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本編
閑話 花の兄9
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「では、いただきましょう!竜樹、最初に一口たべて!」
オランネージュがソワソワと促す。王子達だってお料理を気にして、竜樹が準備に余念がないのは知らなかったけど、ちゃんと試食をしたりしたのである。子供ならではの視点で、バーガーのピクルス苦手、とか提案してくれた。
「はーい!」
ニコニコニッコリ、竜樹は良いお返事をする。
どれから食べようかな?あまり迷ってはいられない。小ちゃな子などは、待ちきれずもう手をつけているが、大きな子やご招待したお客様達、王様などはちゃんとニコニコ待っている。
お手拭きで手を拭いて、ハンバーガーを手掴み、大きな口をあんぐりあけて、パクッと!
もぐ、もぐ。
「おーいひーい!皆もさあ、食べて食べて!」
うふふふふ!
嬉しそうな皆に囲まれて食べる、ご馳走ハンバーガーは、お肉もジューシーで、挟んだトマトやレタス、焼いた玉ねぎも絶妙に合う、トマトケチャップベースのソースが素敵な味わい。ピクルスは付け合わせで、さっぱりと。好き嫌いがあるので、好みで別添えにした。子供達には付けずに、主に大人達に。つまみながらバーガーを、ハグリ!コリコリ!と食べれば、あと引く美味さ。子供が食べるのを考えて、また他のご馳走もあるしで、小さめな大きさにしてある所も、丁度良い。
子供達もご招待客達も、遠慮なくガブリ!と噛みついて、むっしりむっしりと味わう。
ピティエとプレイヤード、それからアミューズと他にも視力の弱い子達は、お助け侍女さんが席まで誘導してくれたし、またお料理の説明と食べ方を教えてくれて、これまたガブリと美味しそうに、思い思いにバーガーを食べた。
「おいちいね!」
「おれ、まいにちおたんじょうかいでも、いいな!」
「おいしいわね!わたし、はんばーがーだいすき!」
「ぼくも!」
うふふ!笑いながら、わいわいお話しながら食べる。子供達は、お口をお肉のソースで汚し、一生懸命にもぐもぐ。
一口、冷やしたこちらにもあった半発酵のお茶、ウーロン茶、を飲んで、お口をリセットする。
バーガーの隣に存在感のある、ハーブで香味をつけた、洒落たフライドポテトをちょいとつまむ。いつものジャンクな味わいが、一段上に、ワインか何かでも、飲んでいいかな!って味である。この誕生会では、お酒は出ないのが惜しい。
ハーブのフライドポテトは皮付きのくし形だが、その隣の、竜樹にはいつもの馴染み深い細長いフライドポテトも、ケチャップが添えられてそそる。今回大量のフライドポテト用に、ポテトカッターを作ったから、これから沢山作ってもらえるだろう。モグリとすれば、まぶされた塩味が、懐かしい。
「えーこれ、おいしいなあ。はあ、モグ。」
間に、大きく切ってこってりしながらもどこか口に優しい、あまじょっぱい杏のジャムのソースを絡めた、鳥のロースト肉を、ハムんと食べて堪能する。中に詰めた栗もうまい。こちらの伝統的なご馳走だそうなのだが、料理長流石のお味である。しっかりした、チキンの味わいが、焼き加減も相まってたっぷり美味しい。
塊肉、こちらは牛っぽいやつ、のローストもあって、そちらは薄切り。ちょっとお醤油を効かせて、味は地方に良くある感じなのだそうだが、料理長渾身の作で、細長い香味野菜と共にいただく。
カシオン風のサッパリサラダをちょい、ちょいと挟んで。野菜スープも、すす、と温かくてスッキリしていて、地味に良い仕事、合うったらない。
「もぐ。ごくん。お茶を一口。こちら、お料理次々とご紹介していきます!」
スーリールが席に着いて、リポートしながら食べている。
本当は、先ほど一口食べた超美味しいハンバーガーを、もっとゆっくり堪能したいが、が!こらえて、いや一口二口多く、長くもぐもぐはしたが、この国伝統の鳥ロースト達も含め、新しいお料理の美味しさを、皆に伝えなくては!
