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3>> 貴族の婚約
リゼオンの、どうやら隠しているらしい恋人は、マリーナたちと同じ学園に通う男爵令嬢のカレナ・ドンドである事は実は有名な話だった。
当然マリーナも知っている。
カレナ・ドンド男爵令嬢は赤茶色のソバージュのかかった髪を掻きあげる仕草が色っぽい、とても豊満な胸を持つ女性だった。空の様な水色の瞳で見つめられると男性は一瞬言葉を忘れるらしい。
そんな女性とリゼオンは学園に入った半年後には親しくしていた。
今、マリーナたちは王立貴族学園の3年生だ。既にリゼオンは18歳を迎え、後2ヶ月後にはマリーナも18歳となる。
平民であればもう成人だ。
しかし貴族の子供たちが成人として扱われるのは学園を卒業してからとなる。だからといって彼らが子供として扱われるかと言われればそうでは無い。“準成人”の様な立ち位置の彼らはその自分達が置かれた微妙な立ち位置を自分たちで自覚していなければいけない。だが……一部の令嬢令息たちは卒業までは自分は子供だと、気を抜いてしまう者は多かった。
リゼオンもその一人だった。
婚約者以外の令嬢との秘密の関係を楽しんでいる。
学園生3年の殆どの者は、卒業後の事を考えて、家を継ぐ者は婚約者を迎える為の準備を、家を出る者は自分が入る新しい家との繋がりをより深める為の活動を始めている。独り立ちする者はより忙しくそして悩んでいる。どの立場の者でも遊んでいるほど暇ではない。
子供気分で居る者以外は……。
リゼオンはカレナとの関係を隠せていると思っているせいで余計に質が悪かった。
マリーナの事はちゃんと婚約者として扱い、何かあればエスコートもちゃんとする。ただ態度や言葉に常に棘があった。プレゼントなど自分の家の侍女に流行りの物を選んでもらってそれを贈るだけだった。自分でマリーナの為に選んだ事など一度も無い。だがリゼオンは、俺に会える事がマリーナへの褒美になるのにプレゼントまで忘れずに贈っているんだから俺ほど出来た婚約者はいないだろう、と考えていた。
婿入りしてやるのだから、準備はマリーナ側がして当然なので、自分は婚姻後にホブス伯爵家に行きそれから領地の事などホブス伯爵家のやり方を覚えればいいと本気で思っていた。
だからリゼオンは自由に出来る時間を使って自分のお気に入りの令嬢と楽しんでいる。
伯爵家へ婿入りすればマリーナに自分の自由を奪われるのだから、それまでの時間を自由に使うのは当然の権利だとリゼオンは考えていた。
リゼオンのそんな態度を、マリーナが自分の父親であるホブス伯爵家当主に相談した事が無い訳ではない。
しかしマリーナの父からは
「婚姻後までその関係を続けるというのなら考える」
という返事が返ってきただけだった。その言葉を『学生時代の遊びならば問題ない』と言われたと判断したマリーナは、それからはその事を話題に上げる事は無かった。
当主が気にしていない事を、その娘であるだけで何の権限もないマリーナが騒いでもどうしようもないからだ。
『気にするな』ではなく『時期が来れば考える』と父である当主は言ったのだ。婚姻前には父が結果を出すだろう。
マリーナは父の結果が出るまではリゼオンの婚約者であればいいだけなので、そのように納得した。
マリーナは柔らかい顔立ちのせいで誤解されがちだが中身はしっかりとした、
貴族の令嬢らしい令嬢だった。
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