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20>> わたくしの水魔法
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リットン侯爵令息は右手の人差し指を立てながら、わたくしに持論を語ってくれました。
「僕はね、全ての人が100の魔力を持っていると思ってるんだ。その100の魔力を5属性が均等に分けてて、全ての人はそれぞれの属性の魔力を20ずつ持ってる。
数字に誤差があるから得意な属性魔法や苦手な属性魔法が出るって考えたら、自然だろ?
でね、その考えで言うと、君は水の魔力を100も持ってる事になるんだ。他の人が20のところを100だよ。凄くない?
そんな君が無能だなんて、僕はどうしても思えないんだよね。君は希代の水魔法士になってもおかしくないはずだ。
そんな君が人知れず魔法を使ってる……さて。
一体何をしていたのかなぁ……?」
内心楽しそうに、窺う様にわたくしの目を覗き込んでくるリットン侯爵令息に、わたくしは直ぐには返事をする事ができずに息を呑みました。
彼は……目の前の彼は、人生で一度も認められる事の無かったわたくしを、とんでもなく過大評価してくれたのです。
“希代の水魔法士”??? わたくしが???
言われた言葉の衝撃で、わたくしは少しばかり口が開いてしまいました。
慌てて口を閉じたわたくしは、リットン侯爵令息に「とんでもない」と言って頭を振り、頭を少し下げると視線を下に落としました。
人生で初めて、自分を認めてくれるかもしれない人が目の前にいる緊張で我を忘れてしまいそうですが、わたくしは彼の期待には応えられないという現実がわたくしの胃を締め付けます。
この方と……もっと昔にちゃんと話ができていたら良かったのに……
「リットン侯爵令息。
わたくしはそんな風に言ってもらえるような者ではありません……」
「どうして?」
「わたくしが皆から無能と呼ばれるのは、水の魔力しか持っていないからだけでは無いからです……」
「え?」
「わたくしの使える水魔法がこの程度だからです……」
そう言ってわたくしは右手を彼の前に出して、その手のひらの上に水を溜めて見せました。
手のひらから溢れた水がポトリポトリと落ちていきます。
流れるように……ではありません。ポトリ、ポトリ、とです。
その程度の水魔法しか使えなかったのです。前世を思い出す前のわたくしは。
「えぇ~……? え? これが全力……とか?」
わたくしの手のひらの水を見てリットン侯爵令息は少しだけ引いた様な気がします。そうでしょう。この程度の水なら、まだ平民の方がたくさん出せます。
わたくしが無能と言われる理由。その最たるものが『高位貴族の血を持ちながら、平民より劣る水魔法しか使えない』からなのです。
「……お恥ずかしながら……これが最大です……」
わたくしは手に力を入れて少しだけ水の量を増やしてみました。
手のひらから溢れる水がポトリポトリからボトリボトリに変わりました。水はサラサラとさえ流れません。その、程度なのです……前世を思い出す前のわたくしが使えた魔法は。
「えぇ~……?
水の魔力しか無いのならもっと水魔法に特化して、凄い水魔法が使える筈だけどな~……?
僕の考えが間違ってるのかなぁ……」
リットン侯爵令息が腕を組んで悩み始めてしまったので、わたくしは手のひらの水を止めて手を下げました。その時、濡れた手を乾かす為に手に付いた水を全て集めて雫にして地面に落としたのですが、悩み始めたリットン侯爵令息はその魔力の動きには気付かなかったみたいです。
「じゃあ、あの魔力の流れはなんだったの?」
不意に顔を上げたリットン侯爵令息にドキリとしましたが、わたくしは改めて用意していたセリフを伝えました。
「……リットン侯爵令息はわたくしの婚約者がわたくし以外の女性と親しくしているのを知っていますか?」
「あ~……、あれは、まぁ……有名だから……」
気まずそうに目を逸したリットン侯爵令息にわたくしは続けます。
「皆様は、わたくしが無能だから仕方がない、と言われますが……
だからわたくしが傷付かない……なんて事はないのです……」
「…………」
「だから……せめてもの仕返しに……二人に水でも頭から掛けてやりたいなって、そう……思っていたのです……」
「魔法を使おうとしたって事?」
「はい……魔法を使いたくて魔力を飛ばしていました……」
それを聞いてリットン侯爵令息は首を捻りました。
「魔力を飛ばしたけど、魔法は使ってない?」
「はい……わたくしは……昔からそうなのです……
わたくしは……まともに魔法が使えないのです」
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リットン侯爵令息は右手の人差し指を立てながら、わたくしに持論を語ってくれました。
「僕はね、全ての人が100の魔力を持っていると思ってるんだ。その100の魔力を5属性が均等に分けてて、全ての人はそれぞれの属性の魔力を20ずつ持ってる。
数字に誤差があるから得意な属性魔法や苦手な属性魔法が出るって考えたら、自然だろ?
