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33>> サバサ・3
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姉を恨んだところで時間が止まる訳ではない。
両親もサバサが落ち込んでいるのは分かってはいたが、年頃になり、このまま嫁に出さずに守っていける訳でも無いので、サバサの為に縁談を用意した。
運良く侯爵家の嫡男との婚約を結ぶ事ができたので両親は喜んだ。
サバサは、これ以上の縁談はないと言われた。
それでもサバサの気が晴れる事はなく。初恋を引きずって泣いていた。
顔合わせの時が迫っているのにそんな状態の娘に母親は流石に焦った。
そしてつい言ってしまった。
「この婚約が駄目になったら、貴女を修道院に入れますからね」
母は軽く脅かしただけのつもりだった。
冗談で済ませられると、発言した母は思っていた。
しかしそれを言われたサバサは冗談だとは思わなかった。悲しい気持ちに更に絶望が積み重なった。母さえも自分の味方ではいてくれないのかと思った。
お姉様と仲の良いお母様は、やっぱり自分の事は好きではないのだと理解した。
絶望したままサバサはエルカダ侯爵家へと嫁いだ。
実家を離れればもう姉に会うことも母に会うことも滅多にないと割り切って、サバサは気持ちを新たに頑張ろうと決意した。
しかし、そんな決意もすぐに折れた。
エルカダ侯爵夫人である、ロッチェンの母、姑とサバサは相性が合わなかったのだ。
不器用なサバサに姑はきつく当たった。
『要領の悪い子が来たわ……しっかり教育しないと……』
と、姑は考えた。
そしてサバサを厳しく躾けた。
それでも、最初の頃はまだ姑にも優しさがあった。すぐに覚えられないサバサの質問にちゃんと答えてくれた。
しかしそれが何度も何度も続けば……
サバサにその気はなくても相手は不快感を覚える。苛立ちが募る。ここまでして何でできないんだと、付き合わされる身になってみろと、怒りが湧く……
姑のストレスが溜まれば溜まるほどにサバサへの当たりが強くなった。
ロッチェンに相談しても将来のサバサの為だからと宥めてくるだけで対処してくれない。実家には頼れない。あそこは姉の影響が強いから……
心労を溜め続けていたサバサだったが、ロッチェン自身は好きになれたので逃げ出すという考えにはならなかった。
そして待望の第一子。
サバサは産まれたばかりの子を胸に抱いて唖然とした。
──何これ──
姑みたい……
そう思っていたサバサに笑顔の姑が言った。
「次は男児ね」
その声はサバサには悪魔の声に聞こえた。
そして第二子が産まれた時、悪魔は更にサバサの心にナイフを飛ばしてきた。
「また女の子?
はぁ……うちも息子の代で終わりかしら……」
子を産んだばかりの疲れた頭に、その言葉は防御もなく突き刺さった。目の前が真っ暗になったサバサは思った。
──そんな事ないわ!! アリーチェが居るものっ!!──
ちゃんとしなきゃ!
やらなきゃ!!
わたくしはできるって示さなきゃ!!!
強迫観念に囚われたサバサは長女をしっかり教育しなければと心に決めた。
給金の高い人気の家庭教師に、マナー講師。教育に必要な人材を片っ端からアリーチェの為に選んだ。まだ赤子のアリーチェに……
自分は次女に母乳を上げなければいけないので、アリーチェの全てを乳母に任せた。難しいことは分からないから侯爵家の執事や家令に必要なことを任せた。
そして、できた時間でサバサはルナリアの育児をした。
ルナリアにつきっきりの日々。
可愛い可愛いルナリア。
次女のルナリア……
子育ての日々の中で、サバサの頭の中には何故か何度も何度も昔の記憶が浮かび上がる。
姉に虐げられた自分の記憶。
姉に何一つ勝てなかった嫌な思い出……
姉と比べられた悲しい幼少期……
サバサの記憶の中の姉がサバサを嘲笑う。
『出来損ないのサバサ』
そんな言葉を誰かに言われた気がした。
現実には起こらなかった出来事が、サバサの記憶の中でサバサを責める。
あぁ、酷いわヒドイわ……
二番目に生まれたからって、そんな風に言わなくてもいいじゃない
わたくしだって頑張ってるんだから……
サバサは腕の中の可愛らしい娘に、自分と同じ気持ちを味わわせたくないと思った。
自分に似た、可愛い可愛い娘に。
自分と同じ苦痛を絶対に経験させないようにしようと心に決めた。
そして、自分が守り切った暁には、ルナリアの生きる人生は、サバサの『理想の人生』そのものになるだろう……
きっと素晴らしいものになるだろう……
あぁ、可愛いルナリア……
今度は貴女が、お姉様を蹴落として、輝かしい人生を送るのよ……
次女を抱きしめて幸せそうに微笑むサバサの姿は、幸せそうな親子の姿そのものだった。
ロッチェンはそんなサバサを見て微笑む。
そこに長女が居なくても、母が聖母のように囁けば、その言葉は『愛情のある言葉』として皆の耳に届いた。
娘たちを愛している母親。
誰もがそう思ったサバサの本心は、
ただ自分しか愛していない子供のままだった……
───────
※サバサは『新しく生まれ変わったもう一人の自分(ルナリア)』を手に入れました。母親は『自分』です。『最高の人生にするぞ☆』って思ってます。
※サバサは『次女だから』だと理由をつけてますが、周りからしたら『サバサだから』だと思っています。不器用、自己中……迷惑被ってんのは周りだぞ?ってやつです(-.-)でもその全てをサバサは『自分が次女だからこんな目に合うのね(シクシク)』と考え、悲劇の中に浸かっています。
