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16.招待状
それはあんな騒動があって一週間後のことだった。
「あら? これは……シリカさん、ちょっといいかしらー?」
「? なんでしょうか?」
ミスティ夫人から呼ばれた私は、彼女の待つ広間へと向かった。
「ちょっとこれを見てくれないかしら」
そう言ってミスティ夫人が私に手渡したのは、一通の手紙だった。宛名を見るとそこにはしっかりとミーナの名前が記されていた。
「このお手紙ってもしかして……」
「……私の妹からのものです」
私は深いため息を漏らした。おそらく例のお茶会だ。
「ちょっとハサミを失礼します」
そう断って、私は夫人からハサミを借りた。予想は既に出来ていたが、念のため手紙を開封する。
「一週間前に、今度みんなでお茶を、って話になっていたので恐らく……ああ、やっぱり」
手紙の文面を見た私は、思わず二度目のため息を漏らした。
「なんて書いてあるんだ?」
私の様子を見て心配になったのか、くつろいでいたはずのご主人のアーバンさんまでもが歩み寄って、夫人の隣に並んだ。
「……」
私は手紙の内容を広げるようにして二人に見せた。
「一週間後のお茶のお誘いです」
ミーナからの手紙の内容はこうだ。
『今度の週末にシリカお姉様とグレイ様をお招きしたいと思っているんですけれど、お二人の都合はいかがですか? 急で申し訳ありませんが、予定が合えば是非いらしてくださいね。詳しい場所や時間はまたおってお伝え致します』
「どうするの? シリカさん」
ミスティ夫人が私に訊ねた。
「そりゃあ招待されているんだから行くだろう。なあ?」
同意を求めるアーバンさんの言葉に夫人の動きがピクリと止まった。
「あなたはちょっと黙ってて! シリカさんにだって色々あるのよ!」
「そ、そういうものなのか。それは失礼した」
そう言ってアーバンさんは申し訳なさそうに、元いたソファーに戻っていく。大人しくなった彼を少しだけ目で追いながら、ミスティ夫人は続けた。
「……ごめんなさいね、あの人のことは気にしないで。別に行きたければ行けばいいし、そうでなければ行かなくてもいいと思うの。シリカさんの好きにしていいと思うわ」
「ありがとうございます」
私の事情を察しているのか、ミスティ夫人の言葉はとても優しいものだった。彼女の優しさを直に感じた私は、素直に頭を下げた。以前グレイにも同じようなことを言われたことがある。彼の当たり前のように相手の意思を尊重する優しさや気遣いは、きっとこの家庭環境にあるのだろうと思った。
でもだからこそ、私も彼らと共に並べるような強さが欲しい。
「その……実はミーナのお誘い、行ってみようかと思うんです」
私は勇気を振り絞って答えた。
「あら! そうだったの?」
ミスティ夫人が、それがまるで意外だとでもいうように目を丸くする。どうしてだろう? そんなに私の答えがは変だったのだろうか? 私の不思議そうな顔を見て、彼女は慌てて付け加えた。
「あ、違うの。悪い意味じゃなくて。ただシリカさん、この間からどこか少し変わったような気がして……なんだか嬉しいわ」
そう言って笑うミスティ夫人。
「きっとあなたの中で少しずつ何かが変わり始めているのね」
「そう……でしょうか」
「ええ、そう思うわ……ね、あなたもそう思うわよね、グレイ」
「!」
グレイ? 突然、ミスティ夫人が壁の向こう側に話しかけたのを見て、私は首を捻る。まさかそんなはずは。彼は基本的に自分の部屋から出てこないのに。
「グレイ様……いるんですか?」
半信半疑。私がそっと向こう側を確認すると、そこにはグレイが立っていたのだった。
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