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期待と尊敬と残念さとが重なる偶然
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とにかくうちのお父様はいつでもどこでもお腹を空かせている。だからなんだけど、お母様は何かにつけて「お父さん、お腹空かせてないかな?」だ。そんなだからお父様が横にどんどん広がっていっちゃうんでしょ。けど、まあ、いい。
砂嵐が少し勢いを落としていくのが見える。それを見て、ジョジさんがまた青扉で何かを唱えた。妹さんは私の隣でその様子を黙って見ている。まだ何か言いたそうにしてはいるが、あの兄には何を言ったって無駄だって、そう思ったのかもしれない。
すっかりと砂嵐が静まると、その中心にミラクとベントスがいた。ベントスはミラクの頭の上にちょこんと座っている。とても可愛らしく綺麗な座り方だ。そしてふたりのすぐ横に、人の姿があった。二人いる。服装は、なんだか本格的に登山をするような恰好をしていた。手に不思議な棒を持っている。足元とかはずいぶんと重そうな大きい靴を履いていた。どうやら二人とも、砂に座り込んでいて戦意はないみたいだ。
「レイミリアさん、ありがとうございました。来ていただけて、銀鈴が使えるのがわかって、嬉しかったです。おかげで思ったよりも早く終わりました。」
そう言ってこちらに笑顔を向けるミラクの顔は、まさに天使だった。頭の上に獣をのせた天使って絵になりそう。
「お母さん、怪我はありませんか?」
そう言ったミラクの顔は、ジョジさんと戦った時の傷なんだろうか、まだ血が流れているようだ。
「血止めしなきゃな。坊ちゃん、ちょっとだけ動くなよ。」
ジョジさんがそう言って、ミラクの頭を診に寄っていく。私は、ジョジさんの妹さんと二人でBBQの席でポカンと見ているだけだった。ミラクのお母さんは、おそらくミラクに食べさせるためにだろう、お皿にどっさりと肉と野菜をのせるのに忙しそうだった。
私はその時、不思議に思った。なんでジョジさんが血止めしに行く?その怪我を負わせたのはあなたでしょ?
「…なんで兄様がそいつの味方をするの!どうして!?」
私のすぐそばで、ジョジさんの妹さんが声を張り上げた。その声が届いているのか、ジョジさんは一生懸命にミラクの頭に包帯を巻いている。
ジョジさんの妹は、それから砂に座り込んで、肩をおとして泣いているみたいだった。
「身内がしでかしたことなんだから、俺が責任をとるのは当たり前のことだ。」
ミラクに包帯を巻き終わって、ジョジさんがそう言って妹さんの傍に近づいてきた。
「それにな、ずいぶんともう昔のことになるが、同じことを俺もしようとして、もう一回はじめからやり直させてもらったんだよ。」
そう言うとジョジさんは、妹さんの座る横にドカッと腰を下ろして、妹さんの肩を優しく抱きしめた。
私はお邪魔かなって、そう思って、お皿に焼けたトウモロコシと玉ねぎをのせて、ミラク達の方へ移動する。後ろをチラって見ると、妹さんがジョジさんに抱きついて泣いているのが見えた。
さっきの話だと、ずいぶんと長い事会ってなかったみたいな二人だし。妹さんもいろいろと溜め込んで苦しかったんだろうな。甘えられる人がいるって、強いよね。それがいなくなって、独りで頑張ってきたんだとしたら、そりゃおかしな理屈にも頼らざるをえないよね。他の誰かが決めた使命だとか、そんなの。自分がどうしたいのかって気持ちを越えられるわけがないのに。
で、私はミラクのところまで歩いて、右手を挙げた。
「あんたのお父さんが私に、ここへ来てあんたを手伝ったら、色々とここまででよくわかんなかった事を全部話してくれるってそう言ったの。だから来た。」