姉を恨んだところで時間が止まる訳ではない。
両親もサバサが落ち込んでいるのは分かってはいたが、年頃になり、このまま嫁に出さずに守っていける訳でも無いので、サバサの為に縁談を用意した。
運良く侯爵家の嫡男との婚約を結ぶ事ができたので両親は喜んだ。
サバサは、これ以上の縁談はないと言われた。
それでもサバサの気が晴れる事はなく。初恋を引きずって泣いていた。
顔合わせの時が迫っているのにそんな状態の娘に母親は流石に焦った。
そしてつい言ってしまった。
「この婚約が駄目になったら、貴女を修道院に入れますからね」
母は軽く脅かしただけのつもりだった。
冗談で済ませられると、発言した母は思っていた。
しかしそれを言われたサバサは冗談だとは思わなかった。悲しい気持ちに更に絶望が積み重なった。母さえも自分の味方ではいてくれないのかと思った。
お姉様と仲の良いお母様は、やっぱり自分の事は好きではないのだと理解した。
絶望したままサバサはエルカダ侯爵家へと嫁いだ。
実家を離れればもう姉に会うことも母に会うことも滅多にないと割り切って、サバサは気持ちを新たに頑張ろうと決意した。
しかし、そんな決意もすぐに折れた。
エルカダ侯爵夫人である、ロッチェンの母、姑とサバサは相性が合わなかったのだ。
不器用なサバサに姑はきつく当たった。
『要領の悪い子が来たわ……しっかり教育しないと……』
と、姑は考えた。
そしてサバサを厳しく躾けた。
それでも、最初の頃はまだ姑にも優しさがあった。すぐに覚えられないサバサの質問にちゃんと答えてくれた。
しかしそれが何度も何度も続けば……
サバサにその気はなくても相手は不快感を覚える。苛立ちが募る。ここまでして何でできないんだと、付き合わされる身になってみろと、怒りが湧く……
姑のストレスが溜まれば溜まるほどにサバサへの当たりが強くなった。
ロッチェンに相談しても将来のサバサの為だからと宥めてくるだけで対処してくれない。実家には頼れない。あそこは姉の影響が強いから……
心労を溜め続けていたサバサだったが、ロッチェン自身は好きになれたので逃げ出すという考えにはならなかった。
そして待望の第一子。
サバサは産まれたばかりの子を胸に抱いて唖然とした。
──何これ──
姑みたい……
そう思っていたサバサに笑顔の姑が言った。
「次は男児ね」
その声はサバサには悪魔の声に聞こえた。
そして第二子が産まれた時、悪魔は更にサバサの心にナイフを飛ばしてきた。
「また女の子?
はぁ……うちも息子の代で終わりかしら……」
子を産んだばかりの疲れた頭に、その言葉は防御もなく突き刺さった。目の前が真っ暗になったサバサは思った。
──そんな事ないわ!! アリーチェが居るものっ!!──
ちゃんとしなきゃ!
やらなきゃ!!
わたくしはできるって示さなきゃ!!!
強迫観念に囚われたサバサは長女をしっかり教育しなければと心に決めた。
給金の高い人気の家庭教師に、マナー講師。教育に必要な人材を片っ端からアリーチェの為に選んだ。まだ赤子のアリーチェに……
自分は次女に母乳を上げなければいけないので、アリーチェの全てを乳母に任せた。難しいことは分からないから侯爵家の執事や家令に必要なことを任せた。
そして、できた時間でサバサはルナリアの育児をした。
ルナリアにつきっきりの日々。
可愛い可愛いルナリア。
次女のルナリア……
子育ての日々の中で、サバサの頭の中には何故か何度も何度も昔の記憶が浮かび上がる。
姉に虐げられた自分の記憶。
姉に何一つ勝てなかった嫌な思い出……
姉と比べられた悲しい幼少期……
サバサの記憶の中の姉がサバサを嘲笑う。
『出来損ないのサバサ』
そんな言葉を誰かに言われた気がした。
現実には起こらなかった出来事が、サバサの記憶の中でサバサを責める。
あぁ、酷いわヒドイわ……
二番目に生まれたからって、そんな風に言わなくてもいいじゃない
わたくしだって頑張ってるんだから……
サバサは腕の中の可愛らしい娘に、自分と同じ気持ちを味わわせたくないと思った。
自分に似た、可愛い可愛い娘に。
自分と同じ苦痛を絶対に経験させないようにしようと心に決めた。
そして、自分が守り切った暁には、ルナリアの生きる人生は、サバサの『理想の人生』そのものになるだろう……
きっと素晴らしいものになるだろう……
あぁ、可愛いルナリア……
今度は貴女が、お姉様を蹴落として、輝かしい人生を送るのよ……
次女を抱きしめて幸せそうに微笑むサバサの姿は、幸せそうな親子の姿そのものだった。
ロッチェンはそんなサバサを見て微笑む。
そこに長女が居なくても、母が聖母のように囁けば、その言葉は『愛情のある言葉』として皆の耳に届いた。
娘たちを愛している母親。
誰もがそう思ったサバサの本心は、
ただ自分しか愛していない子供のままだった……
───────
※サバサは『新しく生まれ変わったもう一人の自分(ルナリア)』を手に入れました。母親は『自分』です。『最高の人生にするぞ☆』って思ってます。
※サバサは『次女だから』だと理由をつけてますが、周りからしたら『サバサだから』だと思っています。不器用、自己中……迷惑被ってんのは周りだぞ?ってやつです(-.-)でもその全てをサバサは『自分が次女だからこんな目に合うのね(シクシク)』と考え、悲劇の中に浸かっています。
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