でね、その考えで言うと、君は水の魔力を100も持ってる事になるんだ。他の人が20のところを100だよ。凄くない?
そんな君が無能だなんて、僕はどうしても思えないんだよね。君は希代の水魔法士になってもおかしくないはずだ。
そんな君が人知れず魔法を使ってる……さて。
一体何をしていたのかなぁ……?」
内心楽しそうに、窺う様にわたくしの目を覗き込んでくるリットン侯爵令息に、わたくしは直ぐには返事をする事ができずに息を呑みました。
彼は……目の前の彼は、人生で一度も認められる事の無かったわたくしを、とんでもなく過大評価してくれたのです。
“希代の水魔法士”??? わたくしが???
言われた言葉の衝撃で、わたくしは少しばかり口が開いてしまいました。
慌てて口を閉じたわたくしは、リットン侯爵令息に「とんでもない」と言って頭を振り、頭を少し下げると視線を下に落としました。
人生で初めて、自分を認めてくれるかもしれない人が目の前にいる緊張で我を忘れてしまいそうですが、わたくしは彼の期待には応えられないという現実がわたくしの胃を締め付けます。
この方と……もっと昔にちゃんと話ができていたら良かったのに……
「リットン侯爵令息。
わたくしはそんな風に言ってもらえるような者ではありません……」
「どうして?」
「わたくしが皆から無能と呼ばれるのは、水の魔力しか持っていないからだけでは無いからです……」
「え?」
「わたくしの使える水魔法がこの程度だからです……」
そう言ってわたくしは右手を彼の前に出して、その手のひらの上に水を溜めて見せました。
手のひらから溢れた水がポトリポトリと落ちていきます。
流れるように……ではありません。ポトリ、ポトリ、とです。
その程度の水魔法しか使えなかったのです。前世を思い出す前のわたくしは。
「えぇ~……? え? これが全力……とか?」
わたくしの手のひらの水を見てリットン侯爵令息は少しだけ引いた様な気がします。そうでしょう。この程度の水なら、まだ平民の方がたくさん出せます。
わたくしが無能と言われる理由。その最たるものが『高位貴族の血を持ちながら、平民より劣る水魔法しか使えない』からなのです。
「……お恥ずかしながら……これが最大です……」
わたくしは手に力を入れて少しだけ水の量を増やしてみました。
手のひらから溢れる水がポトリポトリからボトリボトリに変わりました。水はサラサラとさえ流れません。その、程度なのです……前世を思い出す前のわたくしが使えた魔法は。
「えぇ~……?
水の魔力しか無いのならもっと水魔法に特化して、凄い水魔法が使える筈だけどな~……?
僕の考えが間違ってるのかなぁ……」
リットン侯爵令息が腕を組んで悩み始めてしまったので、わたくしは手のひらの水を止めて手を下げました。その時、濡れた手を乾かす為に手に付いた水を全て集めて雫にして地面に落としたのですが、悩み始めたリットン侯爵令息はその魔力の動きには気付かなかったみたいです。
「じゃあ、あの魔力の流れはなんだったの?」
不意に顔を上げたリットン侯爵令息にドキリとしましたが、わたくしは改めて用意していたセリフを伝えました。
「……リットン侯爵令息はわたくしの婚約者がわたくし以外の女性と親しくしているのを知っていますか?」
「あ~……、あれは、まぁ……有名だから……」
気まずそうに目を逸したリットン侯爵令息にわたくしは続けます。
「皆様は、わたくしが無能だから仕方がない、と言われますが……
だからわたくしが傷付かない……なんて事はないのです……」
「…………」
「だから……せめてもの仕返しに……二人に水でも頭から掛けてやりたいなって、そう……思っていたのです……」
「魔法を使おうとしたって事?」
「はい……魔法を使いたくて魔力を飛ばしていました……」
それを聞いてリットン侯爵令息は首を捻りました。
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「はい……わたくしは……昔からそうなのです……
わたくしは……まともに魔法が使えないのです」
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