王子様を放送します

竹 美津

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本編

12日夕刻、ピティエ

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ピティエは、お披露目広場まで、父母、ルテじいやルテじいの孫夫婦、ピティエの補助、相棒となるコンコルド少年、そして護衛達と出掛けた。

午後少し遅くなってからの事だった。大事の宝、開いたばかりの喫茶室の、戸締りまでちゃんとしてきたからである。

兄ジェネルーは、ピティエ達と一緒に、王都で魂迎えではなく、領地で迎える事にしたので、このお披露目広場には、いない。
当人は、「せっかくピティエの喫茶室もできて、行ってみたいのに。初めてのおぼんを、ピティエと過ごせないなんてぇ!」などとグズグズ言っていたが、父母に、つべこべ言わず行ってこい!と尻を蹴られるかの如く、ポイっと飛びトカゲに乗せられて行った。

そして父母は、ニコニコとプレオープンで喫茶室には招待済みである。店としての体裁が整っているかどうかも、チェックしてもらっていた。
それを乗り越えての、本日、満を持した、竜樹とルテじい達のご招待だったのだ。

冥界の門が開いて、魂達がやってくる気配は、濃厚に鮮やかにピティエにも感じられた。

今は、ピティエにまとわりつく魂達を感じながら、白杖をふりふり、つきつつ、皆で家に戻る。

「コンコルド、家に帰らせてあげられなくて、ごめんね。」
「いいえ!父のいる家に帰っても、多分、魂迎えには、行かせてもらえなかったと思うんです。母も、大分前に逃げ出しちゃって、いないし。ピティエ様と一緒に魂をお迎えできて、ランプも買っていただけて、とても嬉しいです!」

コンコルドの、遠慮して買った小さな魔道具ランプに、魂が2つほど、寄ってきてピカリと踊っている。
くふふ、と笑う声が聞こえて、ピティエは、コンコルドにランプを買ってあげられて、本当に良かった、と思った。

「これから毎年、一緒に、魂を迎えに行けるからね。」
「はい!」

ピティエは幸せに満たされて。そしてピティエの父母も、幸せのお裾分けを貰って。馬車溜まりから乗り場へ準備された、アシュランス公爵家の馬車にピティエと父母、コンコルドは乗り、ルテじい達はもう一つ、格を落とした馬車に乗り。それでも恐れ多いとルテじい達は恐縮していたが、皆笑顔で王都の家に着いた。

「旦那様、奥様。」
執事のブリーズが、出迎えて。
「ヴェール侯爵家アトモス様、マタン様がみえています。応接室にてお待ちです。」

え? と顔を見合わせるアシュランス公爵家の皆である。ヴェール侯爵家は、ピティエの父、ピオニエの弟が婿に行った家だ。アトモスと、マタンは、弟の息子兄弟。ピティエにとっては従兄弟である。
やたらと実家に帰ってくるピオニエの弟は、婚家では居心地が悪いらしい。夫婦仲は悪くないのだが、妻側の圧には時々疲れる、とのこと。今回も、領地の方へ帰る、と連絡済。
しかし、それでこんな、家族の儀式として大切なおぼんの時期に、実家に帰る婿、大丈夫なのか。
それに、領地の方で、集まってご先祖様の魂を迎えたい、と親戚連中が言ったからこそ、ジェネルーを領地にやったというのに、従兄弟達は何故?

ピティエは、少し警戒しながら、応接室に向かう父母の後ろをついて行った。
従兄弟とはいえ、あまり遊んでこなかった間柄だ。ピティエが遊びについていけなかったのだが、従兄弟達も全くピティエに合わそうとはしなかったので、自然と距離があった。

「アトモス、マタン。おぼん中に、急にどうしたのだ?自分の家の魂迎えがあるだろう?」
父ピオニエが聞くと。

「伯父様、おば様、水臭いじゃありませんか。」
兄アトモスが、ニコリと笑って、出されていたお茶を、コクリと飲んで。
「ピティエが、新しく店を出したって聞きましたよ。是非、行ってみたいと思って、父の同行を断ってこちらに来たんです。」

す、とピティエは、背筋が硬く、肩が縮むような思いがした。

アトモス。
『お前みたいな、目も見えないやつのせいで、私の父は、お祖父様に謝罪しなければならなかったんだぞ!』
『お前なんか、どっかいっちゃえばいいんだ!』

そう言ったのは、君だったじゃないか。





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