11 / 20
11.ネタばらし
「何が起こっている?」
嵐が過ぎ去った日の翌朝、畑の前で呆然としていたのはグレイだった。
「どうかしましたか、グレイ様?」
「……いや、畑が無事で」
「あら、それは良かったです」
「……あ、ああ」
彼はまるで狐につままれたかのような表情で周囲を見回した。けれどどんなに入念に確認しても、綺麗なのは畑だけで、その周りの花壇たちは嵐によって大小様々な被害を受けていた。
「流石にこれはあり得ない」
額に手を当てふるふると頭を振る彼の顔を私はそっと覗き込んだ。
「グレイ様の言った通り、畑が駄目にならないように祈りを捧げたかいがありました」
そう言って笑う私を見て、彼はまた目を丸くして固まってしまった。
「あれ? もしかしてそういうつもりで言ったわけではありませんでしたか?」
「当たり前だろ」
今度は呆れたような顔になった彼に、私はようやくネタばらしを始めた。
「でも今の話は本当のことなんです」
「本当のこと?」
「ええ。本当に私が祈りを捧げたことで、この畑が嵐の被害を受けずに済んだんです」
「そんなことあるはずがない」
「でも実際に助かったんですよね?」
「それはそうだけど……」
納得いかない様子の彼だったが、これ以上説明する言葉を持たない私は、黙って彼の顔を見つめた。
しばしの静寂があたりを支配した。
それからしばらくして、彼は諦めたようにため息をついた。
「……まあいい。それが事実かはさておき、今回はそういうことにしておこう」
「事実ですよ」
「そんなこと言って。じゃあまた同じような奇跡が起こせるっていうのかい?」
「もちろん」
自信満々に答える私。
グレイは何も言わず、くるりと背を向けた。
「あ、待ってください」
スタスタと歩き出した彼を慌てて追いかける。
「まだ何か?」
ゆっくりと足を止めた彼が振り返った。
「はい、あの、畑が無事だったお祝いってことで、お願いを一つ聞いていただけませんか?」
「お願い?」
「この畑に植える苗を増やしたいんです。実はグレイ様の畑で育てていた植物の一部は既に枯れていました。だからまだ、余分なスペースがあるんです。そこに新しく何か植えられたらなって」
断られてしまうだろうか。
しかし、返ってきた答えはあまりにもあっさりとしたものだった。
「好きにしたらいいよ」
「えっ」
「だから、好きにしたらいいよ。今更僕がとやかく言う問題でもない。畑が無事なのは事実だし、そうである以上、活用してもらって構わないよ」
「よかった」
私は彼の手を取った。
「じゃあ、今度の休日に買いに行きましょう」
「え?」
「楽しみにしていますね」
「えっ……え?」
あなたにおすすめの小説
「犯人は追放!」無実の彼女は国に絶対に必要な能力者で“価値の高い女性”だった
佐藤 美奈
恋愛
セリーヌ・エレガント公爵令嬢とフレッド・ユーステルム王太子殿下は婚約成立を祝した。
その数週間後、ヴァレンティノ王立学園50周年の創立記念パーティー会場で、信じられない事態が起こった。
フレッド殿下がセリーヌ令嬢に婚約破棄を宣言した。様々な分野で活躍する著名な招待客たちは、激しい動揺と衝撃を受けてざわつき始めて、人々の目が一斉に注がれる。
フレッドの横にはステファニー男爵令嬢がいた。二人は恋人のような雰囲気を醸し出す。ステファニーは少し前に正式に聖女に選ばれた女性であった。
ステファニーの策略でセリーヌは罪を被せられてしまう。信じていた幼馴染のアランからも冷たい視線を向けられる。
セリーヌはいわれのない無実の罪で国を追放された。悔しくてたまりませんでした。だが彼女には秘められた能力があって、それは聖女の力をはるかに上回るものであった。
彼女はヴァレンティノ王国にとって絶対的に必要で貴重な女性でした。セリーヌがいなくなるとステファニーは聖女の力を失って、国は急速に衰退へと向かう事となる……。
石塔に幽閉って、私、石の聖女ですけど
ハツカ
恋愛
私はある日、王子から役立たずだからと、石塔に閉じ込められた。
でも私は石の聖女。
石でできた塔に閉じ込められても何も困らない。
幼馴染の従者も一緒だし。
婚約者に「愛することはない」と言われたその日にたまたま出会った隣国の皇帝から溺愛されることになります。~捨てる王あれば拾う王ありですわ。
松ノ木るな
恋愛
純真無垢な侯爵令嬢レヴィーナは、国の次期王であるフィリベールと固い絆で結ばれる未来を夢みていた。しかし王太子はそのような意思を持つ彼女を生意気だと疎み、気まぐれに婚約破棄を言い渡す。
伴侶と寄り添う幸せな未来を諦めた彼女は悲観し、井戸に身を投げたのだった。
あの世だと思って辿りついた先は、小さな貴族の家の、こじんまりとした食堂。そこには呑めもしないのに酒を舐め、身分社会に恨み節を唱える美しい青年がいた。
どこの家の出の、どの立場とも知らぬふたりが、一目で恋に落ちたなら。
たまたま出会って離れていてもその存在を支えとする、そんなふたりが再会して結ばれる初恋ストーリーです。
こんな国、捨てて差し上げますわ
藍田ひびき
恋愛
「ユリアーナ!本日をもって、お前との婚約を破棄する!」
『豊穣の聖女』ユリアーナは婚約者である王太子アルベリクから、突然に婚約破棄を言い渡された。しかもアルベリクは妹のフランシーヌと新たに婚約すると言う。
聖女を掲げる神殿側はそれを不服とし、ユリアーナとフランシーヌのどちらが聖女に相応しいか、試験をするように助言するが…?
