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15>> わたくしの婚約者
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カッシム様はわたくしとは同い年です。カッシム様の最愛の人であるソフィーナ・マバ男爵令嬢も同じです。
カッシム様とソフィーナ様はこの学園で出会い、恋に落ちました。
侯爵家の嫡男であるカッシム様はその生まれだけで令嬢たちからの注目を集めていたのですが、そのお顔もそこそこ整っているので、カッシム様を見てトキメキを覚える令嬢も居た様です。そしてそんなカッシム様の婚約者がわたくしのような欠陥品だと皆が知ると下位貴族の御令嬢たちは更に色めき立ちました。わたくしがお飾りの妻になる事が目に見えていたからです。
侯爵家同士の政略結婚の為にわたくしを追い落とす事は侯爵家を敵に回す事と同意なので誰も目に見えてわたくしとカッシム様の仲を邪魔するという事はされませんでしたが、カッシム様を落とせば『侯爵当主の最愛の愛人』という立場が確定している事から、家から婚約者を付けられる事なく将来は侍女かメイドかの二択しかなかった下位貴族の御令嬢たちは──文官を目指すような賢い女性はそもそも"愛人"の立場など求めません──我先にとカッシム様に群がりました。そしてその中でカッシム様のお心を射止めたのがソフィーナ様なのです。
可愛らしい見た目と豊満な体を持つソフィーナ様は、わたくしから見ても魅力的だと思います。
彼女はわたくしを見るとその可愛らしい顔に優越感を浮かべてカッシム様にくっついてはわたくしを笑います。
前に言われました。
「わたくしは元々子供とか産みたくなかったの。だって体型が崩れるでしょ? どこかの正妻になったら絶対に子供を産まなくちゃいけなくなるからどうしようかと思っていたのよね~。カッシム様の愛人になったら、ただ愛される生活が保証されるわ♡ 好きな物だっていくらでも買っていいんだって♡ だって正妻の貴女はなーんにも要らないんですものね。その分わたくしが着飾ってカッシム様を楽しませてあげるから安心して♡
貴女は頑張って、ま・と・も・な・子供を産んで、正妻の仕事を熟せばいいわ。カッシム様はわたくしが愛してあげるから♡」
その言葉にカッシム様は笑っていました。
「なんてソフィーナは心が広いんだろうな。欠陥品で無能な女の為に陰で俺たちを支えてくれると言うんだ。お前も心から感謝しろよ。
もしお前がまともな男児を産まなければ、その時はお前に生きる意味は無いと思えよ。直ぐにでも離婚してやるからな。
本来ならソフィーナの中に全部ぶちまけたいものを、仕方なく……仕方なく、貴族の義務としてお前にあげるんだからな。
……あぁ、今から憂鬱だ……こんな女を抱かなきゃいけないなんて…………ソフィーナならいくらでも相手に出来るだろうに、こんな女相手に俺はちゃんとデキるだろうか……いくら貴族の義務だとしてもこんなツラい事を俺はちゃんとできるだろうか………」
わたくしとの閨事の心配をするカッシム様は絶望に顔色を悪くされていました。そんなカッシム様にソフィーナ様が寄り添います。
「あぁ、カッシム様……本当におかわいそう……カッシム様が望むならお二人の初夜にわたくしもお手伝いに上がりますわ。
目を瞑って相手の体がわたくしであると想像すれば、カッシム様だってきっとお役目を果たせると思いますの」
「おぉ! それは良いな! ソフィーナの声を耳元で聞かされていれば、相手の体がこんな女だろうと頑張れそうな気がするよ!」
「えぇそうでしょう! そうしましょうね♡」
「あぁ!」
この話を目の前でされた時は本当に地獄でした。新婚初夜に愛人が同席する事が決まったのです。
自分の純潔が散らされる瞬間に他の女が自分の夫と愛を囁きあっているところを見せられるかもしれないなんて、誰が受け入れられるでしょうか。そこまでして何でわたくしはこの男に抱かれなければいけないのでしょうか。
その話を聞かされた日のわたくしは一人で泣きました。涙が溢れて止まらなかったのです。泣くことしか自分には許されなかったのです。
…………でも今は違います。
人知れず泣くことしか出来なかったわたくしはもう居ないのです。
わたくしを蔑ろにしてきたカッシム様。
わたくしも貴方が嫌いです。
だからわたくしも抗います。
貴方なんかと絶対に婚姻したくありませんから。
