異世界初心者の冒険

海生まれのネコ

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第一章 惑星クリスタにて

3・まだまだ勉強中

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1・

僕の勘違いは、まだまだ沢山あった。

ファンタジー風の服装の神様や龍神様がいたり、転生させるなんてネタを使ってくるので、この世界は元いた世界と大違いで魔物が徘徊する剣と魔法の世界だと思っていた。

しかし僕のために縫われた龍神のヒラヒラ衣装を着て病院を一歩出た瞬間、うっすら感じてはいた違和感の原因を目の当たりにした。

透明な物質の筒で出来た道路の中を走る、車輪のない列車のような浮いている乗り物。

元いた世界じゃここまで発展したビル群はない、巨大で背の高い建物たち。

それが広々とした土地に適度な距離を置いてあり、かつ自然が美しく整備されていて空気が澄んでいる。

空にはポツポツとだけど、見知っている飛行機の動きをしていない飛行物体がある。

明らかにこの世界は、僕のいた地球よりも遥かに進んだ文明だ。ファンタジーじゃない、サイエンスフィクションの世界だ。きっとナノテク以上だ。

あまりの風景に呆気に取られて立ち尽くしていると、しばらくは待ってくれていた神官さんたちは、そのうち僕を空を飛ぶ方の乗り物の一つに押し込んだ。

この船で遠くに行くのかと思っていたら、病院の目の前にあったギリシャ神殿風にも思える巨大な柱で屋根を支える形の建物の傍まで行き、降りた。

歩けば良かったじゃんと思ったが、そうもいかないようだった。

神殿の真正面の巨大な扉は開放されていて、きっとお祈りに来ているのだろう一般人たちがたくさんいた。

そんなところを龍神衣装の僕が通ろうとしたら、また倒れかねないと皆思ったようだ。僕も思う。

そういう訳で、僕らは一般人立ち入り禁止区域から神殿に入った。

日々徹底的に掃除されているのか清潔に保たれ、かつ美しい調度品などが光っている赤絨毯の廊下を長々と歩いた。

神官さんと龍神たちが暮らす居住区に到着し、僕のための広い部屋に到着できた時は、正直疲れていた。

だが車椅子生活を真っ先に拒否したい僕は頑張り、素晴らしい部屋だと笑顔で感謝し、あちこち見回わろうとした。

そしたら早いこと、神官の衣装ではなく礼服らしきものを着た一人の男性に腕を掴まれ止められた。

「ご無礼をお許し下さい、ノイエ様。私は貴方の家庭教師として任ぜられたアッシュ・クロフォードと申します。はしゃがずに、休憩を取って頂けますか?」

あまりにタイムリーなので少し驚きつつも、願ったり叶ったりなので僕の方が小声で謝罪した。

そして無駄にたくさんあるソファーの中から、適当なものに座りに行った。

僕が落ち着くと、神官さんたちは僕の前にお茶とお菓子を素早く準備し、雑多な用事を済ませるといなくなった。

家庭教師さんと二人きりになり、少し緊張した。

「……あの、クロフォードさん?」

「はい、なんでしょうか?」

キリッとした態度と口調にエリート感が半端なく感じられて眩しかったが、その攻撃をこらえて質問をしてみた。

「質問して良いですか?」

「なんなりと、どうぞ」

「どうして神官さんには、女性がいないのですか?」

そう、昨日から物凄く不思議だった。ファンタジーな物語でポピュラーなのは、回復魔法を使う美人の神官や司祭だと思うのに、一人も見当たらない。

クロフォードさんは、ああそれですかという表情で教えてくれた。

神官にも女性はいる。しかし始祖の龍神様が男であった為か、力の親和性が男のほうが断トツに高いそうだ。なので基本的に、神官は神に近しい男性の仕事らしい。とても残念だ。

元々、龍神様の子供たちといえども、その死から四万年! 経った現在の子供たちなど、本来は龍神の姿に変身できるような血の濃さがあるわけじゃない。

このノイエを含めた幾人もの龍神たちを生み出した力は、始祖の龍神様が星の循環エネルギーと同化させた彼自身の魔力。

星に宿るその力が、汲み上げる井戸として優れた能力を持つノイエのような存在に宿り、龍神に変化させる。

龍神が死ぬと魔力は星の中に還り、その力は次の龍神となるべきもののところに流れる。それを四万年ほど繰り返し、今に至るようだ。

そして、始祖の龍神様の力には限界があるらしい。

同時期に多数の龍神がいる場合、限度のある力を分け合うことになるので、一人が突出して優秀なことは稀だそうだ。

しかしその分、手数が増えることで同時に多数の地点を守護することも可能なので、一人が良いか多数か良いかは一概には言えないという。

守護すると聞いて、僕は動揺した。

「つまり、星を守護する必要があるということは、敵がいるということですね!」

これこそ僕が転生した理由だと意気込んでいうと、クロフォードさんは微笑んだ。

「まあ確かにおりますが、雑魚程度ですよ。アレンデール様は優秀な戦闘力を持つ龍神ですので、問題のある時空獣は既に撃退済みです。宇宙深部に赴けばもちろん手強いのは存在しますが、まずこの星には来ません。ご安心を」

「ええ? でもじゃあなんで……いやいや、そのうち攻めてくるに違いないから……」

クロフォードさんは、目をぱちくりした。

「ノイエ様は、思った以上に好戦的なのですね?」

「あ、いやその、来てもらいたくないから……星が壊れたりしたら大変だから、どうにか対策を考えたくて」

「お優しい故ですか。でもそれは杞憂です。今現在、この星を守護するのは、龍神様方だけではありません。宇宙文明の半分を支配する、我らバンハムーバ宇宙艦隊があるのですから」

「ん?」

なんか物凄い単語を聞いた。

「う、宇宙の半分を支配って?」

「ええ。我らバンハムーバの一族は、四万年におよぶ宇宙文明の歴史を乗り越え、二大勢力の一翼を担うまでに成長したのです」

「あ、じゃあもう一つの勢力が攻めてくるなんて危険性は?」

「歴史としてはあります。けれどすでに実力行使の領土争いなど、時代遅れにも程があります。もう一つの勢力ユールレムとの関係はいたって良好で、時折王族の方々が気軽に遊びにいらっしゃいます」

「ええ? じゃあその……星が壊れそうな災害が発生したりは?」

「龍神様が一人も居られなくなると、星の自然をコントロール出来ずにそうなる可能性があります。しかし、現実的な説ではありません」

「……と言うことは、今は物凄く平和なんですね?」

「はい、その通りです。それもこれも、歴代の龍神様方が我らを守り支えてくれたおかげです。私は貴方様の家庭教師となれて、本当に幸せでございます」

クロフォードさんは心底龍神を尊敬しているようで、キラキラお目々で僕を見つめた。

中身が偽物の僕はうっとなり、微笑んで返した。

「平和って良いですよねえ……」

「はい」

目つきが鋭いけれどいたってフレンドリーなクロフォードさんは、僕の質問タイムが終わるとこれからのスケジュールを軽く教えてくれた。

今日は、このまま休日に。明日は朝から身体測定をする。その後しばらく休養というスケジュールのみなので、難しいことはなにもない。

……と思うのだが、クロフォードさんは時折周囲を見回したり、扉の方を気にする仕草をみせた。何かあるらしい。やはり平和ではないのかもしれない。

まだ気を緩められないと、覚悟した。
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