青い扉と銀の鈴 - 世間知らずのお嬢様と魔王討伐の生き残りと魔王の息子とが出逢った頃の物語

仁羽織

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砂漠で盗賊と砂嵐とオアシスとにめぐりあう偶然

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 「頑張ってって、銀鈴がないと青扉だけじゃどうにもなりっこありませんよ。」

 「だったらあんたにこれ預けるから、持っていってらっしゃ…。あ!?」

 銀鈴を手から出しかけて、はたっと気がついた。これ渡しちゃって一年過ぎちゃったら、私チェックメイトじゃないのよ。一気にこの子の奴隷みたくされてそこで人生完全終了じゃないの!!

 「どうしました?」

 「やっぱ、一緒に行く。使わないけどね、私は。けれどあんたが使うんだったら、私が持ってるから使いなさい。」

 「ありがとうございます。銀鈴も青扉も、僕の力だと数百メートル以内にいてもらわないと使用できませんので、助かります。」

 それでも数百メートルは離れていられるんだと聞いて、ホッとした。

 「そうしたら、準備ができ次第出発です。食べ残しや飲み残しなど、心残りがないようにお願いします。」

 「なに縁起でもないことを。あんたが銀鈴を使えばなんの問題もないでしょう?一瞬でぱぱぱ!じゃない。」

 「そんな簡単にいけばいいんですが。昔母から聞いたことがあります。僕らの国だけでなく、ほかの土地にも僕らのような存在がいるのだと。そうした存在が絡んでいたりすれば、これはとても大変な事態になりかねません。」

 「つまりは?簡単に言うと、どういうこと?」

 「…。つまり、僕の父のようなモノがこの砂漠にもいるかもしれない、ということです。」

 「それって、あの洞窟で追いかけてきたような?」

 「はい。僕には逃げるしか手がありませんでした。」

 「それって、ものすごくヤバいことじゃないの?」

 なんだかお腹がキュウってなってきた…。

 「…はい。マジでヤバい、です。」

 「そんなになんだぁ…。」

 いよいよ困ったな。どっちを選んでも、困難で苦しい道のりってアレだ。私はできることなら常に、楽で、楽しくて、のんびりできる道がいい。これまでの人生の選択は全部そうしてきた。できればこれからもそうしていきたいと思う。人間のまま、楽で楽しい、のんびり行ける道。

 そんなものが幻想でしかなく、そういう道を用意するために実に様々なものが入り混じって重なり合い、この世界を創っている。と、ヨホ・マジノが言っていた言葉を思い出す。先送りにすればするほど、後になって自分の背にのしかかってくる、と。そのことを学ぶ機会になるのかなと、私はため息をついた。

 もう少しだけ先送り、できないかなぁ。

 この願いがいつの間にか銀鈴によって叶ってしまったりしたら、私は最低だなとも思った。叶った後で化け物になってしまったら、本当に最悪だ。

 不老不死だとかほんとありえない。それを得ようとして国まで動かした大バカ者の記録が、教科書にのっていた。ヨホ・マジノはものすごく嫌そうな顔をして、その大バカ者のことをこう蔑んでいた。『度し難いほどの自分勝手さとナルシスト性をもったゴミ』と。自分と家族が不老不死となるために、それ以外の人間も生き物も道具としか思わず、残虐と非道の数々を繰り返して、ついに願いは叶えられなかった者。

 「自分のことばかり考えていたら、結局は最後に行き詰ります。行き詰った人間の考えることは、他者に対しての非難と攻撃。どうやって他人を蔑もうかと行動するうちに、袋小路につかまります。」

 お子様が、どこか遠くを見ながらそう言った。

 「今までも何度か、同じように道具を渡そうと試してきたことがありました。けど、ほとんどの方が自分のことしか考えられない方で…。皆さん同じように最後は行き詰ってましたね。」

 なんとも言えない。重すぎて息もできなくなりそう…。

 「ま、でも、気楽にいきましょう。あなたが初めてなんですから。道具と不老不死のどちらにも興味を持たずに、それどころか突っ返そうとしてるのは。」

 ニコニコと笑うお子様を見ながら、なんとなくそうだなってちょっとだけ気が楽になってきた。何がどうそうなんだか、そういう細かいことを考えない。気持ちが大事。もっと言えばそのときどきの気分が大事!

 そう覚悟を決めたところで、おなかもいっぱいになったので、出発する準備をはじめようとお子様に告げた。

 なんとかなるよ。きっと…。
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