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第1章 MAXコーヒーが繋いだ奇跡

第22話 これ家族公認で良いんじゃね?なのになぜ本人達は気付かない。

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 そんなこんなで友紀さんの実家へ訪問している。
 正確には友紀さんと一緒に実家の門をくぐったところだ。

 あれから何度かメールで連絡をとりあい、コ○ケお疲れ様から大晦日は色々大変だったけど楽しかったとか

 そんなありきたりなやり取りをしたあと、金子家訪問の話題になった。

 両親に話をしたらぜひ会って話がしたいと。
 うーん、結婚の了承を得にいくわけでもないのに妙だなとは思ったりはしたが、気にすべきではないのだろう。
 大事な娘が友人を連れてくる。その認識で良いはずだ。

 確かに可愛いし自分の好みに近いし、趣味も同じだし、こんな子が彼女だと良いなとは思う。

 でも俺は魔法使いなのだ、心配性なのだ。

 もしかしたら自分だけ舞い上がってるだけなのでは?なんて考えちゃうのだ。

 そのため両親に会うのは正直緊張しかない。


 友紀さんと一緒なので鍵もドアも遠慮なく開けていく。

 「おかえりなs…じゃない。どうぞ、おあがりください。」

 注:sは誤字ではありません。「さ」と言いかけたsの所で言葉が止まった事による演出です。

 今お帰りなさいと言おうとした?

 むむーなんか良い感じというかちょっと感動を覚えた。

 これ、新婚さんが惚気るのもわかるわ。

 「失礼します。」

 最初なのでお邪魔しますはないよね。

 「あらあらいらっしゃい」
 母親らしき人が挨拶をしにきたのだがその脇で…

 ダッダッダ…

 「おにーちゃんいらっしゃいにゃのー」

 ボフッと全身でタックルしてきた氷雨ちゃんを抱きとめる。

 「あらあら、随分懐かれちゃって。」

 いや、母上とは今日初対面なのに会話にお初感が感じられないのですが。
 まぁ自分の事は友紀さんたちから聞いてるからというのもあるかもしれないけど。

 「あら?」
 お母様が不思議そうな顔で俺を見てくる。

 「げ、玄関で立ち話もなんだし…」

 と言ったところでリビングに案内され

 「初めまして、越谷真人と申します。」

 リビングの扉を開けて父親が座っていたので挨拶をした。

 したんだけど、その隣にもう一人霙さんの旦那さんが座っていた。

 その人物を見て

 「あ…」

 「よくいらした。初めまして、私が友紀の父です。」

 「いらっしゃい越谷さん。数日ぶりですね。」

 「おーよく来た。」

 あ…と声を出したのは俺、そして順に友紀さんの父、霙さん、霙さんの旦那…高校の同級生の結城篤志だった。

 


☆☆☆

 「世間狭くないですか?」
 俺が率直に言うと

 「そうだな。結婚式の時は俺と霙の二人しか友人席はまわってないからな。」


 「私は玄関で見た時に確信に変わったけどこないだ娘達に名前を聞いた時にどこかで聞いた事あるなとは思ってたのよ。」

 「言わなかったけど、元日の日に見た事あるなーとは思ってたんですよ。」

 「なぁ俺空気化してないか?」
 父可哀想。女ばかりの家庭だと苦労しそうだなと思った。

 「というか、なぜ親である俺達よりお前に懐いてるんだ?うちの娘は。」

 「んーおにーちゃんのここ安心するー」
 そう、なぜか俺の腿の間にちょこんと座っている氷雨ちゃん。

 「あらあら、越谷さんはたらしですねー」
 いや、母上殿、それは一体どういう?
 そんな主人公補正あったら魔法使いなんてやってませんよ。

 「お姉ちゃんが置いてかれてるよ。」
 霙さんが助け舟を出してきた。

 「ぷしゅー」

 声にだしてぷしゅーっていう人中々いないよね。
 でもわかる気がする、ここの家の人我が強い。

 父と友紀さんが埋もれてしまいそう。
 
 「ところで、越谷君。友紀とは今後どのように…」
 パシンッと母上殿が父をハリセンで叩いた。
 どこから出したのだろうか。

 「気が早いんだから。そういうのは今は良いの。今は。」

 そういって普通に食事をする事になった。
 だってリビングに入った時には既に並べてあったし。
 そういう運びになる事は容易だったよ。

 ただ、まさかの同級生がいるなんてイレギュラーが。
 「ところで、俺はどのようにご家族に説明されてるんです?」

 最初私と畏まったら、普段通りの口調で構わないと言われたので一人称は俺で話している。

 「友紀の良い人って事かな?」
 母上が爆弾を投下した、ほらーまた友紀さん固まっちゃったよ。

 「本人がいる前で言うのもなんだけどな、越谷ももう良い歳だし、友紀さんは良い子だし、俺は良いと思うよ。」

 「んーおにーちゃん、友紀おねーちゃんとケコーンするの?」
 何そのいつかの2ch用語みたいなの。というか何この会話。外堀埋められ過ぎてない?