ニュース隊のスーリールは、使命感と官能の食欲との間で戦っている。カメラのプリュネルとアシスタントディレクターのクーリールは、先に食べられるの良いな~、でも後で落ち着いて食べたいしなぁ~、とよだれを我慢。
「次はこちら、グラタン、というお料理ですね。まずは食べてみますね。」
スプーンを入れれば、ほっくりしたお芋とマカロニにホワイトソース、焼き色のついたチーズがみょ~ん、と伸びていかにも、いかにも美味しそうである。ふわぁ、とあがる熱気に、ふう、ふう、として。
ぱくり、はむん!
クリーミー!お乳のまったり感。お芋と、ぷりっとして充分火が通ったマカロニの、くたくたっとした所に、ホワイトソースとチーズのしょっぱい衝撃。それでいてまろやかな、温かいホッとする味わい。
目を瞑って、もぐ、もぐしていたスーリールに、生放送でテレビを見ていた人も、早く、早くどんな味!?と固唾を飲んで待っていた。会場ではそんな事伝わらないが、どの家庭でも、丁度ご飯時、竜樹様のお誕生祝いだからと少し奮発したお家も多くて。独り身の人も、今日はお店に出かけたり、友達同士で集まったり。それぞれのご馳走を味わいながらも、お店や家のテレビを楽しく見ている。来年は、あれ、食べてみたいね!どうやって作るんだろ?どこで食べられるかな?このお肉も美味しいよ。なんて話をしながら。
「う~ん、優しいお味!きっと子供達も大好きです!お乳のしょっぱいホワイトクリームが、抜群にお芋と、この小麦粉で作られた、マカロニというパスタに絡んで、焦げたチーズも、美味しい!お芋ほっくほくです!」
目を瞑って食べていたスーリールが、目をかっぴらいて、その後、ふっと寛いだ顔になると、味見だけじゃない食べたいから食べる、という1匙2匙を挟んだ。優しいけど止まらない美味しさが、伝わってくる。
「こちらのお料理は、材料自体は、ちょっとソースに使われるバターや上にかけるチーズがお高いですけど、少ししか使わないし、それ以外はお芋やお乳、小麦粉、と手に入りやすいです。マカロニはこれから、乾いた麺として、扱いやすい形で流通するのだそうですがーーー茹でて色々なお味を付けて簡単に美味しく食べられるパスタとしてーーーマカロニは、無ければ入れなくても良いんですって。ブロッコリーを入れたり、エビを入れても良いし、アレンジが効く食べ物だそうですよ!そんなグラタンのレシピ、こちらの本に載っています!『竜樹様のお誕生会の特別レシピーー美味しい食べ方や家庭でも出来る簡単なケーキの作り方までーー』これからお店に並びます!まだ置いてないので、気になる方はご予約を。皆さん、これがあれば、今日のご馳走を、ご家族のお誕生月に楽しむ、なんて事も出来ますよ!」
側にあったレシピ本の、料理写真も美しい仮製本を掲げながら、スーリールが紹介する。クレールじいちゃんも協力の、バッチリな段取りである。
「また、先ほど竜樹様がろうそくを吹き消した、ケーキですが。綺麗で魅力的ですよね!これからお味をお試ししますけども。•••この本にも簡単なものの作り方が載っていますが、お店で買う事もできます。開店は10日後、アレルギー対応のケーキ、小麦粉でかゆかゆになったり、たまごでぼつぼつができたりとかですね、そんな方にも食べられる、安心な材料を使った、材料の全部を書いた紙もついている、優しいケーキ。そんなケーキ屋さんが1軒。ケーキ屋ジャンティー。アレルギーの小さな診療所も隣接してます。心配な方は、診てもらえますよ。」
「それから、目眩くデザートの王様を楽しめる、ケーキ屋さん1軒。デセール・デ・ロワ。エルフのお菓子作りを長年してきた、アレルギー対応の植物材料にも詳しい姉弟、フランさんがアレルギー対応のケーキ屋ジャンティーを。ナップさんが、得意の大胆な発想と計算された美味しさで作る華麗なケーキ屋、デセール・デ・ロワを。それぞれを作りながらも協力して運営するお店です。とっても楽しみですね!私も買います!まずはこの、目の前のケーキを味わいたいですがーーーデザートですので、その前に。さてさて、次のお料理はーーー。」
料理の紹介は続く。
赤ちゃん幼児達は、離乳食を食べられるようになった子から、具を小さく切った茶碗蒸しを貰っている。
はーい、あーん!とお口に入れて貰って、あったかくてトロンと崩れて出汁が旨くて、赤ちゃん幼児もニッコニコに。
ふわ、むふ!
