王子様を放送します

竹 美津

文字の大きさ
517 / 717
本編

お布団の上で

しおりを挟む

「ただいま~。」
「「ただいまぁ~!」」

竜樹とオランネージュ、ネクターの2王子、そして竜樹に抱っこでスヤスヤのニリヤ王子。縦抱っこなんてカッコ良くはない。コアラの抱っこ。向かい合わせに、がぱりとあんよを開いたニリヤを、お尻のとこで手を組んで支えているのである。

いつもの護衛マルサ達に、週刊王子カメラの侍従兼ミラン。感謝祭や採用試験の間は一緒の何でも実現バーニー君に、今日明日はお試しに寮で、お天気担当ADコメット君。お助け侍従のタカラが、そそそと後からついて行く。

そしてキャリコ少年。
今夜から一緒に暮らす事になる、10歳ながら呪術師をやらされ、感情の抑制から少しずつ解放されてゆく彼は、気後れする、だとか、人見知りする、だとかの感情の動きも少ないのだろう。ただただ、瞳の星を微かに揺らして、竜樹の袖をしっかと掴み。

「•••こんばんゎ。」

と落ち着いて呟いた。

新聞寮で待っていたジェム達、そして先に寮に帰っていたチームワイルドウルフ達は。交流室にひょいと顔を覗かせて「ただいま」を言う竜樹達を、靴を脱いで、たしたしと廊下を歩いてくる音でもう、そわそわと待ち構えていて、アリンコが集るみたいに、わわわ~っ!と取り囲んだ。
初見のキャリコ少年の周りも、避けずにである。

「竜樹とーさ、王子様たち、おかえり!」
「おかえりぃ!」
「かえりい~。」
「たつきとーさ、サンみてたよ!うた!」
「オレもみた!ひろば、いったの!」
「いっしょ、うたった~!」
ぎゅむーと抱きついてくる小ちゃい子組達と、女の子5歳のジゥも負けじとぎゅむぎゅむ纏わりついてきて。竜樹は笑いながら、ニリヤを抱っこして不自由な片手で、低い位置の頭を、よいっと順繰り、撫で撫でこした。

「大画面広場行ったかー。皆して行った?どうだった?」
竜樹がニコニコしつつ、交流室の真ん中、ラフィネ母さんやエルフのマレお姉さん、ベルジュお兄さん、そして元王女のエクレとシエルが、お布団の準備をしている場所へ皆を促しながら。
よっこいしょ、とニリヤを敷き布団に、ゆっくり横たえる。コロリンコ、と横向きになって、すーふ、と安堵の寝息。起きない。よ、よっと、頭を抱いて浮かせて、枕を差し入れてやる。起きない。
小ちゃい子組のロンが、優しいね、掛け布団をぱふりと掛けてくれる。

「ありがとうね、ロン。助かるなー。」
「えへへ。たつきとーさ、たすかる。」
ふくふくほっぺを、撫でこ。
サンが竜樹の背中にペタッと引っ付き、セリューがよごよご頭を寄せてきて、撫でこして欲しいなーっと、竜樹の腕を取り自分のほっぺに当てた。ジゥは竜樹の横腹に寄りかかり、ちょこと座っている。

オランネージュとネクターは、チームワイルドウルフ達と、何かキャッキャだ。

ラフィネが枕をポフポフした後、膝で寄ってきて、お帰りなさい、と温かく小さな声で。
「•••ニリヤ殿下は、お疲れ様ね。今日一日、頑張ってらしたもの。皆で見ていましたわ。」

大っきい子組が、うんうん、と頷いて、そっとだけど、報告したくて竜樹の袖をつんつん引く。
「ラフィネかーさ達大人と、皆で大画面広場行ってきたよ!」
「ぱぶりっくびゅーいんぐ?てゆのだっけ?いーっぱい、お祭りを楽しむ人たちが、無料だって集まっててさ。大人も、子供も、にぎやかだった!」
「屋台も、いっぱいでたー!」
「俺たちも、布しいて場所とって、お昼とかおやつ買って食べたり、ゴロゴロおうえんしてたんだ!夜ごはん、おそくなったけど、ぜんぶみたんだよ!」

そこでジェムが、ふぬぬ、と腕を組んで。
「神乞いもみた!そこの、新入り、キャリコってゆうんだろ。俺は、ジェムだぜ。よろしくな。色々大人のつごうで、大変だったな!ここでは、竜樹とーさがにらみをきかせてるから、俺たちと一緒にいたら、全然いい感じだぜ。」
いきなり親密に肩を叩いて、背中を押して。子供の距離の縮め方は、あっという間だ。

キャリコ少年は、竜樹にくっ付いて膝を布団について、瞳を揺らしていたのだが、ジェムに挨拶されて肩抱かれて。
ジェムと竜樹を、交互に、? と見た。ゆららの瞳。

竜樹は子供団子になりながら、ニカカ、と笑ってやって。
「ジェムが、よろしくだって。キャリコ君、初めましてだね。皆と仲良く、ここで暮らしていこう。優しい子達だから、安心して良いからね。」