ミラクは、お母さんが手に持ったお皿からお肉を選んで食べていた。ベントスもそれにご相伴している。ミラクが食べようとして口に運ぶフォークから、ちょこっと一口、お肉を分けてもらって食べていた。
砂嵐が少し勢いを落としていくのが見える。それを見て、ジョジさんがまた青扉で何かを唱えた。妹さんは私の隣でその様子を黙って見ている。まだ何か言いたそうにしてはいるが、あの兄には何を言ったって無駄だって、そう思ったのかもしれない。
すっかりと砂嵐が静まると、その中心にミラクとベントスがいた。ベントスはミラクの頭の上にちょこんと座っている。とても可愛らしく綺麗な座り方だ。そしてふたりのすぐ横に、人の姿があった。二人いる。服装は、なんだか本格的に登山をするような恰好をしていた。手に不思議な棒を持っている。足元とかはずいぶんと重そうな大きい靴を履いていた。どうやら二人とも、砂に座り込んでいて戦意はないみたいだ。
「レイミリアさん、ありがとうございました。来ていただけて、銀鈴が使えるのがわかって、嬉しかったです。おかげで思ったよりも早く終わりました。」
そう言ってこちらに笑顔を向けるミラクの顔は、まさに天使だった。頭の上に獣をのせた天使って絵になりそう。
「お母さん、怪我はありませんか?」
そう言ったミラクの顔は、ジョジさんと戦った時の傷なんだろうか、まだ血が流れているようだ。
「血止めしなきゃな。坊ちゃん、ちょっとだけ動くなよ。」
ジョジさんがそう言って、ミラクの頭を診に寄っていく。私は、ジョジさんの妹さんと二人でBBQの席でポカンと見ているだけだった。ミラクのお母さんは、おそらくミラクに食べさせるためにだろう、お皿にどっさりと肉と野菜をのせるのに忙しそうだった。
私はその時、不思議に思った。なんでジョジさんが血止めしに行く?その怪我を負わせたのはあなたでしょ?
「…なんで兄様がそいつの味方をするの!どうして!?」
私のすぐそばで、ジョジさんの妹さんが声を張り上げた。その声が届いているのか、ジョジさんは一生懸命にミラクの頭に包帯を巻いている。
ジョジさんの妹は、それから砂に座り込んで、肩をおとして泣いているみたいだった。
「身内がしでかしたことなんだから、俺が責任をとるのは当たり前のことだ。」
ミラクに包帯を巻き終わって、ジョジさんがそう言って妹さんの傍に近づいてきた。
「それにな、ずいぶんともう昔のことになるが、同じことを俺もしようとして、もう一回はじめからやり直させてもらったんだよ。」
そう言うとジョジさんは、妹さんの座る横にドカッと腰を下ろして、妹さんの肩を優しく抱きしめた。
私はお邪魔かなって、そう思って、お皿に焼けたトウモロコシと玉ねぎをのせて、ミラク達の方へ移動する。後ろをチラって見ると、妹さんがジョジさんに抱きついて泣いているのが見えた。
さっきの話だと、ずいぶんと長い事会ってなかったみたいな二人だし。妹さんもいろいろと溜め込んで苦しかったんだろうな。甘えられる人がいるって、強いよね。それがいなくなって、独りで頑張ってきたんだとしたら、そりゃおかしな理屈にも頼らざるをえないよね。他の誰かが決めた使命だとか、そんなの。自分がどうしたいのかって気持ちを越えられるわけがないのに。
で、私はミラクのところまで歩いて、右手を挙げた。
「あんたのお父さんが私に、ここへ来てあんたを手伝ったら、色々とここまででよくわかんなかった事を全部話してくれるってそう言ったの。だから来た。」
ミラクは、お母さんが手に持ったお皿からお肉を選んで食べていた。ベントスもそれにご相伴している。ミラクが食べようとして口に運ぶフォークから、ちょこっと一口、お肉を分けてもらって食べていた。
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