1 / 36
1>>姉から奪う妹
しおりを挟む
-
「お姉様、それ頂戴!!」
マリリンは昔から姉の物を欲しがった。
元々そういう質だったが、それを両親が許し、自分の希望が優先されたマリリンは当然の様に増長した。
姉のカリンナは最初こそ嫌がった。当然だ。自分の誕生日プレゼントに貰った物を何故妹に上げなければいけないのか。同じ物が欲しいなら同じ物を買ってもらえばいい。だが、両親はそれをせず、マリリンはカリンナの物を欲しがった。
母は言った。
「マリリンはカリンナが持っている物が欲しいのよ。わたくしにも分かるわ。わたくしもお姉様が持っている物が素敵に見えたもの」
母の言葉にカリンナは、そうなのか、と思った。
それからカリンナは変わった。
マリリンが欲しがると笑顔でそれを上げたのだ。
ただし……
「マリリンはわたくしが持っている物が欲しいのよね」
「マリリンは本当にわたくしの持ち物が好きね」
「マリリンはわたくしと同じじゃなきゃ嫌なのよね」
「マリリンはわたくしのお古じゃなきゃ駄目なのよ」
「お母様、お父様、マリリンがかわいそうよ。まず、わたくしに下さらないと。マリリンはわたくしが持った物を欲しがるのだから」
「マリリン、これ上げるわ。わたくしのお古。マリリンが大好きな物よ」
「マリリンの個性は『姉の物を欲しがる』事よね。ほんと、わたくしが居ないと駄目なんだから」
「マリリン、お姉様一番のマリリン」
「お姉様が一度手にした物じゃなきゃ欲しくないマリリン」
「ぜーんぶぜーんぶお姉様の真似っ子のマリリン」
「マリリンはお姉様と一緒じゃなきゃ嫌なのよね~」
「欲しがりマリリン。今度は何が欲しいの?」
「お姉様の物しか持っていないマリリン」
「マリリンって、わたくしが居なきゃどうやって生きるのかしらね?」
「マリリンはわたくしが居ないと生きていけないからかわいそうだわ」
「欲しがりマリリン、お姉様の物を上げるわよ?」
「かわいそうよね、貴女。
お姉様に憧れるあまり、お姉様の物を欲しがって……
でもいくらお姉様の物を身に着けても、貴女はわたくしにはなれないのよ?
ごめんなさいね、マリリン」
マリリンに微笑みながらそう語りかける姉は異常だったが、先に姉の物が欲しいと駄々をこねて手が付けられなくなったのはマリリンの方なので、両親も止めるに止める事が出来なかった。
一度カリンナに母が
「そんな言い方はマリリンがかわいそうよ」
と言ったがカリンナは
「えぇ、マリリンはかわいそうなのですわお母様。マリリンは自分が無いのです。だからわたくしの物を欲しがるのです。
わたくしの物を奪う事で喜びに浸る事が彼女の楽しみなのです。
こんなかわいそうな子って居ますか、お母様?
マリリンは本当にかわいそうな子なのです。だからわたくしは姉としてマリリンに寄り添って上げているのですわ」
そう言われてしまい、母親は言い返せなかった。姉の良心に訴えてみたが、そもそも姉は妹を憐れんでいたのだ。カリンナからすれば『可哀相な相手』の事を『可哀相でしょう?』と問われても『うん、そうだよね』以外の返事のしようが無い。
自分の子供に自分の子供を『かわいそうだ』と言われた母親は衝撃を受けて絶句した。
母がもっと馬鹿であれば、姉を一方的に叱って妹を憐れむ事を止めさせられたかもしれないが、母はそこまで馬鹿ではなかったので、これ以上姉が妹におかしな事を言わない様にする為に、妹の言い分ばかりを優先するのを止めた。
-
「お姉様、それ頂戴!!」
マリリンは昔から姉の物を欲しがった。
元々そういう質だったが、それを両親が許し、自分の希望が優先されたマリリンは当然の様に増長した。
姉のカリンナは最初こそ嫌がった。当然だ。自分の誕生日プレゼントに貰った物を何故妹に上げなければいけないのか。同じ物が欲しいなら同じ物を買ってもらえばいい。だが、両親はそれをせず、マリリンはカリンナの物を欲しがった。
母は言った。
「マリリンはカリンナが持っている物が欲しいのよ。わたくしにも分かるわ。わたくしもお姉様が持っている物が素敵に見えたもの」
母の言葉にカリンナは、そうなのか、と思った。
それからカリンナは変わった。
マリリンが欲しがると笑顔でそれを上げたのだ。
ただし……
「マリリンはわたくしが持っている物が欲しいのよね」
「マリリンは本当にわたくしの持ち物が好きね」
「マリリンはわたくしと同じじゃなきゃ嫌なのよね」
「マリリンはわたくしのお古じゃなきゃ駄目なのよ」
「お母様、お父様、マリリンがかわいそうよ。まず、わたくしに下さらないと。マリリンはわたくしが持った物を欲しがるのだから」
「マリリン、これ上げるわ。わたくしのお古。マリリンが大好きな物よ」
「マリリンの個性は『姉の物を欲しがる』事よね。ほんと、わたくしが居ないと駄目なんだから」
「マリリン、お姉様一番のマリリン」
「お姉様が一度手にした物じゃなきゃ欲しくないマリリン」
「ぜーんぶぜーんぶお姉様の真似っ子のマリリン」
「マリリンはお姉様と一緒じゃなきゃ嫌なのよね~」
「欲しがりマリリン。今度は何が欲しいの?」
「お姉様の物しか持っていないマリリン」
「マリリンって、わたくしが居なきゃどうやって生きるのかしらね?」
「マリリンはわたくしが居ないと生きていけないからかわいそうだわ」
「欲しがりマリリン、お姉様の物を上げるわよ?」
「かわいそうよね、貴女。
お姉様に憧れるあまり、お姉様の物を欲しがって……
でもいくらお姉様の物を身に着けても、貴女はわたくしにはなれないのよ?