「もっちょ、もっちょ、たわんむち、おいち!」
お口を叩いて、おいしおいし、している。
畠中家の皆も、その様子を見て、賑わいながらあちらでご馳走に舌鼓を打っている。サチは今日はダイエットを忘れ、ニッコ!とバーガーに齧り付いている。柊尚が、ちょっとまごまごしながらも、嬉しそうに、美味しそうに。ぽん太君はほっぺを汚しつつ、良い食いっぷりだ。千紗ちゃんもはしゃいで、それを見守るコウキも文さんも、マリコ母もタツヤ父も、竜樹が嬉しそうにご馳走を食べてるのもチラチラしながら。
お料理、大成功だったんじゃない!?と拍手喝采の気持ちだ。
アレルギー持ちの子達だが。
スリーズは、皆と同じお料理が、アレルギー対応の特別な、スリーズ達へのお料理だよ!と違いを教えてもらいながらも、見かけはそっくりなお料理を、わわっ!と嬉しく。
グラタンに、スプーンを入れる。
ホワイトソースの乳も、バターも、小麦粉も。マカロニの小麦粉も、上にかかったチーズも。
エルフの植物食材や、米粉でできている。
パクリ!と食べる。
マカロニが、ぷりぷりくたっと、お口からはみ出て、それを、もぐ、もぐ、ニッコリ口に入れていく。
料理の提供を終えて、広間に料理人の白い立て襟のシャツで、副料理長がハラハラ、心配そうに来ていて。そんなの気にもしてない、アレルギーの子達が、そしてスリーズが、マカロニをお口からはみ出させて笑顔でモグモグしている姿を見て、様子を窺っていた副料理長は、ヨシッ!!!と手をグッと握って快哉した。
たまごアレルギーのフィスキオも、茶碗蒸しをひと匙ずつ、味わって嬉しそうに、食べているし。
乳製品がダメなヴィーノも、グラタンをほくほくと味わい、満面の笑みである。
さあ、食べ進んで、これからケーキかな、という所で。
「ごちそう中ですが、皆さん、よろしいですか?竜樹に、皆からのプレゼントを渡したいと思います!」
オランネージュが、お口を拭いてから、マイクを持ってお話。モグモグしてたのに、忘れなかったの偉い。
ネクターとニリヤは、ハッとして急いでお口を拭き、モグモグごっくんした。
3王子の側にあった、青いリボンがかけられた、茶色の細長いプレゼントボックスを、これまたお口を拭いたジェムが、代表して受け取り、竜樹の側にトコトコ持ってきた。
カメラのミランとニュース隊のカメラ、両方が寄ってくる。
竜樹も口を拭いて、ジェムを見守る。
「竜樹父さん、これ、俺たちみんなで、お金をちょっとずつ出し合って作ってもらったんだ。ニリヤでんかの、じいちゃんに。でんかたちと、試作品見たりして、色々意見出して、つくりました!お金は、貴族のエフォール様やピティエ様、プレイヤード様にも出してもらったし、ロテュスでんかや、アルディでんか、オランネージュでんか兄弟にも、多めに出してもらった。そんなプレゼントだけど、気に入ってもらえると、嬉しいです。どうぞ。」
ずい、とぶっきらぼうに、でも笑ってこちらに差し出したプレゼントを、竜樹は柔らかく受け取って。
「ありがとう、ジェム、みんな。開けても良い?」
クリクリ、とジェムの頭を撫でて、今日は笑顔ばっかりの竜樹が聞けば、勢いよくジェムが、うん!と頷く。
ではではね•••。
しゅるり、とリボンを解けば、プレゼントボックスはパカリと蝶番で開く綺麗な木目の箱になっていた。高級そうな予感がする箱である。リボンを丁寧に脇に寄せる。
中身を知っている竜樹だけれど、でも、完成品を見るのは初めてだから、新たな気持ちがして、どれどれ、と楽しみに、パックリ、箱を開いた。
シルバーの光沢も目に程よく。
そして、一体型のT字も、鋭く切れやすそうな刃も、持ち手の所が滑りにくいようにギザギザしてるのも、カッコいい。そうして。
「あ、ここに、名前入れてくれてるんだ。」
5012.芽孕み月 タツキへ
みんなより 日頃の感謝と愛を込めて
今年の年号と、名前と。
それから短いメッセージも、刻まれている。
「てぃーじの、ひげそりなんだよ!ししょう、こまってたでしょ!」