 俺達そういう関係じゃないのに…

 「友紀さんが困ってるのでそのあたりにしてもらえませんか?」
 友紀さんがこっちを見て目が輝いた気がした、助けてくれてありがとう的な目線を。

 「確かに友紀さんは可愛いし趣味も一緒だし安心感あるしこういう人が彼女だったらと思うけど、俺にはもったいないですよ。」
 友紀さんが真っ赤になって固まった。

 「お前が一番大概だと思うぞ。高校の時はあんなに奥手だったのに。」
 「友紀おねーちゃんゆでだこみたいー」
 「あらあら、まーまー」
 「越谷さんて天然ジゴロ?」
 「やっぱりフィギュア集めはしばらくやめよう、お金貯めないと」

 各々好き勝手言ってくれる。
 それと父上、最後なんか妙な事口走ってましたが? 
 あなたもこちら側の人間なのですか?

 ただ、母上の背後にスタンドが見えた気がする。
 「あなた、後でお話があります。」
 「あ、ハイ」

 どうやらフィギュア云々の話を拾われていたようだ。
 そしてどうやらそれは家族には内緒の話だったようだ。

 いじられ過ぎて友紀さんは少し沈んでいた。
 そのため食事が終わると中庭出て独り佇んでいた。
 
 「大丈夫?」
 俺は声をかけた。
 驚いた友紀さんはそのまま俺の方に向かってきて…
 胸に顔をうずめた。

 こ、こんな時男はどうするんだ?
 だ、抱きしめて良いのか?良いのか?
 セクハラとか言われないか?
 えっちすけっちわんたっちとか言われないか?
 悩んだ末…頭にぽんと手を重ねた。

 「さっきの事だけど…可愛いというのも安心感あると言ったのも本当の事だよ。だって憧れのレイヤーさんだよ。中の人も当然いい人に決まってる。」

 「それにメールでも送ったけど、大晦日の日楽しかったし、あの一日はこれまで足りてなかった分を一気に満たされたような濃厚な一日だった。」

 「みんながあれこれ焚き付けるように言ってたけど、俺は友紀さんと知り合えて良かったと思ってる。」

 「怒涛のように色々あったからさ、こんがらがってきてるのは否めないけど…今後も笑い合っていたいなって。」

 そこまで言ったところで友紀さんが顔を上げた。

 少し目が潤んでるだろうか。

 「私は、私は良くわからない。このもやもやが何なのかわからない。」

 「だけど、もっと仲良くなりたい。私も安心出来るの、こうして胸に埋めていた時凄く安心した、(心が)熱かった。」

 「家族はみんな言い放題だったけど、私もこのもやもやが何なのか知りたい。」

 「それが何かわかったら…私の話を聞いてほしい。今はまだ勇気が出せない。」

 決意めいたものを感じた、多分友紀さんの過去に関する何かだろう。

 「うん。そういうのは自分が大事だって思った時で良いんじゃないかな。俺も胸に何かもやもやしたもの感じる。それが何なのか知りたい。」

 いやだからお前らそれが恋心だっての。
 盗み聞きしているわけではないが、母と妹には聞こえていた。
 デビルイヤーは地獄耳とか、障子にメアリーとか良く言ったものだ。
 メアリーじゃなくて目ありだけど。

 少し離れたところで…
 「お母さん、お姉ちゃん達青春してるわ。アオハルかよっ」
 「お母さんにもああいうクサいセリフを言い合う時期あったわ。」



☆☆☆

 「落ち着いた?」

 こくんと頷く友紀さん。やっぱ可愛い。

 「戻ろうか。」
 再び頷く友紀さん。
 そうして2人、リビングの方に目を向けると…
 ガラス越しに全員がこっちを見ていた。

 そしてわざとらしく視線をずらした。

 こうして家族公認、30歳魔法使い同士による友達以上恋人未満な関係はいつの間にか始まっていた。


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