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21-3 月桂樹
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「僕の父は不幸な人でね」
ハリスは女性を口説く時、決まって両親の話をする。
社交界での公然の秘密。ファーガーソン家の若夫婦の相次ぐ死に関し、誰もが興味を持つから。
そして、ハリスはその一連の出来事を死後に見つけた父の日記になぞらえて語った。
母にさえ出会わなければ、と。公爵家の横暴により恋人と引き裂かれた苦悩をそのままに。
だが、それでも父は母に誠意をもって振る舞い、共にファーガーソン公爵家を盛り立てようとしていた。
公爵家の中枢の仕事には介入させてもらえなくとも。お飾りの婿、まるで男娼ではないか、と周囲に嘲笑されようとも、ひたすらに前向きに。
そんな父に転機が訪れたのは結婚して八年目の春。
領地での視察の帰りに「馬車の調子が悪いから」と偶然立ち寄った田舎町で元婚約者と再会した。
裕福な商家の娘である元婚約者が、なぜ王都から離れたこんな片田舎の町にいるのか。
元婚約者は言葉を濁した。しかし、その後に父が独自で調べた結果「元婚約者が近くにいては遺恨を残すだろう」と公爵家からの圧力で遠縁が営む農園へ追い立てられたことがわかった。
父は何も知らずのうのうと暮らしてきたことを悔いた。
元婚約者は「過ぎたことよ。今私はここで幸せに暮らしているの」と笑ったが、父は領地での仕事のたびに彼女の元を訪ねるようになった。
男女の関係はない。ただの友人として。何か困ったことはないか、と尋ねても首を振る彼女のために、かつて彼女が好きだった王都で人気の菓子を土産に、お茶を一杯飲むだけの関係。
だが、それはやがて母の与り知るところになった。母は狂乱して、その怒りの矛先を元婚約者へ向けた。
「母は女性の実家を廃業に追い込み、それを必死に止める父を責め立てた。そんないざこざの最中で、父は馬車の事故で亡くなった。その馬車には元婚約者の女性も同乗していてね。事故なのか心中だったのか、或いは他殺だったのか。調査はされていない。祖父母がうやむやなまま片づけたんだ。僕は幼心に母の狂気だけ覚えている。母は父に執着して執着して父の死を受け入れられずに精神を病んで亡くなった。ひどい話だろう? 愛とは片方だけが好きではダメなんだよ。母にはそれが分からなかったんだ」
いつも軽薄で適当なことばかり言うハリスから、想像しなかった重たい話をされてラウラは途中で姿勢を正した。
どういう意図でそんな話を語るのかわからなかった。けれど、
「失礼ですが、愛を誓わなければよかったのではないですか。妥協でもなんでも一度は結婚して愛を誓ったのですよね? 八年間幸せに暮らしてきたなら、お母様が自分は愛されていると期待して仕方なかった気がしますが」
ラウラはぽろりと言った。
好きな人に好きと言われて疑う人間の方が稀ではないか。むしろ周囲に反対されても好きな人の言葉のみを信じるものではないか。信じたいと思うものではないか。
母親が一人で悪者に仕立て上げられているようで憤りを感じた。
いや、それよりラウラはかつての自分と重なっていたたまれなくなった。幼なじみのダリルの愛の言葉をひたすらに信じていた。裏で嘲笑われていようとも、自分に捧げられた言葉だけを信じたこと。
「すみません。ただ聞きかじっただけのことに勝手な発言をして」
ハリスが沈黙するのでラウラは謝罪した。どう考えてもハリスは母親を軽蔑している口振りだった。使用人の自分が主に意見するのは拙いと感じた。
「いや。構わない。君が思ったことだろう」
しかし、ハリスは全く不快な様子をみせなかった。むしろ笑っていることにラウラは困惑した。
そして、その日からハリスはいっそうラウラに興味を持つようになった。
ハリスもまた、本当は母より父を嫌悪していたから。
確かに公爵家の横暴は酷かったし、父は非業の人だった。
が、ハリスが物心ついて八歳になるまで幸せな家族だったのだ。
自分の世界がある日突然虚構だと知ったあの感覚。
