り出してきたのは3m程の蒼く点滅しているカプセル状の筒だった。
「これはなんだ!?」
「これは後方火器支援マーカーだったかな?これを投げたところに新兵器の攻撃ができるっていう仕組みらしいよ」
「こ、これは……」
それを見た時、声を失った。それは支援マーカーなどではないことを理解したからだった。
───それは……悪魔の兵器だ
「隊長!!このシルビアが隙を作ります。その間に隊列を組み直して下さい!!今こそ、我々人類の意地を見せるときです!!」
「じゃ、コレ君に渡すよ。行ってらっしゃい、英雄さん」
「お前のような化け物に使われるのは癪だが、これも人類の為だからな。今回は従ってやろう」
いつの間にか話は決まっていて、シルビアの機体に手渡されていた。それ持ったシルビアは機体のエンジンをフル回転し始め、神兵の大群に向かって構えていた。
「このシルビルが先陣を切って見せましょう!!」
「シルビア副隊長、待つんだ!!」
勢いよく飛び出して行ってしまった彼に声は届かなかった。土埃を上げて大地を蒼く染まった大地にたった一機で突撃していく。自分の不甲斐無さに苛立ち、拳で目の前の計器を殴った。それとは対照的に死神は高笑いを始めた。腹を抱えているかのように最後には引き笑いしていた。
「全くこれだから無能って言われるんだよ。戦況すら理解できずに突っ走ることしかできない馬鹿には最高の名誉がお似合いだよ。身を挺して仲間を守った英雄ってさ!!?」
「お前……どうしてあんな嘘をついたんだ!!あれはマーカーなんかじゃない。爆弾だということをどうして言わなかったんだ!!」
「え?だって君だって知ってて言わなかったじゃないか?戦場はいつだって残酷さ。それなのに仲間とか絆なんて希望という綺麗事で隠そうとする。そんなものに意味はない。ここに存在するのは理不尽で救いようのない絶望だけなんだよ。見て見ぬふりをした君も同罪、仲間より自分を優先した愚かな隊長さん」
「まさか!?お前、わざと俺を試すように……!!」
「さぁ、始めよう」
通信に映る彼の顔は満面の笑み。その笑っているにもかかわらず感じる恐怖、狂気はまるで……
「───悪魔」
次の瞬間、シルビアが向かっていった方角で青白い超爆発が起こった。計り知れない爆音と爆風が戦場を駆け巡る。爆心地では大地は赤く熱せられ、神兵の残骸すら溶かす火力。爆風の勢いは機体に乗っていても姿勢を低くしていなければ飛ばされそうになるほどの暴風だった。通信も一時的に使用不能となり何が起こったのか理解できない何万という隊員たちの戦線ラインは完全に壊滅した。
緒爆発の威力は天高くまで届き、重く太陽を塞いでいた雲に大穴をこじ開けた。そこから見えたのは晴天、大穴から降り注ぐ太陽の光は多くの命が消えていった戦場を幻想的な光柱で照らした。
「綺麗な空、お前もそう思うだろ、ベリアル」
高台に停止した機体から出てきたのは少年だった。漂白したように抜け落ちた白い髪を揺らしながら、外の空気を感じるように深呼吸をする。まるで機体に語り掛けるように装甲を叩きながら空を見上げていた。その下、見下げる戦場には右往左往する機体達と煙が無くなり全貌が露わになった爆心地には巨大なクレーターが出来上がっていた。
『───やっと繋がったな!いきなり出撃していったい何を……って、またとんでもない事をしでかしてくれたみたいだね!??』
「すごいね、あの爆弾。綺麗な青色」
『───はぁ…………あれはまだプロトタイプだったんだよ。勝手に使ったらまたマザーの奴に小言を言われるなこれは……まぁいいさ、君はもう戦える身体じゃない。もう帰ってきな。当分、出撃は禁止だよ』
「はいはい、帰るよ。それよりさ!早く見つかるといいな、僕のパートナー」
耳に流れてきたのは残酷なAIオペレターの危険信号だった。目の前で起きる残酷な真実に目を背けてしまいたいとそう思ってしまった。
「───た、助けてください!!隊長おぉぁおぁぁぉ!!!うぁあああ───!!!」
「───隊長!早く指示を!!このままでは……」
「───第二防衛ライン突破!このままでは最終防衛ライン到達まで時間がありません!!」
聞こえてくる通信はすべて助けを求めるもの。命が紙屑同然に潰され、消えていく。
ここは尊き命が塵も同然に失われる場所。空は決して陽を差すことはなく、生命など育つはずもない荒廃しきった場所を蒼く染め上げている存在こそが人類の敵───神兵
多くの仲間たちは死んでいった。人類の為だと言って散っていった機体の残骸が大地に無数に転がっている。聞こえてくるのは死ぬ刹那の仲間の声、怒り悲しみに染まったその声を前に思考は停止した。
「───隊長!!?前ぇぇぇええええぇぇええ!!」
気を抜いていたその一瞬だった。目の前に飛び掛かってきたのは二体の神兵。危険を知らせるその声が耳に届いたときには手遅れだったことに気付いた。防御態勢を即座にとろうとするが全く持って時間が足らなかった。
「───うわぁぁぁあああああぁぁぁぁぁぁあああ!!」
「ホント邪魔だな、こいつら」
