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唇を震わせて言葉を紡ごうとするサバサに全員の視線が集中する。
その視線にサバサの心は恐怖する。
何の理由もなしにアリーチェに厳しくした訳ではない。理由があるからアリーチェとルナリアに違う態度を取った。無自覚でそれをしていた訳では無い。サバサだって自覚していた。
しかしそれを……
それを素直に言える程の勇気がサバサにはなかった。それに母親としてのプライドがサバサの口を閉じさせる。
全てを話してしまえば娘に負けてしまうような気がして、サバサの怯えていた心は一瞬にして怒りに染まった。
「わたくしはただこの侯爵家の事を思って行動しただけですわ!
何も間違った事はしておりません!!」
そう叫んだサバサの言葉にアリーチェは一瞬にして幻滅する。何が侯爵家の為だ。だったらアリーチェを次期当主にしておくべきだっただろう。それを全て壊して、まだ自分が侯爵家の為を思ってしたことだと『嘘』を吐く母親にアリーチェの残っていた全ての情が消え去った。
しかしそんな事に気付く筈もないサバサは自分の考えが正しいのだと全身で主張する。
「適材適所という言葉がある通り、アリーチェとルナリア、それぞれに適した役目を果たすべきなのです!
アリーチェが仕事をして、社交性のあるルナリアが社交界に出る!
なんらおかしいことではないでしょう!?!
姉妹二人でこの侯爵家を支えていってくれればいいと思ったのです!! その時に支えとなる夫に、好きな方と添え遂げられるならその方が良いとグリドくんの婚約者をアリーチェからルナリアに変えただけじゃない?! アリーチェだってグリドくんの事を好きじゃなかったのだから良いでしょう?! もっと貴女に合った男性を探してあげるんだからいいじゃない?! 大人しい貴女には同世代の子より年上の男性の方が合うと思った親心が何故わからないの!?!
わたくしだってちゃんと貴女の為に考えてあげてるんだから!!
それをなんで分かってくれないのよ!! 当主じゃなくなったからって何?! 当主の仕事はさせてあげるって言ってるじゃないの!?! 何が違うって言うのよ!? やることは同じでしょ!!
当主じゃなきゃ嫌だなんてっ、
それこそアリーチェの我が儘だわ!!!
わたくしはっ、……わたくしは、何も間違ったことはしておりません!!
全部この侯爵家の為なのですもの!!
当然、二人共わたくしが旦那様との間に産んだ子供ですわっ!!
他の男の種などと……っ、そんな気持ちの悪い侮辱を受ける謂れはありません!!!」
サバサの声は部屋に響いた。
しかし人の心には誰一人として響きはしなかった。
ムルダは冷めきったアリーチェの表情を見て疲れたように溜め息を吐いた。
これはもうどうすることもできないとその表情を見て悟った。
サバサは誰の疑問にも何一つ答えてはいない。
答える気さえないサバサとでは、このまま会話を続けても無駄だろうとムルダは思った。
ロッチェンに視線を向けたムルダにロッチェンも気付き視線を合わせる。
「こうなってはもう話し合いをしても意味はないだろう。どちらも意見を変える気がないみたいだからな」
そんなムルダの言葉にアリーチェは不思議そうに聞き返した。
「何のどこを変える必要があるのかも分からないのですが?」
そんなアリーチェの言葉にサバサが怒りを込めて反論する。
「わたくしは間違ってはおりませんわ!」
そんな二人のやり取りにムルダは堪らずにまた溜め息を吐いた。
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唇を震わせて言葉を紡ごうとするサバサに全員の視線が集中する。
その視線にサバサの心は恐怖する。
何の理由もなしにアリーチェに厳しくした訳ではない。理由があるからアリーチェとルナリアに違う態度を取った。無自覚でそれをしていた訳では無い。サバサだって自覚していた。
しかしそれを……
それを素直に言える程の勇気がサバサにはなかった。それに母親としてのプライドがサバサの口を閉じさせる。
全てを話してしまえば娘に負けてしまうような気がして、サバサの怯えていた心は一瞬にして怒りに染まった。
「わたくしはただこの侯爵家の事を思って行動しただけですわ!
何も間違った事はしておりません!!」
そう叫んだサバサの言葉にアリーチェは一瞬にして幻滅する。何が侯爵家の為だ。だったらアリーチェを次期当主にしておくべきだっただろう。それを全て壊して、まだ自分が侯爵家の為を思ってしたことだと『嘘』を吐く母親にアリーチェの残っていた全ての情が消え去った。
しかしそんな事に気付く筈もないサバサは自分の考えが正しいのだと全身で主張する。
「適材適所という言葉がある通り、アリーチェとルナリア、それぞれに適した役目を果たすべきなのです!
アリーチェが仕事をして、社交性のあるルナリアが社交界に出る!
なんらおかしいことではないでしょう!?!
姉妹二人でこの侯爵家を支えていってくれればいいと思ったのです!! その時に支えとなる夫に、好きな方と添え遂げられるならその方が良いとグリドくんの婚約者をアリーチェからルナリアに変えただけじゃない?! アリーチェだってグリドくんの事を好きじゃなかったのだから良いでしょう?! もっと貴女に合った男性を探してあげるんだからいいじゃない?! 大人しい貴女には同世代の子より年上の男性の方が合うと思った親心が何故わからないの!?!
わたくしだってちゃんと貴女の為に考えてあげてるんだから!!
それをなんで分かってくれないのよ!! 当主じゃなくなったからって何?! 当主の仕事はさせてあげるって言ってるじゃないの!?! 何が違うって言うのよ!? やることは同じでしょ!!
当主じゃなきゃ嫌だなんてっ、
それこそアリーチェの我が儘だわ!!!
わたくしはっ、……わたくしは、何も間違ったことはしておりません!!
全部この侯爵家の為なのですもの!!
当然、二人共わたくしが旦那様との間に産んだ子供ですわっ!!
他の男の種などと……っ、そんな気持ちの悪い侮辱を受ける謂れはありません!!!」
サバサの声は部屋に響いた。
しかし人の心には誰一人として響きはしなかった。
ムルダは冷めきったアリーチェの表情を見て疲れたように溜め息を吐いた。
これはもうどうすることもできないとその表情を見て悟った。
サバサは誰の疑問にも何一つ答えてはいない。
答える気さえないサバサとでは、このまま会話を続けても無駄だろうとムルダは思った。
ロッチェンに視線を向けたムルダにロッチェンも気付き視線を合わせる。
「こうなってはもう話し合いをしても意味はないだろう。どちらも意見を変える気がないみたいだからな」
そんなムルダの言葉にアリーチェは不思議そうに聞き返した。
「何のどこを変える必要があるのかも分からないのですが?」
そんなアリーチェの言葉にサバサが怒りを込めて反論する。
「わたくしは間違ってはおりませんわ!」
そんな二人のやり取りにムルダは堪らずにまた溜め息を吐いた。
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