そして、ジェム達に。
「皆、キャリコ君をよろしくね。ぎゅって感じるのを閉じ込められて、皆みたいに、嬉しい、とか、楽しい、とか、悲しい、だとかが、まだはっきり出ない子なんだよ。ゆっくりで難しいかもなんだけど、段々気持ちを教えてくれるだろうからね。」

「わかった!」
「うん、ちっちゃいこみたいってことかな~。」
「大人しいこ、って感じ?」

14歳のネフレが、不自由な足を引きジェム達の後ろで膝をついて、考えながら。
「急がせないで、どうかな?って、感じるのを、待ってあげたら、良いのかな?」

流石に一番歳の大きい子なので、神乞いも見て、普通の子より難しい所もあるキャリコで、面倒を見るにはどうしたらいいか、受け入れ体制をこう?と提案した。
竜樹がウンウン、ニコニコ、としたので、子供達は、それで良いんだな!と了解した。

「よろ、しく?」
キャリコ、何故か語尾上がる。

「うん、よろしくしてやるぜ。な!みんな!」
「お~!よろしく、するぅ!」
「よーしくー。」

元花街組のヴィフアートことアー兄ちゃんも、つつつ、と寄ってきて。布団の上に立って、キャリコをグヌグヌ、と見て。囲んでいるジェム達の後ろから腕を差し伸べて。
ぎゅむ!と子供達ごと、キャリコ少年を抱きしめた。

「お、俺はヴィフアート、アー兄ちゃんだからな。呪術師なんてのは、大人にやらしときゃ良いんだ!お前はここで、俺たちとたっぷり子供時代を味わったら良いからな!俺とお前は、似た者同士だ。アー兄ちゃんが、感情の出し方を、一緒にやってってやるかんな!」

花街で子供時代を大人の中で辛く、甘えを抑え込んで過ごしたヴィフアートには、キャリコの境遇は、他人事ではないのだろう。

竜樹はそれを、ニコニコショボショボ子供団子と眺めて、さて、と膝を一つ打った。
「俺たちはお風呂に入ってくるね。皆ゆっくり寝よう。皆はお風呂済んだんだよね?明日もお祭り、楽しみだなぁ?早く寝て、早く起きると、吟遊詩人ノートさんの突撃⭐︎プロポーズが朝テレビで見られるよ!」

「えーなになに?プロポーズ?」
「どゆこと?」

どーゆー事でしょうかー。
竜樹は言いながら、セリューをぐいっと抱っこして、ぎゅーんとお布団に寝かせてポンポンしてやり。ロンをグォーと抱き上げてその隣の布団に寝かせてポンポン。
背中のサンを、よっこらせ、と前に持ってきて抱っこの寝かせポンポン。横腹のジゥを、女の子なので幾分優しめにどっこいしょ、ポンポン。
子供達、キャッキャ、キャハーと笑ってゴロゴロである。

そんな中でもニリヤは、すーく、すーくと眠っていたのだが。
チームワイルドウルフの中の弟妹、ちみっこ達も、交流室の端っこで、既に眠っていて。そちらは魔道具の灯も落とされて、薄く暗くしてあり、お付きの者達がトントンしてあげていた。
子虎のエンリちゃんも、その中で、スゥ、くふん。ムニャり。もう熟睡か。と思われたのに。

むくっ。

「あら、あらら。エンリ様、大丈夫、ねんねですよ。ねんね。」
虎侍女スープルが、慌てて側に、お布団かけてふんわり抱き留め、よしよしするのだけれど。
ぐいっとその手を遠ざけ、あんよで乗り越えて、ねむねむの、ヨタヨタ虎耳、ぴこぴこ、すんすん匂い嗅ぎ。

「ニリヤでっ、か、でつ•••。」
お目々こしこし。しょもしょも。

「え?何でしょう、エンリ様。ニリヤ殿下も帰ってこられましたから、心配しなくて良いんですよ?」
長い髪を、暴れるエンリちゃんに絡ませて、あわ、わわ!と慌てるスープル。

「スープルさん、エンリちゃんを自由にさせてごらんな。大丈夫だから。」
竜樹が、シャツのまま寝っ転がって腕をつっかえ頭を支え、ダラダラしながら微笑んでいる。
スープルは、はい、と手を引っ込めて子虎エンリちゃんを見守る。

むくむく。ヨタリ。ポテ、ポテ。

「ニリヤでっかと、ねんね。•••でつ。」
まん丸お尻でヨタヨタ、すーくと眠るニリヤの側に来ると、おんなじ枕に、かくん、と膝落としてコロリンコ、寝っ転がって。
「かえて、きたでつ。なかよち•••。」

すーふー。ムニュムニュ。
すー。 す すーく。

向かい合わせに、ニリヤの身体を、ちっちゃな腕で抱えて。
エンリちゃんは、子虎のお耳をピクピクさせながら、くっ、とお口を微笑ませて、眠ってしまった。

睫毛が、ピンピンしなりと瞑った瞼からカールで伸びて、ゆるり。呼吸と共に、僅かに動いている。

「仲良しさんだね、エンリちゃん。ニリヤが大好きなんだね。」
竜樹がニッコリして、ニリヤの布団をエンリちゃんにも掛けてやる。仲良し2人は、もこもこと2つの山になって、くっ付いてぬくぬく。

「えっ!困ります!勿体なくもパシフィストの第3王子であらせられるニリヤ殿下を、大好きだなどと!?」
スープルは、ギョッとするが。
エルフのマレお姉さんや、ベルジュお兄さん、ラフィネかーさなどは、あらあらうふふ、可愛いわね、仲良しねーぇ。一緒が良いんだね。待ってたんだね。大好きなのねぇ。と微笑むばかり。

「た、竜樹様、困りますぅ~!」
情けない顔の虎侍女スープルに、竜樹もカカと笑う。
「困らないヨォ。エンリちゃんとニリヤが、特別の好き同士になったとしても全然困らないよう。子供なんだしさ。大人達が都合で、良いだの駄目だの言わないで、自由にさせて見守ってあげましょうよ。純粋に仲良し、したいだけなんだからさ。」

ちむ、と指を吸うエンリちゃんは、いかにも赤ちゃんから少しだけ大っきくなりました、って感じの子虎幼女である。ひこ、ひこ、とまだ短いお尻尾の先が、布団を膨らませては沈んでいる。

「そ、そんなぁ。奥様に叱られますぅ!本当に特別の仲良しになられても、これから先どうするかって話になりますし!エンリ様の片想いだったら、旦那様が怒り狂いますぅ!獣人って恋愛に関して、人よりも重めなんですからね!」
怒られルゥ!どっちにしても怒られるぅ!戦々恐々とするスープルである。お耳が伏せて、尻尾がブワッとなっている。

「まぁまぁ。なるようになるなる。スープルさんが怒られないように、お家の人と今度話をしてあげるよ。小さな、まだ生まれたての物語を、大人があれこれ期待したり指図して、踏み躙っちゃダメ。ゆるりとね。」
「•••本当に、お話下さいませよぅ。竜樹様!」

スープルが諦めの吐息を、フーと下向きに出した時。
何か腕の中が寂しかったのか、ニリヤが、パタン、と手をエンリちゃんの頭に乗っけて、そのまま、ムニャムニャ、ふにゅ~と抱え込んだ。

「お~。ラブラブだな。」

ギャン!とした顔のスープルに、ニクク、と竜樹はやっぱり、笑ってしまうのだった。

しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

最底辺の転生者──2匹の捨て子を育む赤ん坊!?の異世界修行の旅

散歩道 猫ノ子
ファンタジー
捨てられてしまった2匹の神獣と育む異世界育成ファンタジー 2匹のねこのこを育む、ほのぼの育成異世界生活です。 人間の汚さを知る主人公が、動物のように純粋で無垢な女の子2人に振り回されつつ、振り回すそんな物語です。 主人公は最強ですが、基本的に最強しませんのでご了承くださいm(*_ _)m

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

おっさん料理人と押しかけ弟子達のまったり田舎ライフ

双葉 鳴
ファンタジー
真面目だけが取り柄の料理人、本宝治洋一。 彼は能力の低さから不当な労働を強いられていた。 そんな彼を救い出してくれたのが友人の藤本要。 洋一は要と一緒に現代ダンジョンで気ままなセカンドライフを始めたのだが……気がつけば森の中。 さっきまで一緒に居た要の行方も知れず、洋一は途方に暮れた……のも束の間。腹が減っては戦はできぬ。 持ち前のサバイバル能力で見敵必殺! 赤い毛皮の大きなクマを非常食に、洋一はいつもの要領で食事の準備を始めたのだった。 そこで見慣れぬ騎士姿の少女を助けたことから洋一は面倒ごとに巻き込まれていく事になる。 人々との出会い。 そして貴族や平民との格差社会。 ファンタジーな世界観に飛び交う魔法。 牙を剥く魔獣を美味しく料理して食べる男とその弟子達の田舎での生活。 うるさい権力者達とは争わず、田舎でのんびりとした時間を過ごしたい! そんな人のための物語。 5/6_18:00完結!

「俺が勇者一行に?嫌です」

東稔 雨紗霧
ファンタジー
異世界に転生したけれども特にチートも無く前世の知識を生かせる訳でも無く凡庸な人間として過ごしていたある日、魔王が現れたらしい。 物見遊山がてら勇者のお披露目式に行ってみると勇者と目が合った。 は?無理

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

精霊に愛された錬金術師、チートすぎてもはや無敵!?

あーもんど
ファンタジー
精霊の愛し子で、帝国唯一の錬金術師である公爵令嬢プリシラ。 彼女は今日もマイペースに、精霊達と楽しくモノ作りに励む。 ときどき、悪人を断罪したり人々を救ったりしながら。 ◆小説家になろう様にて、先行公開中◆ ◆三人称視点で本格的に書くのは初めてなので、温かい目で見守っていただけますと幸いです◆

帰国した王子の受難

ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。 取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。

虐げられた令嬢、ペネロペの場合

キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。 幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。 父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。 まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。 可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。 1話完結のショートショートです。 虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい…… という願望から生まれたお話です。 ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。 R15は念のため。

処理中です...