婚約破棄でも構わないけど、真面目馬鹿とは聞き捨てならないので祝福は本日をもちまして終了しました。

椿谷あずる

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11.ネタばらし

 
「何が起こっている?」

 嵐が過ぎ去った日の翌朝、畑の前で呆然としていたのはグレイだった。

「どうかしましたか、グレイ様?」
「……いや、畑が無事で」
「あら、それは良かったです」
「……あ、ああ」

 彼はまるで狐につままれたかのような表情で周囲を見回した。けれどどんなに入念に確認しても、綺麗なのは畑だけで、その周りの花壇たちは嵐によって大小様々な被害を受けていた。

「流石にこれはあり得ない」

 額に手を当てふるふると頭を振る彼の顔を私はそっと覗き込んだ。

「グレイ様の言った通り、畑が駄目にならないように祈りを捧げたかいがありました」

 そう言って笑う私を見て、彼はまた目を丸くして固まってしまった。

「あれ? もしかしてそういうつもりで言ったわけではありませんでしたか?」
「当たり前だろ」

 今度は呆れたような顔になった彼に、私はようやくネタばらしを始めた。

「でも今の話は本当のことなんです」
「本当のこと?」
「ええ。本当に私が祈りを捧げたことで、この畑が嵐の被害を受けずに済んだんです」
「そんなことあるはずがない」
「でも実際に助かったんですよね?」
「それはそうだけど……」

 納得いかない様子の彼だったが、これ以上説明する言葉を持たない私は、黙って彼の顔を見つめた。
 しばしの静寂があたりを支配した。
 それからしばらくして、彼は諦めたようにため息をついた。

「……まあいい。それが事実かはさておき、今回はそういうことにしておこう」
「事実ですよ」
「そんなこと言って。じゃあまた同じような奇跡が起こせるっていうのかい?」
「もちろん」

 自信満々に答える私。
 グレイは何も言わず、くるりと背を向けた。

「あ、待ってください」

 スタスタと歩き出した彼を慌てて追いかける。

「まだ何か?」

 ゆっくりと足を止めた彼が振り返った。

「はい、あの、畑が無事だったお祝いってことで、お願いを一つ聞いていただけませんか?」
「お願い?」
「この畑に植える苗を増やしたいんです。実はグレイ様の畑で育てていた植物の一部は既に枯れていました。だからまだ、余分なスペースがあるんです。そこに新しく何か植えられたらなって」

 断られてしまうだろうか。
 しかし、返ってきた答えはあまりにもあっさりとしたものだった。

「好きにしたらいいよ」
「えっ」
「だから、好きにしたらいいよ。今更僕がとやかく言う問題でもない。畑が無事なのは事実だし、そうである以上、活用してもらって構わないよ」
「よかった」

 私は彼の手を取った。

「じゃあ、今度の休日に買いに行きましょう」
「え?」
「楽しみにしていますね」
「えっ……え?」



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