ニリヤが、得意げに頭をウンウンさせて聞いてくる。
「良く覚えてたね!すごい!カッコいいひげ剃りだ!これで毎日、身だしなみが綺麗に整うね!誰と会っても大丈夫だよ~!嬉しいなあ!ありがとう、みんな!」
うわぁ~い!喜んでもらえた!
子供達は、フォークを手にしたまま、おててを上げたり、ニパッと笑ったり、満足げに隣の子と、やったね!と言い合ったり。
ニンマリした竜樹が、すり、すり、ヒゲを剃る真似をすると、キャハ!と笑って。
クレールじいちゃんが、ウムウムと、ニコニコと、竜樹と王子達を見て微笑み、ふぅ~、と息を吐いてパクリとお肉と栗を一緒に食べた。
「嬉しいね。嬉しいね。それじゃあ、みんなが用意してくれた、ケーキも食べてみようかな?みんなも、もう食べてるかな?」
おいし~い!
まだー!
と様々な声に、おお~と返事をしつつ。
お助け侍女さんが、綺麗にケーキをカットして、竜樹に美しく差し出してくれた。
オランネージュがソワソワと促す。王子達だってお料理を気にして、竜樹が準備に余念がないのは知らなかったけど、ちゃんと試食をしたりしたのである。子供ならではの視点で、バーガーのピクルス苦手、とか提案してくれた。
「はーい!」
ニコニコニッコリ、竜樹は良いお返事をする。
どれから食べようかな?あまり迷ってはいられない。小ちゃな子などは、待ちきれずもう手をつけているが、大きな子やご招待したお客様達、王様などはちゃんとニコニコ待っている。
お手拭きで手を拭いて、ハンバーガーを手掴み、大きな口をあんぐりあけて、パクッと!
もぐ、もぐ。
「おーいひーい!皆もさあ、食べて食べて!」
うふふふふ!
嬉しそうな皆に囲まれて食べる、ご馳走ハンバーガーは、お肉もジューシーで、挟んだトマトやレタス、焼いた玉ねぎも絶妙に合う、トマトケチャップベースのソースが素敵な味わい。ピクルスは付け合わせで、さっぱりと。好き嫌いがあるので、好みで別添えにした。子供達には付けずに、主に大人達に。つまみながらバーガーを、ハグリ!コリコリ!と食べれば、あと引く美味さ。子供が食べるのを考えて、また他のご馳走もあるしで、小さめな大きさにしてある所も、丁度良い。
子供達もご招待客達も、遠慮なくガブリ!と噛みついて、むっしりむっしりと味わう。
ピティエとプレイヤード、それからアミューズと他にも視力の弱い子達は、お助け侍女さんが席まで誘導してくれたし、またお料理の説明と食べ方を教えてくれて、これまたガブリと美味しそうに、思い思いにバーガーを食べた。
「おいちいね!」
「おれ、まいにちおたんじょうかいでも、いいな!」
「おいしいわね!わたし、はんばーがーだいすき!」
「ぼくも!」
うふふ!笑いながら、わいわいお話しながら食べる。子供達は、お口をお肉のソースで汚し、一生懸命にもぐもぐ。
一口、冷やしたこちらにもあった半発酵のお茶、ウーロン茶、を飲んで、お口をリセットする。
バーガーの隣に存在感のある、ハーブで香味をつけた、洒落たフライドポテトをちょいとつまむ。いつものジャンクな味わいが、一段上に、ワインか何かでも、飲んでいいかな!って味である。この誕生会では、お酒は出ないのが惜しい。
ハーブのフライドポテトは皮付きのくし形だが、その隣の、竜樹にはいつもの馴染み深い細長いフライドポテトも、ケチャップが添えられてそそる。今回大量のフライドポテト用に、ポテトカッターを作ったから、これから沢山作ってもらえるだろう。モグリとすれば、まぶされた塩味が、懐かしい。
「えーこれ、おいしいなあ。はあ、モグ。」
間に、大きく切ってこってりしながらもどこか口に優しい、あまじょっぱい杏のジャムのソースを絡めた、鳥のロースト肉を、ハムんと食べて堪能する。中に詰めた栗もうまい。こちらの伝統的なご馳走だそうなのだが、料理長流石のお味である。しっかりした、チキンの味わいが、焼き加減も相まってたっぷり美味しい。
