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俺は次第におぼろげながら、今の自分ことラフェリトがどういう人物かを思い出してきた。
王子に信頼を置かれている、真面目で誠実な人物。両親は幼い頃に他界していて、今は何とか病気の弟と二人暮らしをしている。そんな彼だからこそ、さぞかし自分の立場に頭を悩ませていただろう。
王子暗殺計画。
これはウィル王子の義理の母であるネミア様が、自分の実の息子である第二王子のレイチェル様を真の後継者たらしめるために行われるものだ。いわゆるお家騒動ってやつか。
そんなものに俺は全く興味は無いが、そこで目をつけられたラフェリトには同情する。
「ただいまー」
記憶を頼りに帰路へついた俺は、そう言って玄関の扉を開けた。
「おかえり、兄さん」
「……ああ」
そうして現れたのが、俺の唯一の肉親、病弱な弟クリフトだった。
歳は俺より五つくらい下だろうか。くりっと丸い瞳と色白の肌。どこか儚さを感じさせるその容姿は、女性だったら母性本能をくすぐられるのかもしれない。
「お腹すいたでしょ? 今日は僕、体調が良かったから夕飯を作ってみたんだ」
人懐こい笑みを浮かべたクリフトは、お玉を手に取ると、鍋から何かをすくってさらに盛り付けた。匂いからしてシチューかな。
「今日は兄さん、お城で体調崩したんだって?」
「何故それを」
「ウィル王子の使いの人から聞いたよ。だから今日は美味しいもの食べるようにって、王子から鳥肉をいただいたんだ」
「……なるほど」
道理で。
親を亡くした二人暮らし。食事だって当然豪華にいただけるはずがない。それなのに、こうしてチキンシチューをいただけているのは、あの王子のおかげだと。
「明日、お礼を言っておいてね」
「あ、ああ」
これはますます暗殺しにくくなってきたな。
貧乏な部下の身を案じて、こっそり支援してくれるなんて。
「ああ、それと」
今度は何だ。
「向かいの家のおじいちゃん、王子が畑までの道を直してくれたおかげで随分作業が楽になったって喜んでたよ。これもお礼、伝えてあげてね」
「わ、分かった」
王子、優しいし、有能じゃないか。
「えっと他にはね……」
「おい、まだあるのか?」
それから俺はウィル王子に対する近隣住民の感謝の言葉を更に二、三件承ることになった。
これ、本当に俺、暗殺計画に乗っていいのか?
駄目だろ、たぶん。
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