王子様を放送します

竹 美津

文字の大きさ
102 / 702
本編

大きなまほう

しおりを挟む


「お前、シャルムじゃないか。こんな所で、何してんだ?」

キジトラ猫耳冒険者のパーシモンが、茶髪に毛先が黒い長髪をくくった灰色ローブ、犬耳獣人に声をかける。
シャルムと呼ばれた獣人は、
「パーシモン?ノワール、マロン、どうしてここに?」
とアタフタして涙目のまま首を傾げる。

「どうしてじゃないよ。シャルムが転移させたんじゃないのか?俺たちは、広場にいたんだよ。ギフトの御方様や王子様達も、新聞少年と、お菓子配って話を聞いてくれたんだぞ。俺たちのためにだ。」
むん!とパーシモンが、腕組みをしてシャルムに説明する。
「そうよ。シャルム、また大雑把で大きすぎる魔法使ったんじゃないの?すみません、この人悪い獣人じゃないんです。大雑把なだけで、間違えたんだと思うんです。」
熊耳女子のノワールが、シャルムの頭を引っ掴んで、ぺこぺこと下げさせる。
「全く、困った魔法使いだなぁシャルム。俺たちに用があったのか?普通に探して声かけてくれよ。」
獅子耳男子のマロンもため息ついて一緒にぺこりぺこりと頭を下げる。

シャルムは、頭を下げながら、すみません、すみません!と周り中に謝り倒した。
「俺が転移させたかったのは、この髪飾りの女性、なんですよぉ~!」
掲げたのは、リボンにキラキラした石の、櫛がついた髪飾り。

コホ、とホコリっぽい部屋に、咳を始めたアルディ王子、そしてルルーが、周りを浄化して、癒しの魔道具使って、としてるのを、みんなで見守っている間に。
花街の可憐なお姉さんが。
「その髪飾り、もしかして、私のではないかしら?」
見覚えがあるのだけれど。
戸惑いながら、口にした。

「そう、コリエさん、貴女を、呼ぶように脅されて、俺。」
犬耳をしょげさせて、シャルムが、くぅーんと鼻を鳴らす。

「やだ、私一人だけ選んで転移なんて、何故?その髪飾り、確かこの間、一人のお相手に、是非にと言われてお渡ししたものよ?皆さんを私の事情に巻き込んでしまったのかしら!」
申し訳ありません!
可憐なお姉さん、コリエが、頬に手を当てて驚き眉を下げる。

「いやいや、何だか、シャルム君?に、命令した人がいるんだよね?シャルム君、どういうことか、教えてくれる?」
竜樹がさっと、マルサ達、騎士団を抑えて、それでも騎士達が剣に手をかけて、ザッと周りを囲む中、首を縮めてシャルムは、うんうん、うん、と頷く。
「俺、細かい魔法使えなくて、でも大っきくは使えるから、魔法効力無効シールドかけてるとこでも、それよりおっきい範囲かこんで力技で呼べちゃうんです。」
「それで王子達や竜樹まで呼べたんだな。」
マルサが、納得する。竜樹のマントの留め具や、マルサの剣飾り、オランネージュやネクター、ニリヤにアルディ王子の服に留めてあるピンには、攻撃魔法や転移魔法無効の効果があるのだ。
「私も、お出かけの際は、誘拐回避のために、魔道具の飾りをつけていますわ。」
コリエに続いて、私も、私達も。お姉さん達が、追随する。

「その方法だと、一人だけ選んで呼ぶのは難しいって言ったのに、やらないと奴隷契約解消しないし、手首の戒め締めて飛ばしちゃうぞって、言われて。」
「奴隷ぃ!?シャルム、お前、奴隷になったのか?禁止されてるだろ!奴隷契約って!」
パーシモン、猫目をきらん!と見開いてびっくりである。
「知らないよぉ!冒険者を普通にやってただけなのに、突然、賠償金払えって手首にいましめ嵌められたんだ!痛いの嫌だし。連れてこられた先にいた、坊ちゃんと、坊ちゃんの家来に、殴られて、手首いましめに締められて、抵抗できなくて•••。痛いの、やだよぅ。」
うぐ、うぐ。ポロ、ポロ。

「おにいさん、いたいのやなの、かわいそうだよ。」
「どれい、いけないんだ。」
「父上が禁止してるのに!」
ニリヤがポンポン竜樹のズボンを叩き、ネクターが口をとがらし、オランネージュが、ふん!と怒りを示す。
「ワイルドウルフの国の冒険者、どれいにしたら、この国とモメちゃう。そんなのだめだよ!私、助けてあげたいよ!」
アルディ王子も、国の関係を慮って、キャスケット帽を脱いで手に、眉を下げ、耳をピコピコさせた。

「そうだな、みんな。所で坊ちゃんて誰?それに、何故シャルム君以外、今、ここにいないの?」
竜樹は、この、地下室的な所にシャルム一人、というのが不思議に思える。

「うっうっ、坊ちゃんは、オルビット伯爵家の次男、カンセ様です。俺、大きい魔法で、何か壊したらしいです。花街のコリエさんを、愛人にしたくて、呼べって。坊ちゃ、カンセ様に、コリエさんだけ呼べるだろ、て言われたけど、出来ないって言ったのに。」
グスリ、と涙を拭いて。
「今、カンセ様は、もうすぐコリエさんが来るってなったら、興奮し過ぎて鼻血が出て、大騒ぎして出て行った所です。家来達も、呼んでおけよ!て言って、カンセ様を運んで行っちゃった。言われたから、魔法かけてみたけど•••。」