塊肉、こちらは牛っぽいやつ、のローストもあって、そちらは薄切り。ちょっとお醤油を効かせて、味は地方に良くある感じなのだそうだが、料理長渾身の作で、細長い香味野菜と共にいただく。
カシオン風のサッパリサラダをちょい、ちょいと挟んで。野菜スープも、すす、と温かくてスッキリしていて、地味に良い仕事、合うったらない。
「もぐ。ごくん。お茶を一口。こちら、お料理次々とご紹介していきます!」
スーリールが席に着いて、リポートしながら食べている。
本当は、先ほど一口食べた超美味しいハンバーガーを、もっとゆっくり堪能したいが、が!こらえて、いや一口二口多く、長くもぐもぐはしたが、この国伝統の鳥ロースト達も含め、新しいお料理の美味しさを、皆に伝えなくては!
ニュース隊のスーリールは、使命感と官能の食欲との間で戦っている。カメラのプリュネルとアシスタントディレクターのクーリールは、先に食べられるの良いな~、でも後で落ち着いて食べたいしなぁ~、とよだれを我慢。
「次はこちら、グラタン、というお料理ですね。まずは食べてみますね。」
スプーンを入れれば、ほっくりしたお芋とマカロニにホワイトソース、焼き色のついたチーズがみょ~ん、と伸びていかにも、いかにも美味しそうである。ふわぁ、とあがる熱気に、ふう、ふう、として。
ぱくり、はむん!
クリーミー!お乳のまったり感。お芋と、ぷりっとして充分火が通ったマカロニの、くたくたっとした所に、ホワイトソースとチーズのしょっぱい衝撃。それでいてまろやかな、温かいホッとする味わい。
目を瞑って、もぐ、もぐしていたスーリールに、生放送でテレビを見ていた人も、早く、早くどんな味!?と固唾を飲んで待っていた。会場ではそんな事伝わらないが、どの家庭でも、丁度ご飯時、竜樹様のお誕生祝いだからと少し奮発したお家も多くて。独り身の人も、今日はお店に出かけたり、友達同士で集まったり。それぞれのご馳走を味わいながらも、お店や家のテレビを楽しく見ている。来年は、あれ、食べてみたいね!どうやって作るんだろ?どこで食べられるかな?このお肉も美味しいよ。なんて話をしながら。
「う~ん、優しいお味!きっと子供達も大好きです!お乳のしょっぱいホワイトクリームが、抜群にお芋と、この小麦粉で作られた、マカロニというパスタに絡んで、焦げたチーズも、美味しい!お芋ほっくほくです!」
目を瞑って食べていたスーリールが、目をかっぴらいて、その後、ふっと寛いだ顔になると、味見だけじゃない食べたいから食べる、という1匙2匙を挟んだ。優しいけど止まらない美味しさが、伝わってくる。
「こちらのお料理は、材料自体は、ちょっとソースに使われるバターや上にかけるチーズがお高いですけど、少ししか使わないし、それ以外はお芋やお乳、小麦粉、と手に入りやすいです。マカロニはこれから、乾いた麺として、扱いやすい形で流通するのだそうですがーーー茹でて色々なお味を付けて簡単に美味しく食べられるパスタとしてーーーマカロニは、無ければ入れなくても良いんですって。ブロッコリーを入れたり、エビを入れても良いし、アレンジが効く食べ物だそうですよ!そんなグラタンのレシピ、こちらの本に載っています!『竜樹様のお誕生会の特別レシピーー美味しい食べ方や家庭でも出来る簡単なケーキの作り方までーー』これからお店に並びます!まだ置いてないので、気になる方はご予約を。皆さん、これがあれば、今日のご馳走を、ご家族のお誕生月に楽しむ、なんて事も出来ますよ!」
側にあったレシピ本の、料理写真も美しい仮製本を掲げながら、スーリールが紹介する。クレールじいちゃんも協力の、バッチリな段取りである。
「また、先ほど竜樹様がろうそくを吹き消した、ケーキですが。綺麗で魅力的ですよね!これからお味をお試ししますけども。•••この本にも簡単なものの作り方が載っていますが、お店で買う事もできます。開店は10日後、アレルギー対応のケーキ、小麦粉でかゆかゆになったり、たまごでぼつぼつができたりとかですね、そんな方にも食べられる、安心な材料を使った、材料の全部を書いた紙もついている、優しいケーキ。そんなケーキ屋さんが1軒。ケーキ屋ジャンティー。アレルギーの小さな診療所も隣接してます。心配な方は、診てもらえますよ。」
