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9.聖女が聖女らしい優秀な解答をするのでモブの私は本当にいらないと思った
しおりを挟む私に対する疑いの眼差しも、自慢のトークテクニックで、はいこの通り。
ま、本当はクロム様の魅力を使って魔法使い君を手のひらで転がしただけだけど。あとはこれ以上ボロが出ないように一般市民っぽい振る舞いをすれば問題な……
「そんなことはないんですよ」
「え?」
「クロム様?」
おっとこれは予想外。クロム様が話に割り込んできた。ちょっと読みが甘かったか。この手の場合、聖女様は黙って話の流れに身を任せるだけだと思ってたのに。
「どういう事でしょう?」
私の言葉にクロム様は小さく首を振った。
「変わりないんです」
「というと」
「私自身は、シズクさんと同じ普通の女の子に過ぎません」
「何を仰いますか。この女とクロム様が同じなど、そんな事は……!」
「少なくとも私はそう思っていますよ」
「……」
ほう、言うじゃないか。
聖女という恵まれた地位を与えられながら、私と同等だと主張する。面白い……ってなんかこの感想、悪役のそれじゃないか。やめやめ、普通に話を聞こう。
「どうしてそう思ったんです?」
「だって、こうして私が安全に旅が出来ているのは、一緒にいる仲間達のおかげですから」
「クロム様っ……勿体ないお言葉をっ」
「いつもありがとうございます」
いいな、こういうの。
私もこんな風に信頼できる仲間と旅がしたい。いや、仲間達か……仲間、達?
「そういえば、仲間ってお二人以外にも旅の仲間がいるんですよね」
じゃなきゃ、仲間『達』とは言わないだろう。
さっきから姿は見えないけれど、残りの魔物を一掃しているのかもしれない。
「聖女様のお仲間かーどんな人達なんだろう。気になるなー」
「……」
「……」
「きっと素敵な人達なんだろうなー」
「……」
「……」
「そうだ、是非お会いさせてくださ…………え!?」
思わず体が硬直した。
フリードが凄い形相で睨みつけているのだ。なんだ私、癇に障る事でも言っちゃったか?
こういう時は、クロム様に救いを求めるに限る。クロム様ー……。
「………………」
「!?」
嘘でしょ、どうして?
天使のような微笑みのクロム様まで目が死んでるじゃないか。何? 他の仲間は全員、今回戦闘で死んじゃったとか? そんな激闘だったとか? デリカシーゼロな質問をしたのか、私。
「え、えっとー、もしかして今私、失礼な事を口にしてしまったり致しますか……?」
秒で土下座の覚悟は出来ている。
「女、よく聞け」
「は、はいっ! 聞きます。聞きますとも!」
直立不動で彼の前に立ち、私は耳を傾けた。
「クロム様の仲間は、確かに皆素晴らしい力を持っている。旅をするには申し分ない。だが今は、戦闘の疲れで少し休憩している。よって会うことは出来ない」
まるでお経か何かのように彼は答えた。早口だった。息継ぎなしだった。これ、絶対に何かあるやつだ。
「以上、分かったな!」
「っは、はい」
私の発言が問題じゃなかったみたいだし、気になるには気になるけど……空気を読んで、これ以上訊ねるのは止めておこう……。
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