王子様達に、ギフトの御方様まで。
グスン、グスン。
「出来ないって、言ったのにぃ。」

ガタン、ガチャン。
キイイイ。

みんなが、一つしかないドアを、振り返って。

「•••獣人?子供まで?肉の匂い???ウチの地下室で、大勢で、何を?大きな魔法の波動が、感じられたが。」

あ、だんなさま。

シャルムが、ポツリと呟く。
ガッシリした、また動作に品がある、黒褐色に銀毛、ちょびひげ熟年のおじさまだ。ドアから、身を半分出して、不思議そうな顔をしている。

「旦那様とは?私は君を知らないが。」
「カンセ様に、旦那様にバレるな、って言われて、俺、チラッとお顔見た事が、あの、王子様達とギフトの御方様もいて。」
「えっ!?」
はた、はた、と顔を巡らせて、竜樹のマントの留め具と、王子達の顔を見て、くわっ!と口を開け、旦那様は。

「申し訳ございません!私、オルビット伯爵家の、当主ドネと申します!当家の次男、カンセが失礼を!私の首で済むものならば、どうか、どうか!」
ガタガタ震え、真っ青になり、跪いて平身低頭だ。

「あー。首はいらないので。あのー。喉乾いちゃったなぁ、ドネさん。みんなも、お茶をいただこうか?」
「はいっ!ただいま支度させます!」

「おちゃ、いただこー。」
「お話、しましょう!」
「お話、クフフ。」
オランネージュが何だか黒いが。
アルディ王子も、
「お話できそうで、良かった。」
ホッとして。
「普段偉そうにしないけど、竜樹ってやっぱり、偉い人なんだな!」
ジェム達は、感心している。
お姉さん方は、お淑やかに、お出かけ後に、お茶もいいわね、なんてニコニコだ。

「王宮に、みんなで喉が渇いたから、たまたまテレビを観に来て広場にいた、オルビット伯爵様にお呼ばれして、お茶してる。と、誰かに報告させて下さいますか?心配してると困るから。竜樹が言ってる、と。」
「はい、すぐ!ありがとうございます、ありがとうございます!」
「私達の館にも、誰かをやって報告させて下さいますか?逃げたと思われたくありませんの。」
コリエさんが言い、そうねそうね、とお姉さん達も。

そうして、竜樹達は、騎士団に守られながら、人数が多いので、広間に移動した。
屋台の親父も、貴族様のお屋敷なんて、初めて入りますぜ、と、何だか嬉しそうだった。

しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。

蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。 これで、貴方も私も自由です。 ……だから、もういいですよね? 私も、自由にして……。 5年後。 私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、 親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、 今日も幸せに子育てをしています。 だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。 私のことは忘れて……。 これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。 はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?

はじめまして、旦那様。離婚はいつになさいます?

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
「はじめてお目にかかります。……旦那様」 「……あぁ、君がアグリア、か」 「それで……、離縁はいつになさいます?」  領地の未来を守るため、同じく子爵家の次男で軍人のシオンと期間限定の契約婚をした貧乏貴族令嬢アグリア。  両家の顔合わせなし、婚礼なし、一切の付き合いもなし。それどころかシオン本人とすら一度も顔を合わせることなく結婚したアグリアだったが、長らく戦地へと行っていたシオンと初対面することになった。  帰ってきたその日、アグリアは約束通り離縁を申し出たのだが――。  形だけの結婚をしたはずのふたりは、愛で結ばれた本物の夫婦になれるのか。 ★HOTランキング最高2位をいただきました! ありがとうございます! ※書き上げ済みなので完結保証。他サイトでも掲載中です。

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシェリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

王宮侍女は穴に落ちる

斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された アニエスは王宮で運良く職を得る。 呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き の侍女として。 忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。 ところが、ある日ちょっとした諍いから 突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。 ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな 俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され るお話です。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

【完結】旦那様、どうぞ王女様とお幸せに!~転生妻は離婚してもふもふライフをエンジョイしようと思います~

魯恒凛
恋愛
地味で気弱なクラリスは夫とは結婚して二年経つのにいまだに触れられることもなく、会話もない。伯爵夫人とは思えないほど使用人たちにいびられ冷遇される日々。魔獣騎士として人気の高い夫と国民の妹として愛される王女の仲を引き裂いたとして、巷では悪女クラリスへの風当たりがきついのだ。 ある日前世の記憶が甦ったクラリスは悟る。若いクラリスにこんな状況はもったいない。白い結婚を理由に円満離婚をして、夫には王女と幸せになってもらおうと決意する。そして、離婚後は田舎でもふもふカフェを開こうと……!  そのためにこっそり仕事を始めたものの、ひょんなことから夫と友達に!? 「好きな相手とどうやったらうまくいくか教えてほしい」 初恋だった夫。胸が痛むけど、お互いの幸せのために王女との仲を応援することに。 でもなんだか様子がおかしくて……? 不器用で一途な夫と前世の記憶が甦ったサバサバ妻の、すれ違い両片思いのラブコメディ。 ※5/19〜5/21 HOTランキング1位!たくさんの方にお読みいただきありがとうございます ※他サイトでも公開しています。

処理中です...