「それから、目眩くデザートの王様を楽しめる、ケーキ屋さん1軒。デセール・デ・ロワ。エルフのお菓子作りを長年してきた、アレルギー対応の植物材料にも詳しい姉弟、フランさんがアレルギー対応のケーキ屋ジャンティーを。ナップさんが、得意の大胆な発想と計算された美味しさで作る華麗なケーキ屋、デセール・デ・ロワを。それぞれを作りながらも協力して運営するお店です。とっても楽しみですね!私も買います!まずはこの、目の前のケーキを味わいたいですがーーーデザートですので、その前に。さてさて、次のお料理はーーー。」
料理の紹介は続く。
赤ちゃん幼児達は、離乳食を食べられるようになった子から、具を小さく切った茶碗蒸しを貰っている。
はーい、あーん!とお口に入れて貰って、あったかくてトロンと崩れて出汁が旨くて、赤ちゃん幼児もニッコニコに。
ふわ、むふ!
「もっちょ、もっちょ、たわんむち、おいち!」
お口を叩いて、おいしおいし、している。
畠中家の皆も、その様子を見て、賑わいながらあちらでご馳走に舌鼓を打っている。サチは今日はダイエットを忘れ、ニッコ!とバーガーに齧り付いている。柊尚が、ちょっとまごまごしながらも、嬉しそうに、美味しそうに。ぽん太君はほっぺを汚しつつ、良い食いっぷりだ。千紗ちゃんもはしゃいで、それを見守るコウキも文さんも、マリコ母もタツヤ父も、竜樹が嬉しそうにご馳走を食べてるのもチラチラしながら。
お料理、大成功だったんじゃない!?と拍手喝采の気持ちだ。
アレルギー持ちの子達だが。
スリーズは、皆と同じお料理が、アレルギー対応の特別な、スリーズ達へのお料理だよ!と違いを教えてもらいながらも、見かけはそっくりなお料理を、わわっ!と嬉しく。
グラタンに、スプーンを入れる。
ホワイトソースの乳も、バターも、小麦粉も。マカロニの小麦粉も、上にかかったチーズも。
エルフの植物食材や、米粉でできている。
パクリ!と食べる。
マカロニが、ぷりぷりくたっと、お口からはみ出て、それを、もぐ、もぐ、ニッコリ口に入れていく。
料理の提供を終えて、広間に料理人の白い立て襟のシャツで、副料理長がハラハラ、心配そうに来ていて。そんなの気にもしてない、アレルギーの子達が、そしてスリーズが、マカロニをお口からはみ出させて笑顔でモグモグしている姿を見て、様子を窺っていた副料理長は、ヨシッ!!!と手をグッと握って快哉した。
たまごアレルギーのフィスキオも、茶碗蒸しをひと匙ずつ、味わって嬉しそうに、食べているし。
乳製品がダメなヴィーノも、グラタンをほくほくと味わい、満面の笑みである。
さあ、食べ進んで、これからケーキかな、という所で。
「ごちそう中ですが、皆さん、よろしいですか?竜樹に、皆からのプレゼントを渡したいと思います!」
オランネージュが、お口を拭いてから、マイクを持ってお話。モグモグしてたのに、忘れなかったの偉い。
ネクターとニリヤは、ハッとして急いでお口を拭き、モグモグごっくんした。
3王子の側にあった、青いリボンがかけられた、茶色の細長いプレゼントボックスを、これまたお口を拭いたジェムが、代表して受け取り、竜樹の側にトコトコ持ってきた。
カメラのミランとニュース隊のカメラ、両方が寄ってくる。
竜樹も口を拭いて、ジェムを見守る。
「竜樹父さん、これ、俺たちみんなで、お金をちょっとずつ出し合って作ってもらったんだ。ニリヤでんかの、じいちゃんに。でんかたちと、試作品見たりして、色々意見出して、つくりました!お金は、貴族のエフォール様やピティエ様、プレイヤード様にも出してもらったし、ロテュスでんかや、アルディでんか、オランネージュでんか兄弟にも、多めに出してもらった。そんなプレゼントだけど、気に入ってもらえると、嬉しいです。どうぞ。」