ごめんなさいね、マリリン」
マリリンに微笑みながらそう語りかける姉は異常だったが、先に姉の物が欲しいと駄々をこねて手が付けられなくなったのはマリリンの方なので、両親も止めるに止める事が出来なかった。
一度カリンナに母が
「そんな言い方はマリリンがかわいそうよ」
と言ったがカリンナは
「えぇ、マリリンはかわいそうなのですわお母様。マリリンは自分が無いのです。だからわたくしの物を欲しがるのです。
わたくしの物を奪う事で喜びに浸る事が彼女の楽しみなのです。
こんなかわいそうな子って居ますか、お母様?
マリリンは本当にかわいそうな子なのです。だからわたくしは姉としてマリリンに寄り添って上げているのですわ」
そう言われてしまい、母親は言い返せなかった。姉の良心に訴えてみたが、そもそも姉は妹を憐れんでいたのだ。カリンナからすれば『可哀相な相手』の事を『可哀相でしょう?』と問われても『うん、そうだよね』以外の返事のしようが無い。
自分の子供に自分の子供を『かわいそうだ』と言われた母親は衝撃を受けて絶句した。
母がもっと馬鹿であれば、姉を一方的に叱って妹を憐れむ事を止めさせられたかもしれないが、母はそこまで馬鹿ではなかったので、これ以上姉が妹におかしな事を言わない様にする為に、妹の言い分ばかりを優先するのを止めた。
-
225
あなたにおすすめの小説
(完)お姉様、婚約者を取り替えて?ーあんなガリガリの幽霊みたいな男は嫌です(全10話)
青空一夏
恋愛
妹は人のものが常に羨ましく盗りたいタイプ。今回は婚約者で理由は、
「私の婚約者は幽霊みたいに青ざめた顔のガリガリのゾンビみたい! あんな人は嫌よ! いくら領地経営の手腕があって大金持ちでも絶対にいや!」
だそうだ。
一方、私の婚約者は大金持ちではないが、なかなかの美男子だった。
「あのガリガリゾンビよりお姉様の婚約者のほうが私にぴったりよ! 美男美女は大昔から皆に祝福されるのよ?」と言う妹。
両親は妹に甘く私に、
「お姉ちゃんなのだから、交換してあげなさい」と言った。
私の婚約者は「可愛い妹のほうが嬉しい」と言った。妹は私より綺麗で可愛い。
私は言われるまま妹の婚約者に嫁いだ。彼には秘密があって……
魔法ありの世界で魔女様が最初だけ出演します。
⸜🌻⸝姉の夫を羨ましがり、悪巧みをしかけようとする妹の自業自得を描いた物語。とことん、性格の悪い妹に胸くそ注意です。ざまぁ要素ありですが、残酷ではありません。
タグはあとから追加するかもしれません。
笑わない妻を娶りました
mios
恋愛
伯爵家嫡男であるスタン・タイロンは、伯爵家を継ぐ際に妻を娶ることにした。
同じ伯爵位で、友人であるオリバー・クレンズの従姉妹で笑わないことから氷の女神とも呼ばれているミスティア・ドゥーラ嬢。
彼女は美しく、スタンは一目惚れをし、トントン拍子に婚約・結婚することになったのだが。
(完)婚約解消からの愛は永遠に
青空一夏
恋愛
エリザベスは、火事で頬に火傷をおった。その為に、王太子から婚約解消をされる。
両親からも疎まれ妹からも蔑まれたエリザベスだが・・・・・・
5話プラスおまけで完結予定。
悪役令嬢は冤罪を嗜む
mios
恋愛
公爵令嬢のクラリスは、婚約者と男爵令嬢の噂を耳にする。彼らは不貞したばかりか、こちらを悪役に仕立て上げ、罪をでっち上げ、断罪しようとしていた。
そちらがその気なら、私だって冤罪をかけてあげるわ。
男爵令息と王子なら、どちらを選ぶ?
mios
恋愛
王家主催の夜会での王太子殿下の婚約破棄は、貴族だけでなく、平民からも注目を集めるものだった。
次期王妃と人気のあった公爵令嬢を差し置き、男爵令嬢がその地位に就くかもしれない。
周りは王太子殿下に次の相手と宣言された男爵令嬢が、本来の婚約者を選ぶか、王太子殿下の愛を受け入れるかに、興味津々だ。
大恋愛の後始末
mios
恋愛
シェイラの婚約者マートンの姉、ジュリエットは、恋多き女として有名だった。そして、恥知らずだった。悲願の末に射止めた大公子息ライアンとの婚姻式の当日に庭師と駆け落ちするぐらいには。
彼女は恋愛至上主義で、自由をこよなく愛していた。由緒正しき大公家にはそぐわないことは百も承知だったのに、周りはそのことを理解できていなかった。
マートンとシェイラの婚約は解消となった。大公家に莫大な慰謝料を支払わなければならず、爵位を返上しても支払えるかという程だったからだ。
物語は続かない
mios
恋愛
「ローズ・マリーゴールド公爵令嬢!貴様との婚約を破棄する!」
懐かしい名前を聞きました。彼が叫ぶその名を持つ人物は既に別の名前を持っています。
役者が欠けているのに、物語が続くなんてことがあるのでしょうか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる