王子様を放送します

竹 美津

文字の大きさ
532 / 717
本編

良い仕事がしたいんだ

しおりを挟む

些細な救いの手が、そこ、ここで。1人の、アル中親父に殴られて、ポツンといたはずの少年、サンジャックを、どうにかしてやりたいと、包んでいた事。
それを知って、サンジャックは、目を眇めて、パチン、パチンとまつ毛を合わせては、面映い顔をした。

「パルクさん。今日は感謝祭でお店が忙しいでしょうに、この即売会にいらして下さったんですね。」
竜樹が、ニコニコ聞くと、酒屋のパルクは、ニカッとして。
「ええ、ええ、竜樹様が、王都の酒屋連中にも、今日の試飲即売会に合わせて、ノンアルも、品評会に出品した酒も、置けるようにはからってくれましたでしょう。きっと午後から問い合わせがあるって思って、母ちゃんに任せて抜け出して、ククと急いで色々見て回りましてね。俺ら達でも試飲はしたけど、お客さんにどうウケてるかな、とか、気になりますしねえ。会場の感じを、他の酒屋の連中も、臨時雇いに配達を任せたりもして、時間を盗んで見にきてますよ。今年1番美味しいお酒も決まりますし、聞いてすぐ、それっとこれが1番の酒だ!って売り出しやりたいですしね!」
うんうん腕組み、しっかり商売。息子のククも、ホワッと笑って竜樹に。
「竜樹様、俺もてつだって、のんある売りばを店につくったよ!」
親指を、グッと立てた。
竜樹もグッ!と親指立てて返す。
「クク偉いなあ、お店のお手伝いして。ククの作ったノンアル売り場、皆に来てもらって、買って飲んでもらえると良いね。」
「うん!」
えへへ、と褒められて嬉しそうなククと、竜樹が顔を見合わせていると、パルク父ちゃんが、とん、と一歩サンジャックに近づいた。

しゃがんで、そっ、と手を差し出して。サンジャックの頭の側に近づけて、ピタ、と一時、止める。
大丈夫かな、と恐る恐るの眼差し。野良の猫を触る時みたいに。

パチン、と一つ瞬きサンジャック。パルクは、ふっ、と笑うと、ポム!と頭の上に大きな手を乗せて、そ~っと、撫でた。
ニヒャリ、本当に嬉しそうに笑み崩れる。

「ああ~、•••撫でさせてくれるもんなぁ~。今は、本当、全然違うよ、サンジャック。前は、撫でてやりたくったって、触ったら切れそうなくらいにピリッとしてたし。周り中に、何かあれば殴られるんじゃないか、って、ビクビク構えて、怯えていたよな。幸せなんだな、サンジャック。俺たちは、お前をいつでも、こうして撫でてやりたかったんだよ。」

竜樹とーさじゃない、パルクおじさん。だけれども、頭に乗った手は無骨で優しくて、また違った温かさなのだ。
サンジャックの胸は、込み上げてくるものでいっぱいになる。
何だろう、なんだ、これ。
何て言って良いのか分からずに。皆が微笑んでいる中で、サンジャックは、ふにゅにゅ、と口をもごもごする。

「サンジャック、ありがとうな。」
撫でながら、パルクがお礼を言う。

「ありがとう、何で?おれが、ありがとうじゃん。」
頬っぺたを赤くして言えば、ククが嬉しそうにムククと飛びついてきて、ととと、よろける。

「サンジャックを助けるつもりで、俺たち酒屋が助かった。お前との縁で、竜樹様に、のんあるをいち早く、詳しく教えてもらえた。俺たちさ、酒屋だから、酒が飲みたい、って奴には、どうしたって売るようになってたよ、今までは。それが、サンジャックのあの、酔いどれ親父みたいな酒崩れしちゃった奴だってだよ。ーーーでも、酒抜きの施設も、のんあるも、出来た。」