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カッシム様はわたくしとは同い年です。カッシム様の最愛の人であるソフィーナ・マバ男爵令嬢も同じです。
カッシム様とソフィーナ様はこの学園で出会い、恋に落ちました。
侯爵家の嫡男であるカッシム様はその生まれだけで令嬢たちからの注目を集めていたのですが、そのお顔もそこそこ整っているので、カッシム様を見てトキメキを覚える令嬢も居た様です。そしてそんなカッシム様の婚約者がわたくしのような欠陥品だと皆が知ると下位貴族の御令嬢たちは更に色めき立ちました。わたくしがお飾りの妻になる事が目に見えていたからです。
侯爵家同士の政略結婚の為にわたくしを追い落とす事は侯爵家を敵に回す事と同意なので誰も目に見えてわたくしとカッシム様の仲を邪魔するという事はされませんでしたが、カッシム様を落とせば『侯爵当主の最愛の愛人』という立場が確定している事から、家から婚約者を付けられる事なく将来は侍女かメイドかの二択しかなかった下位貴族の御令嬢たちは──文官を目指すような賢い女性はそもそも"愛人"の立場など求めません──我先にとカッシム様に群がりました。そしてその中でカッシム様のお心を射止めたのがソフィーナ様なのです。
可愛らしい見た目と豊満な体を持つソフィーナ様は、わたくしから見ても魅力的だと思います。
彼女はわたくしを見るとその可愛らしい顔に優越感を浮かべてカッシム様にくっついてはわたくしを笑います。
前に言われました。
「わたくしは元々子供とか産みたくなかったの。だって体型が崩れるでしょ? どこかの正妻になったら絶対に子供を産まなくちゃいけなくなるからどうしようかと思っていたのよね~。カッシム様の愛人になったら、ただ愛される生活が保証されるわ♡ 好きな物だっていくらでも買っていいんだって♡ だって正妻の貴女はなーんにも要らないんですものね。その分わたくしが着飾ってカッシム様を楽しませてあげるから安心して♡
貴女は頑張って、ま・と・も・な・子供を産んで、正妻の仕事を熟せばいいわ。カッシム様はわたくしが愛してあげるから♡」
その言葉にカッシム様は笑っていました。
「なんてソフィーナは心が広いんだろうな。欠陥品で無能な女の為に陰で俺たちを支えてくれると言うんだ。お前も心から感謝しろよ。
もしお前がまともな男児を産まなければ、その時はお前に生きる意味は無いと思えよ。直ぐにでも離婚してやるからな。
本来ならソフィーナの中に全部ぶちまけたいものを、仕方なく……仕方なく、貴族の義務としてお前にあげるんだからな。
……あぁ、今から憂鬱だ……こんな女を抱かなきゃいけないなんて…………ソフィーナならいくらでも相手に出来るだろうに、こんな女相手に俺はちゃんとデキるだろうか……いくら貴族の義務だとしてもこんなツラい事を俺はちゃんとできるだろうか………」
わたくしとの閨事の心配をするカッシム様は絶望に顔色を悪くされていました。そんなカッシム様にソフィーナ様が寄り添います。
「あぁ、カッシム様……本当におかわいそう……カッシム様が望むならお二人の初夜にわたくしもお手伝いに上がりますわ。
目を瞑って相手の体がわたくしであると想像すれば、カッシム様だってきっとお役目を果たせると思いますの」
「おぉ! それは良いな! ソフィーナの声を耳元で聞かされていれば、相手の体がこんな女だろうと頑張れそうな気がするよ!」
「えぇそうでしょう! そうしましょうね♡」
「あぁ!」
この話を目の前でされた時は本当に地獄でした。新婚初夜に愛人が同席する事が決まったのです。
自分の純潔が散らされる瞬間に他の女が自分の夫と愛を囁きあっているところを見せられるかもしれないなんて、誰が受け入れられるでしょうか。そこまでして何でわたくしはこの男に抱かれなければいけないのでしょうか。
その話を聞かされた日のわたくしは一人で泣きました。涙が溢れて止まらなかったのです。泣くことしか自分には許されなかったのです。
…………でも今は違います。
人知れず泣くことしか出来なかったわたくしはもう居ないのです。
わたくしを蔑ろにしてきたカッシム様。
わたくしも貴方が嫌いです。
だからわたくしも抗います。
貴方なんかと絶対に婚姻したくありませんから。
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