後方から風の如く現れたのはローブを全身に纏った漆黒の機体。迫りくる神兵達を赤黒く禍々しい大鎌で一瞬にして胴体を二つに切り裂いた。その勢いは収まることを知らず、助けを求めて叫んでいる機体に群がっていた神兵ごと容赦なく横一線に一刀両断した。走り抜けながら切り裂いたその斬撃は周辺の砂煙を吹き飛ばした。
時間差で爆発した炎に照らされたその全体と大鎌を見た誰もが口を揃えていった。
「───戦場の死神」
軍の指示には従わず、己が欲望の為に戦う。どの部隊にも属さずにこの最前線を闊歩する存在。仲間を仲間とも思わず非人道的行動を繰り返し、その見た目から『戦場の死神』と呼ばれていた。
「───あれは……零部隊のザックス!!?」
「───バカな!!あの数の神兵を一瞬で!?」
「───アイツ!!我らの同志ごと切り裂きやがった!!」
近くで見た者は驚愕していた。自分もその一人だった。仲間もろとも殺したこともそうだったが、それよりもあの一瞬で5体もの神兵を瞬殺したことに驚きが隠せなかった。その時、一本の直接回線で通信が入ってきた。
「───オズワルド第一隊長、これは好機です。奴が、死神を使えばこの状況は打破できます!!」
「───だが……奴に連携は無理だ」
「その話乗った」
回線に割り込んできたのはザックス───死神だった
「貴様!?通信を傍受すr……」
「マキノから預かってきたものがあるんだ。これを使えばこの状況は抜け出せるよ。どうする、隊長さん?」
その声はどこか怪しさを感じた。声色の奥底から嘲笑っているようなそんな感覚に苛まれた。
そう言って取り出してきたのは3m程の蒼く点滅しているカプセル状の筒だった。
「これはなんだ!?」
「これは後方火器支援マーカーだったかな?これを投げたところに新兵器の攻撃ができるっていう仕組みらしいよ」
「こ、これは……」
それを見た時、声を失った。それは支援マーカーなどではないことを理解したからだった。
───それは……悪魔の兵器だ
「隊長!!このシルビアが隙を作ります。その間に隊列を組み直して下さい!!今こそ、我々人類の意地を見せるときです!!」
「じゃ、コレ君に渡すよ。行ってらっしゃい、英雄さん」
「お前のような化け物に使われるのは癪だが、これも人類の為だからな。今回は従ってやろう」
いつの間にか話は決まっていて、シルビアの機体に手渡されていた。それ持ったシルビアは機体のエンジンをフル回転し始め、神兵の大群に向かって構えていた。
「このシルビルが先陣を切って見せましょう!!」
「シルビア副隊長、待つんだ!!」
勢いよく飛び出して行ってしまった彼に声は届かなかった。土埃を上げて大地を蒼く染まった大地にたった一機で突撃していく。自分の不甲斐無さに苛立ち、拳で目の前の計器を殴った。それとは対照的に死神は高笑いを始めた。腹を抱えているかのように最後には引き笑いしていた。
「全くこれだから無能って言われるんだよ。戦況すら理解できずに突っ走ることしかできない馬鹿には最高の名誉がお似合いだよ。身を挺して仲間を守った英雄ってさ!!?」
「お前……どうしてあんな嘘をついたんだ!!あれはマーカーなんかじゃない。爆弾だということをどうして言わなかったんだ!!」
「え?だって君だって知ってて言わなかったじゃないか?戦場はいつだって残酷さ。それなのに仲間とか絆なんて希望という綺麗事で隠そうとする。そんなものに意味はない。ここに存在するのは理不尽で救いようのない絶望だけなんだよ。見て見ぬふりをした君も同罪、仲間より自分を優先した愚かな隊長さん」
「まさか!?お前、わざと俺を試すように……!!」
「さぁ、始めよう」
通信に映る彼の顔は満面の笑み。その笑っているにもかかわらず感じる恐怖、狂気はまるで……
「───悪魔」
次の瞬間、シルビアが向かっていった方角で青白い超爆発が起こった。計り知れない爆音と爆風が戦場を駆け巡る。爆心地では大地は赤く熱せられ、神兵の残骸すら溶かす火力。爆風の勢いは機体に乗っていても姿勢を低くしていなければ飛ばされそうになるほどの暴風だった。通信も一時的に使用不能となり何が起こったのか理解できない何万という隊員たちの戦線ラインは完全に壊滅した。
緒爆発の威力は天高くまで届き、重く太陽を塞いでいた雲に大穴をこじ開けた。そこから見えたのは晴天、大穴から降り注ぐ太陽の光は多くの命が消えていった戦場を幻想的な光柱で照らした。
「綺麗な空、お前もそう思うだろ、ベリアル」
高台に停止した機体から出てきたのは少年だった。漂白したように抜け落ちた白い髪を揺らしながら、外の空気を感じるように深呼吸をする。まるで機体に語り掛けるように装甲を叩きながら空を見上げていた。その下、見下げる戦場には右往左往する機体達と煙が無くなり全貌が露わになった爆心地には巨大なクレーターが出来上がっていた。
『───やっと繋がったな!いきなり出撃していったい何を……って、またとんでもない事をしでかしてくれたみたいだね!??』
「すごいね、あの爆弾。綺麗な青色」
『───はぁ…………あれはまだプロトタイプだったんだよ。勝手に使ったらまたマザーの奴に小言を言われるなこれは……まぁいいさ、君はもう戦える身体じゃない。もう帰ってきな。当分、出撃は禁止だよ』
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