しゃがんだまま、サンジャックの二の腕を、グッグッ、と力を込めて掴んでは離して。

「俺たちだって、祝いの酒や、仕事を終えて楽しみの大事な晩酌や、そんな『いい酒』を売ってたいんだよ。暴れたり、悪い酒の奴らには、今度から、施設に行け!とか、飲み過ぎの奴には、のんあるを飲め!って言える!男連中の会合だって、酒が得意じゃなくても、無理に飲ませられたりしなくなるし、女衆だって、安全に酒の気分や味だけを味わえる。妊婦さんだって、のんあるは飲めるんだぞ。」
「うち、サイダーとか、そふとどりんくもおくんだよ!あれ、スッゴくうまいよねぇ。」

サンジャックを助けようとして。
自分達の方こそ、もっと良い、ちょっと良い、広がる縁を得た。
「だから、ありがとうだよ、サンジャック。」
「ありがとな!」

「•••お、おれ、さ。」
サンジャックは、モゴモゴしながらも、喉から詰まった言葉を、そうっと落とす。
「教会孤児院で、おこずかいかせぎに、色々食べものの出店とかを、毎日やってるからさ。おれもそのうち、やるから、さ。そしたら、そしたら。」

買いに、きてくれよ。
「お、おまけ、するから。」

ありがとうの、代わりに。

サンジャックの、精一杯の気持ちに、素直にありがとうは言えなくたって。パルクもククも、照れくさそうなその顔を見れば、満杯の胸の応えが、ちゃんと通じて。
ニハハハ!と同じに笑った親子だった。

「絶対いくよ!」
「おう、楽しみにしてるからな!」
クシャクシャにハグし合って、親子に挟まれて、真っ赤なサンジャックは、ぷふ、と鼻息吹く。満足して、パルクとクク、ふはっと離れる。

「竜樹様、色々ありがとうございます。俺らはそれじゃあそろそろ、行きますね。」
「またね、サンジャック!今度またあそぼうぜ!」

「はーいパルクさん、クク、頑張ってね!」
「パルクおじさん、クク、またね。あ、あそぼ、うね!」

ぎこちなく手を振るサンジャックの隣で、サンがニコニコ手を大きく振っている。サンジャックにいちゃに優しい2人が、好ましかったのだ。

人波に紛れて遠く、消えてしまった2人を、ジッとサンジャックは見ていた。
ジッと、ただ、見ていた。

「•••さあ、ロテュスの所に行こうか。」
下げた小さな手を、取って握った竜樹が、ゆら、と揺らしてやって。ようやく、コックリと深く頷くと、皆して人の間を歩き出す。
無関係なようで、けれど、お酒に纏わる関わり、好奇心を持った様々な人たちが、不思議な縁で集まった、今日のこの会場で。



「あ、竜樹様~!のんあるの味比べ、終わりましたよ!」
エルフのロテュス王子が、わやわやと味比べをしていた者達の中からぴょん!と飛んで、竜樹達を見つけた。
元花街組のヴィフアートことアー兄ちゃんと、感情ゆっくり解き放ち中のキャリコも、お手伝いに味比べをしていたようだ。ヴィフアートは嬉しそうに寄ってくるし、キャリコはフリリ、と小さく手を振った。

「のんあるの優勝は、りんごの、シュワシュワ、シードルになったよ。味も高級感あって、泡もきめ細かくて、いくらでも飲めそうなお味でした。」
「ヘェ~。聞いただけで美味しそうだね。皆、お手伝いご苦労様だよー。」

ニコニコしつつ、ロテュス王子が竜樹の右肩に、手を繋いでいるサンの邪魔をしないようにくっつき。それに負けじと、ヴィフアートが、サンジャックと繋いだ左、よよっと抱き込みつつ肩にくっついた。
キャリコはソフトドリンク部門の味見をし過ぎて、ひゃっく、としゃっくり。

「竜樹様、もうお酒の方の品評会、終わったんですか?早すぎません?」
あー。
「それが。」

サンジャックに痴漢が。このヘンタイ・ルッシュがそうで。罪とするには微妙で、捕まえておけないけれど、性癖が特殊で撚れてるから、ほっぽっておけなくて。
「何だかんだあって、俺が何か働かせる感じになったんだけど、ちょっと危なっかしいから、誰かに監視をしてもらおうと思ってるんだ。その事でもし良かったら助けて欲しくて。•••エルフに、そういう仕事に向いてる人材いないかな、って聞きにきたんだ。」