ずい、とぶっきらぼうに、でも笑ってこちらに差し出したプレゼントを、竜樹は柔らかく受け取って。
「ありがとう、ジェム、みんな。開けても良い?」
クリクリ、とジェムの頭を撫でて、今日は笑顔ばっかりの竜樹が聞けば、勢いよくジェムが、うん!と頷く。
ではではね•••。
しゅるり、とリボンを解けば、プレゼントボックスはパカリと蝶番で開く綺麗な木目の箱になっていた。高級そうな予感がする箱である。リボンを丁寧に脇に寄せる。
中身を知っている竜樹だけれど、でも、完成品を見るのは初めてだから、新たな気持ちがして、どれどれ、と楽しみに、パックリ、箱を開いた。
シルバーの光沢も目に程よく。
そして、一体型のT字も、鋭く切れやすそうな刃も、持ち手の所が滑りにくいようにギザギザしてるのも、カッコいい。そうして。
「あ、ここに、名前入れてくれてるんだ。」
5012.芽孕み月 タツキへ
みんなより 日頃の感謝と愛を込めて
今年の年号と、名前と。
それから短いメッセージも、刻まれている。
「てぃーじの、ひげそりなんだよ!ししょう、こまってたでしょ!」
ニリヤが、得意げに頭をウンウンさせて聞いてくる。
「良く覚えてたね!すごい!カッコいいひげ剃りだ!これで毎日、身だしなみが綺麗に整うね!誰と会っても大丈夫だよ~!嬉しいなあ!ありがとう、みんな!」
うわぁ~い!喜んでもらえた!
子供達は、フォークを手にしたまま、おててを上げたり、ニパッと笑ったり、満足げに隣の子と、やったね!と言い合ったり。
ニンマリした竜樹が、すり、すり、ヒゲを剃る真似をすると、キャハ!と笑って。
クレールじいちゃんが、ウムウムと、ニコニコと、竜樹と王子達を見て微笑み、ふぅ~、と息を吐いてパクリとお肉と栗を一緒に食べた。
「嬉しいね。嬉しいね。それじゃあ、みんなが用意してくれた、ケーキも食べてみようかな?みんなも、もう食べてるかな?」
おいし~い!
まだー!
と様々な声に、おお~と返事をしつつ。
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小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。
両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。
両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。
しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。
魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。
自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。
一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。
初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。
恋人になりたいが、年上で雇い主。
もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。
そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。
そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。
レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか?
両片思いのすれ違いのお話です。
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