事前に準備して最強の布陣で婚約破棄に挑みますが何か問題でも?

椿谷あずる

文字の大きさ
18 / 30

18.食パンくわえながら屋敷の角でぶつかる展開

 
「で、何をすればいいって?」
「とりあえずネインは魔法で、どこかにいそうなカッコいい王子様に変身しなさい」

 相変わらずのレクター屋敷前に停車している馬車の中。
 ネインは彼の従者だというのに、ここまで真っ当に自分の仕事を放棄して私達に付き合えるというから、レクターの懐の深さは海よりも深い。もちろん私がネインに話があるとレクターに言ったわけだけど、それでもここまで融通が利くなんて。
 ジュネ曰く『お嬢様に甘いだけですよ』とのことだ。

 だったら婚約破棄なんて考えなければいいのに。

「王子!?」

 車内にネインの声が響いた。

「あったり前じゃない。素のあんたがどうやってお嬢様をかっさらいに行けるの。家柄も、容姿も、人間性も、どれをとっても駄目じゃない」
「家柄と顔はお前と同じだよ」
「そうだけどね」

 悪びれもせずジュネが笑った。
 そんな二人の様子を交互に見比べる。

「二人とも」
「ん?」
「どれも別に悪いとは思わないけど?」
「お嬢様……」
「駄目です。甘やかさないで下さい、お嬢様」

 真顔で首を振ったのはジュネだった。

「その言葉で調子に乗って、コイツが素のままお嬢様に告白でもしてみて下さい。レクター様には鼻で笑われるだろうし、お嬢様にも人生の汚点が増えてしまいます」
「何もそこまで言わなくても」
「いいえ、きっとそうなります! 五秒で消費される一発ギャクもいいところです」

 ……そうだろうか。
 レクターの事だから、相手がどんな人であれ信じてしまいそうな気もするけど。

「とにかくここは、確実性を重視して、ネインには異国の王子になってもらいましょう。婚約破棄後はお嬢様が異国の王子と幸せに暮らしてハッピーエンド! 分かりましたね?」

 私は黙って頷いた。
 それが婚約破棄のセオリーというのなら、私はそれに準じよう。

「……じゃあ次の問題に移ろう」

 諦めたようにネインが言う。

「僕は王子に扮するけれど、そこから何をやればいいんだ」

 確かに。
 私もその後の事は分かっていない。
 答えを求めるように私達はジュネを見つめた。

「んー、フラグでも立てとく?」
「フラグ?」
「一目ぼれでもない限り、いきなり王子が現れて、お嬢様と結ばれるわけないですから。だからこう、その状態にたどり着くまでの伏線を張るっていう」
「例えばどんな」
「うーん……落ちてたハンカチを拾うとか、食パンくわえながら屋敷の角でぶつかるとか?」
「アホか」

 ネインの冷静なツッコミが入った。
 もちろん私も彼に同意する。

感想 0

あなたにおすすめの小説

「通訳など辞書で足りる」と追放された令嬢——三国会談で、婚約者は一言も話せなくなった

歩人
ファンタジー
宮廷通訳官エレノーラは五つの言語を操り、婚約者クラウスの外交を陰で支えてきた。 だがクラウスは言った。「通訳など辞書で足りる。お前は要らない」 追放されたエレノーラは隣国で新たな道を歩み始める。 一方、クラウスは三国会談の場で辞書片手に立ち往生。 誤訳が外交問題に発展し、窮地に陥ったその場に、隣国の通訳官として現れたのは——。 「その言葉は、もう翻訳できません」

誘拐された公爵令嬢ですが、なぜか皇帝に溺愛されています』

富士山麓
恋愛
舞踏会で王太子から婚約破棄を告げられそうになった瞬間―― 目の前に現れたのは、馬に乗った仮面の皇帝だった。 そのまま攫われた公爵令嬢ビアンキーナは、誘拐されたはずなのに超VIP待遇。 一方、助けようともしなかった王太子は「無能」と嘲笑され、静かに失墜していく。 選ばれる側から、選ぶ側へ。 これは、誰も断罪せず、すべてを終わらせた令嬢の物語。

