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本編
ハフハフ焼き鳥
しおりを挟む晴れた日の午後、みんなで、きなこ飴を作ろうということになった。
「子供新聞の、アンケートとかのお礼用だからね。頑張っていっぱい作ろう!」
はーい!
いいお返事の、3王子にアルディ王子にジェム達である。きなこ飴は、ある程度は日持ちすると思うが、念の為、翌日か翌々日にアンケートを取りに行く予定。ついでに、子供達に、屋台で肉を奢ってやろう。
きなこは、イケジジのゼゼル料理長に説明して作ってもらった。きなこ飴の試作も、お願いして一緒に作った。色々なレシピがあって、水飴を使うべきか、蜂蜜か、黒砂糖か。悩ましい所だが、値段的に、黒砂糖を使おうとなって、今はみんなで、粉を混ぜ混ぜしている。
「このこな、なんのこな?」
ニリヤが、ほっぺたにきなこをつけて、ボウルの中の粉を、スプーンで混ぜている。
「大豆ってお豆を、コロコロ~ってフライパンで炒って、細かくした粉だよ。味見したい人ー。」
はーい!とみんなが手を上げたので、砂糖と塩を混ぜた、味見用きなこを、ひと匙ずつ舌に乗っけてやる。一応、衛生には気をつけて、人数分匙を使った。
むぐ。まむまむまむ。しょりしょり、ごっくん。
「•••おいしいねぇ!」
「香ばしい~。」
「はじめての味!」
みんな、きな粉の味にニコニコだ。
ネリネリ部隊と、ハサミを使って蝋引きのペーパーを、ちょうど良い大きさに切る部隊とに分かれて作業する。
出来たきなこ飴を、一粒ずつ、切ったペーパーでネジネジっとくるんで、人にあげやすくする。
一応出来たばかりのきなこ飴も、試食して、みんな、これなら喜ぶよー、と小さい子も一緒になって楽しく作業した。
沢山出来た、きなこ飴を持って、次の日。まずは屋台の肉である。
警備上の問題もあるので、ジェムに美味しい所の屋台をまず聞いておいて、事前に打診もした。喜んで!という事だったので、第一騎士団の半分を引き連れて、王子達も込みで、いざ屋台へ。
「私、外の屋台で食べるの、初めて。」
「私も!」
オランネージュと、ネクターは、顔見合わせて楽しそうにくふくふしている。2人の間で、両方の手を繋いで、屋台メシを食べた事あるニリヤが、鼻歌フンフン、るふるふしている。
「あつあつ、おいしいの!」
期待満々だ。
「アルディ王子は、お肉大丈夫かな?一応、あまり癖のない、鳥肉の屋台なんだけどさ。試しに食べてみて、ダメだったら俺が残り食べてやるから。」
竜樹が心配すると、アルディ王子は、ワクワクした様子で。
「はぁい!試しに食べてみたい!」
と手を上げた。
「ちょっと屋台にしては、お高めの串焼きなんだけど、その分、肉にこだわって、血抜きとかちゃんとしてる、って、オヤジが言ってたから、大丈夫だといいな。」
ジェムが、アルディ王子に。
「獣人は、もともと匂いに敏感なんだもんな。その中でもアルディ様は敏感だっていうから、食べ物むずかしくて大変だな。」
「うん。ほんとだったら、何でも食べられたら、良いのにって、思う。」
アルディ王子が、ふるん、と尻尾を揺らす。
食べられるか食べられないかで汲々としていたジェム達だが、ワガママだ!とかは言わない。身体が受け付けなくて、食べたくても食べられなくて、弱くなるくらいだ、と竜樹に教えてもらっているので、心配する。
ふふ、と、カメラを回すミランと、竜樹も、一緒に笑う。
屋台は、街の広場の、大画面のある真ん中から少し外れた所にあった。じゅうじゅう、串を焼く焼き鳥機に準備も出来て、煙を上げている。
既に、庶民に馴染みあって街に溶け込む第二騎士団が、屋台の周りをぽつぽつと囲んで待っていた。そこに買いに来る者もいるが、何だろう?と訝しげに去ってゆく。
なるべく普通に、してください、とお願いしているが、警備は仕方ないか。
「こんにちは!俺は竜樹といいます。今日は、無理なお願いを聞いていただいて、ありがとうございます!」
竜樹が挨拶をすると。
幅広の布を頭にくるっと巻いて額の髪を上げている、シワに煙が染み込んだシブい親父が、ニカリと笑った。
「いえいえ。光栄な事です。どうぞ食べていってください。部位が色々ありますが、一番食べやすいのは、肉を細かく叩いた肉団子ですかね。ウチのは、軟骨も細かくして入ってます。肉らしい肉は、モモかな。酒のアテには、皮なんかいいですけど、今日は、お呼びじゃないかなァ。ハハハ!」
皮、美味しいですよねぇ、肝とかもあったりします?と竜樹が言うと、嬉しいねぇ、と親父は串をひっくり返し、ひっくり返し、応える。
「クセがあるから万人向けじゃないけど、肝も美味しいですよねぇ。」
ツンツン。
竜樹のマントの裾を、ニリヤが引っ張る。香ばしい煙に、子供達は、肉を見つめて、こくんと喉を鳴らしている。
「ああ、ごめんごめん。じゃあ、肉団子を、人数分ていうと、30本あれば2本ずつで足りるか。俺も食べよ。その後に、モモを同じく30本。お願いしまーす。」
「はいありがとうさんです!」
じゅう、じゅわ!
油が、魔道具の焼き鳥機に垂れて、いい匂い。柑橘の汁と塩で、さっぱりと。
小さい子順だよー、と、いつものように竜樹が言うので、いい子で列に並んで、焼けた順に貰って、食べていく。
「ハフ、はちち、ウマっ!おいし!」
「ふわ、コリコリしてる!」
「むぐ。うめー!」
串焼きをそのまま食べる事のない、王子達が、良いのかな?という風に、ジェム達の食べ方を見て。真似て、あぐっ。あちち、はふっとなって、口の中で肉が踊った。
オランネージュは、もぐもぐしつつ目をキラン、と見張り。ネクターは、激しくまむまむする。
ニリヤは、横向きに串にかぶりついて、手元の肉がほっぺにべったり付いている。脂まみれだ。
「ハフ、これ、私もたべられる!」
アルディ王子も、嬉しそうに肉に齧りつく。
しばらく食べて、満足した頃、竜樹は屋台の親父に、色々部位を取り混ぜてお持ち帰りに100本頼んだ。寮の管理人夫婦や、撮影隊、侍従侍女達に差し入れである。ここでアンケートをとる間、ゆっくりと焼いていてもらって、とお願いをして、お勘定に、迷惑料も含め、金貨10枚渡した。
「こんなにもらっちゃ、何だか悪いようだねぇ。」
「いえいえ、今日は、対応してもらってありがたいですから。本当に美味しかった。みんなも、そうだろー?」
おいしかったー、あつあつ、うまー!と子供達が一斉に声を上げる。
「ハハハ、そりゃ良かった!こちらこそ、今日ウチを選んでくださって、ありがとうございます!」
親父のニカリとした白い歯を背に。
今度はアンケートを始めよう。
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