んーむ。
と詳しく話を聞いたロテュス王子は、あの人がいいかな、それともあの人?と脳内で選択を吟味して、ちょっと聞いてくる!と転移魔法で消え、そしてあっという間に監視員候補のエルフを連れて戻ってきた。




ーーーーー

更新しようとプチプチこの物語を書いておりますと、テレビではプリンプ◯ン物語を再放送していまして、すごく気が散るのでした。プリン×2ちゃん、何て声が可愛いんでしょう。
あと、今なお色褪せない人形の造形の魅力。

作家さんは違いますが、一代目の辻村寿三郎さんが人形町に人形館を開いていらした時分に、ご本人が作業をしてらっしゃる所を拝見したり(特別な事ではなく作業を公開してらした)、お人形を見たりした事もあるのですが、人形って こう、ぐわっとくる生命感、魅力がありますよね。
調べたらもう人形町にはジュサブロー館はないんですねぇ。
当時行っておいて良かった。いつまででも見てられます。
良かったらご存知ない方も、画像検索で人形ご覧になってみてください。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

最底辺の転生者──2匹の捨て子を育む赤ん坊!?の異世界修行の旅

散歩道 猫ノ子
ファンタジー
捨てられてしまった2匹の神獣と育む異世界育成ファンタジー 2匹のねこのこを育む、ほのぼの育成異世界生活です。 人間の汚さを知る主人公が、動物のように純粋で無垢な女の子2人に振り回されつつ、振り回すそんな物語です。 主人公は最強ですが、基本的に最強しませんのでご了承くださいm(*_ _)m

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

おっさん料理人と押しかけ弟子達のまったり田舎ライフ

双葉 鳴
ファンタジー
真面目だけが取り柄の料理人、本宝治洋一。 彼は能力の低さから不当な労働を強いられていた。 そんな彼を救い出してくれたのが友人の藤本要。 洋一は要と一緒に現代ダンジョンで気ままなセカンドライフを始めたのだが……気がつけば森の中。 さっきまで一緒に居た要の行方も知れず、洋一は途方に暮れた……のも束の間。腹が減っては戦はできぬ。 持ち前のサバイバル能力で見敵必殺! 赤い毛皮の大きなクマを非常食に、洋一はいつもの要領で食事の準備を始めたのだった。 そこで見慣れぬ騎士姿の少女を助けたことから洋一は面倒ごとに巻き込まれていく事になる。 人々との出会い。 そして貴族や平民との格差社会。 ファンタジーな世界観に飛び交う魔法。 牙を剥く魔獣を美味しく料理して食べる男とその弟子達の田舎での生活。 うるさい権力者達とは争わず、田舎でのんびりとした時間を過ごしたい! そんな人のための物語。 5/6_18:00完結!

「俺が勇者一行に?嫌です」

東稔 雨紗霧
ファンタジー
異世界に転生したけれども特にチートも無く前世の知識を生かせる訳でも無く凡庸な人間として過ごしていたある日、魔王が現れたらしい。 物見遊山がてら勇者のお披露目式に行ってみると勇者と目が合った。 は?無理

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

精霊に愛された錬金術師、チートすぎてもはや無敵!?

あーもんど
ファンタジー
精霊の愛し子で、帝国唯一の錬金術師である公爵令嬢プリシラ。 彼女は今日もマイペースに、精霊達と楽しくモノ作りに励む。 ときどき、悪人を断罪したり人々を救ったりしながら。 ◆小説家になろう様にて、先行公開中◆ ◆三人称視点で本格的に書くのは初めてなので、温かい目で見守っていただけますと幸いです◆

帰国した王子の受難

ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。 取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。

虐げられた令嬢、ペネロペの場合

キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。 幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。 父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。 まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。 可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。 1話完結のショートショートです。 虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい…… という願望から生まれたお話です。 ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。 R15は念のため。

処理中です...