ベールを上げた新郎は『君じゃない』と叫んだ

ハートリオ
恋愛
結婚式で新郎に『君じゃない』と叫ばれたのはウィオラ。 スピーナ子爵家の次女。 どうやら新郎が結婚する積りだったのは姉のリリウム。 ウィオラはいつも『じゃない方』 認められない、 選ばれない… そんなウィオラは―― 中世ヨーロッパ風異世界でのお話です。 よろしくお願いします。

【完結】お飾り妃〜寵愛は聖女様のモノ〜

恋愛
今日、私はお飾りの妃となります。 ※実際の慣習等とは異なる場合があり、あくまでこの世界観での要素もございますので御了承ください。

【完結】「お前に聖女の資格はない!」→じゃあ隣国で王妃になりますね

ぽんぽこ@3/28新作発売!!
恋愛
【全7話完結保証!】 聖王国の誇り高き聖女リリエルは、突如として婚約者であるルヴェール王国のルシアン王子から「偽聖女」の烙印を押され追放されてしまう。傷つきながらも母国へ帰ろうとするが、運命のいたずらで隣国エストレア新王国の策士と名高いエリオット王子と出会う。 「僕が君を守る代わりに、その力で僕を助けてほしい」 甘く微笑む彼に導かれ、戸惑いながらも新しい人生を歩み始めたリリエル。けれど、彼女を追い詰めた隣国の陰謀が再び迫り――!? 追放された聖女と策略家の王子が織りなす、甘く切ない逆転ロマンス・ファンタジー。

『魔力ゼロの欠陥品』と蔑まれた伯爵令嬢、卒業パーティーで婚約破棄された瞬間に古代魔法が覚醒する ~虐げられ続けた三年間、倍返しでは足りない~

スカッと文庫
恋愛
「貴様のような無能、我が国の王妃には相応しくない。婚約を破棄し、学園から追放する!」 王立魔道学園の卒業パーティー。きらびやかなシャンデリアの下、王太子エドワードの声が冷酷に響いた。彼の隣には、愛くるしい表情で私を嵌めた男爵令嬢、ミナが勝ち誇ったように寄り添っている。 伯爵令嬢のリリアーヌは、入学以来三年間、「魔力ゼロの欠陥品」として学園中の嘲笑を浴び続けてきた。 婚約者であるエドワードからは一度も顧みられず、同級生からはゴミのように扱われ、ミナの自作自演による「いじめ」の濡れ衣まで着せられ……。 それでも、父との「力を隠せ」という約束を守るため、泥を啜るような屈辱に耐え抜いてきた。 ――だが、国からも学園からも捨てられた今、もうその約束を守る必要はない。 「さようなら、皆様。……私が消えた後、この国がどうなろうと知ったことではありませんわ」 リリアーヌが身につけていた「魔力封印の首飾り」を自ら引き千切った瞬間、会場は漆黒の魔力に包まれた。 彼女は無能などではない。失われた「古代魔法」をその身に宿す、真の魔道の主だったのだ。 絶望する王太子たちを余目に、隣国の伝説の魔術師アルベルトに拾われたリリアーヌ。 彼女の、残酷で、甘美な復讐劇が今、幕を開ける――。

成功条件は、まさかの婚約破棄!?

たぬきち25番
恋愛
「アリエッタ、あなたとの婚約を破棄する……」 王太子のアルベルト殿下は、そう告げた。 王妃教育に懸命に取り組んでいたアリエッタだったが、 それを聞いた彼女は……? ※他サイト様にも公開始めました!

妹は聖女に、追放された私は魔女になりました

リオール
恋愛
母の死と同時に現れた義母と異母妹のロアラ。 私に無関心の父を含めた三人に虐げられ続けた私の心の拠り所は、婚約者である王太子テルディスだけだった。 けれど突然突きつけられる婚約解消。そして王太子とロアラの新たな婚約。 私が妹を虐げていた? 妹は──ロアラは聖女? 聖女を虐げていた私は魔女? どうして私が闇の森へ追放されなければいけないの? どうして私にばかり悪いことが起こるの? これは悪夢なのか現実なのか。 いつか誰かが、この悪夢から私を覚ましてくれるのかしら。 魔が巣くう闇の森の中。 私はその人を待つ──