※ 4/27 誤字修正しました。
※ なろうにも投稿しています。
「仲睦まじい夫婦」であるはずのわたしの夫は、わたしの葬儀で本性をあらわした
ぽんた
恋愛
サヤ・ラドフォード侯爵夫人が死んだ。その葬儀で、マッケイン王国でも「仲睦まじい夫婦」であるはずの彼女の夫が、妻を冒涜した。その聞くに堪えない本音。そんな夫の横には、夫が従妹だというレディが寄り添っている。サヤ・ラドフォードの棺の前で、夫とその従妹はサヤを断罪する。サヤは、ほんとうに彼らがいうような悪女だったのか?
※ハッピーエンド確約。ざまぁあり。ご都合主義のゆるゆる設定はご容赦願います。
聖女を騙った罪で追放されそうなので、聖女の真の力を教えて差し上げます
香木陽灯
恋愛
公爵令嬢フローラ・クレマンは、首筋に聖女の証である薔薇の痣がある。それを知っているのは、家族と親友のミシェルだけ。
どうして自分なのか、やりたい人がやれば良いのにと、何度思ったことか。だからミシェルに相談したの。
「私は聖女になりたくてたまらないのに!」
ミシェルに言われたあの日から、私とミシェルの二人で一人の聖女として生きてきた。
けれど、私と第一王子の婚約が決まってからミシェルとは連絡が取れなくなってしまった。
ミシェル、大丈夫かしら?私が力を使わないと、彼女は聖女として振る舞えないのに……
なんて心配していたのに。
「フローラ・クレマン!聖女の名を騙った罪で、貴様を国外追放に処す。いくら貴様が僕の婚約者だったからと言って、許すわけにはいかない。我が国の聖女は、ミシェルただ一人だ」
第一王子とミシェルに、偽の聖女を騙った罪で断罪させそうになってしまった。
本気で私を追放したいのね……でしたら私も本気を出しましょう。聖女の真の力を教えて差し上げます。
【完結】離縁王妃アデリアは故郷で聖姫と崇められています ~冤罪で捨てられた王妃、地元に戻ったら領民に愛され「聖姫」と呼ばれていました~
猫燕
恋愛
「――そなたとの婚姻を破棄する。即刻、王宮を去れ」
王妃としての5年間、私はただ国を支えていただけだった。
王妃アデリアは、側妃ラウラの嘘と王の独断により、「毒を盛った」という冤罪で突然の離縁を言い渡された。「ただちに城を去れ」と宣告されたアデリアは静かに王宮を去り、生まれ故郷・ターヴァへと向かう。
しかし、領地の国境を越えた彼女を待っていたのは、驚くべき光景だった。
迎えに来たのは何百もの領民、兄、彼女の帰還に歓喜する侍女たち。
かつて王宮で軽んじられ続けたアデリアの政策は、故郷では“奇跡”として受け継がれ、領地を繁栄へ導いていたのだ。実際は薬学・医療・農政・内政の天才で、治癒魔法まで操る超有能王妃だった。
故郷の温かさに癒やされ、彼女の有能さが改めて証明されると、その評判は瞬く間に近隣諸国へ広がり──
“冷徹の皇帝”と恐れられる隣国の若き皇帝・カリオンが現れる。
皇帝は彼女の才覚と優しさに心を奪われ、「私はあなたを守りたい」と静かに誓う。
冷徹と恐れられる彼が、なぜかターヴァ領に何度も通うようになり――「君の価値を、誰よりも私が知っている」「アデリア・ターヴァ。君の全てを、私のものにしたい」
一方その頃――アデリアを失った王国は急速に荒れ、疫病、飢饉、魔物被害が連鎖し、内政は崩壊。国王はようやく“失ったものの価値”を理解し始めるが、もう遅い。
追放された王妃は、故郷で神と崇められ、最強の溺愛皇帝に娶られる!「あなたが望むなら、帝国も全部君のものだ」――これは、誰からも理解されなかった“本物の聖女”が、
ようやく正当に愛され、報われる物語。
※「小説家になろう」にも投稿しています
未来予知できる王太子妃は断罪返しを開始します
もるだ
恋愛
未来で起こる出来事が分かるクラーラは、王宮で開催されるパーティーの会場で大好きな婚約者──ルーカス王太子殿下から謀反を企てたと断罪される。王太子妃を狙うマリアに嵌められたと予知したクラーラは、断罪返しを開始する!