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「それはそうとお前、今日非番だろ?」
「えっ」
何故王子がそのことを? 俺が不思議そうに首を傾げると、王子は悪戯っ子のようにニッと口元に笑みを浮かべた。
「ダンに聞いてね。お前、休みのくせに城に顔出してるって言うから」
なるほどそういうことか。ダンってのはたぶんの俺の上司と名乗った男だろう。いや、というか何してくれてんだよあの人。別に今日は王子に会わなくていいのに。
「そ、そうですよ。だから俺は今日完全にオフの日なんです。構わないでいただけま……」
「よし、暇なら来いよ」
「……へ?」
そう短く言うと、王子は俺の返答を待たずにスタスタと歩き出した。ねえ、今の聞いてた?
「あ、ちょ」
「なんだ? 不服か?」
自信ありげに見下ろされる。くっ、こいつ俺が逆らえないと知ってて。俺は残念な事に、転生前から平民根性がしっかり板についている。だからこの場合、返答はこうなる。
「いや……不満じゃないです。ただ何をするのかと思いまして」
俺は小走りで王子の後を追う。この人足が長いから追いかけるのも大変だな。
「何ってそりゃ料理だろ」
当たり前じゃないかとでも言いたげにこちらを振り向く王子。俺は当然のごとく戸惑った。
「ふーん、料理……何故に料理?」
「暗殺計画」
「……へ?」
「暗殺計画が立てられた時のために、自分で料理くらい作れるようになろうかと思ってな」
「…………へ、へぇー」
俺の間の抜けた声と共に、城内の食堂のキッチンまで連れて来られた。そして椅子に座らされ今に至る。
いや、なんかね、普通さ、こういうのって王子が上手く料理出来なくて、俺がサポートする流れが普通じゃないですか? めっちゃ上手。手際がいい。俺の三流お料理スキルなんて無意味なくらい。そして出てきた王子特製メニュー。とろふわオムレツと、レタスとトマトのサラダ。そしてミネストローネスープ。
「美味いか?」
「……美味しいです」
俺のその言葉を聞いて王子は満足そうに頷いた。
「やっぱり食は体の基本だからな」
「はあ」
美味しそうに食べる俺を見てから、王子もオムレツを口に運ぶ。男が二人揃って昼下がりOLのランチかよ、なんて思うとなんだか笑いが込み上げてきた。
「なんだお前、急に笑って」
「いや、なんつーかこれって絵面が面白いなって思って」
「絵面?」
「あー、だってこういうのは可愛い女の子とやりません?」
俺がそう言うと、王子は少し不機嫌そうに眉をひそめた。
「……悪かったな」
「え? なんでですか?」
「相手が悪くて。せめて女性とはいかなくても、俺の容姿がもう少し良ければ……」
ああなるほど。この人、自分の容姿に自覚がないのか。絵面で言ったらどう見ても、不釣り合いなのは俺のことなんだけど。
「いや、そんなことないですよ。王子はイケメンです」
「お前に言われても嫌味にしか聞こえないんだけど」
「お世辞じゃないですって、本気で言ってますって」
結局、そう弁解しても王子は一向に信じてくれなかった。美形の価値観は俺には到底わからない世界だ。
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