両親の死後、祖父母があらゆる噂をねじ伏せたが、人の口に戸は立てられない。
ハリスは周囲からの母に対する非難を感じながら成長した。
されど自分が面と向かい「母は悪くない」と言えば皆は同調するだけ。むきになって否定すれば余計に好奇の目が向くだけ。
だから、長年父の悲劇に同調するふりをしてきた。それで一体どうしたかったのか。何を期待していたのか。自分でもよくわからない。
ただラウラの答えを聞いて、堰き止められてきた時間が流れ出した気がした。
ハリスはラウラに対して、これまでの軽薄な振る舞いではなく、古い友人に対する親愛の情を込めて接した。
屋敷の家令も侍女長も、他の使用人達もハリスの変化を好意的に受け止めた。
ラウラの人柄によるところも大きかった。裕福な貴族の娘だというのに驕ったところがなく、素直に命じられた仕事を真摯にこなす。
これまでハリスが浮き名を流してきた女性達とは違っていた。
ラウラと関わることで、ハリスはよいように変化していった。
退廃的な雰囲気が漂っていた屋敷に、少しずつ新しい風が吹き込んでいく。
ハリスは、まるで初めて恋する少年のようにラウラに引かれていった。
そうして三年経過した。
二人の距離はゆっくりだが確実に縮まっていった。もうそろそろ関係性を進めてよいのでは? と周りがやきもきするくらいに。
そんな中、ラウラの動向を探る不審な男が現れた。
その存在に誰より先に気づきハリスは、男が何者なのか調べさせた。
そしてハリスはラウラの過去を知る。
ラウラは明るく振る舞っていても何処か暗い影を落とす時があった。それが何だったのかようやく理解した。
好いた男に金目当てで利用され没落して捨てられた。その男が再びラウラの前に現れたのだ。
「今更どういうつもりだ」
ハリスは憤り、ラウラがダリルに接触する機会を徹底的に奪った。
しかし、まるで運命に導かれたが如くふたりは接近を繰り返す。ハリスの鉄壁の防御も虚しく、ついに二人は出会ってしまう。
二人きりの時間を過ごし、帰宅したラウラはいつも通りの様子だったけれど、ハリスは焦燥に駆られた。
その後もダリルの影がラウラに付き纏う。
ラウラは何も言わなかったし、なんらの変化もなかった。
だが、思い悩んだ末、ハリスはラウラを連れて自領地へ移り住む決断をする。
表立っては、高齢な祖父に代わり領地の運営を引き継ぐためという名目で。ハリスはあくまで何も知らない風を通した。
ラウラは驚いた反応を示したが、一緒についてきて欲しいというハリスの嘆願を了承した。
そこからのハリスの行動は早かった。
半月で王都を発つ準備を整えた。
だが、誰にどう聞いたのか、ダリルからラウラ宛に封書が届いた。
忌々し気にハリスが封筒を開封すると、ダリルの苦悶が赤裸々に綴られてあった。
ラウラとダリルの間にこれまで何があったか。ラウラがどれほどの献身をダリルに注いできたか。それを踏み躙ってきたダリルの後悔と懺悔。諦めきれない思いとチャンスが欲しいという切望。最後に一度だけ。本心を聞かせてくれ、と場所と日時から指定されていた。
しかし、ハリスは重暗い表情で手紙を握り潰すと、翌朝、ラウラと共に王都を出発する。
二人が楽しげに馬車に乗り込んだところで舞台は暗転し、再びのハリスの独白で、月桂樹の物語は幕が下りる。
「私の罪を告白します。いつかあの男が彼女を迎えにくるのじゃないか。その不安が消えないのです」
ハリスは女性を口説く時、決まって両親の話をする。
社交界での公然の秘密。ファーガーソン家の若夫婦の相次ぐ死に関し、誰もが興味を持つから。
そして、ハリスはその一連の出来事を死後に見つけた父の日記になぞらえて語った。
母にさえ出会わなければ、と。公爵家の横暴により恋人と引き裂かれた苦悩をそのままに。
だが、それでも父は母に誠意をもって振る舞い、共にファーガーソン公爵家を盛り立てようとしていた。
公爵家の中枢の仕事には介入させてもらえなくとも。お飾りの婿、まるで男娼ではないか、と周囲に嘲笑されようとも、ひたすらに前向きに。
そんな父に転機が訪れたのは結婚して八年目の春。
領地での視察の帰りに「馬車の調子が悪いから」と偶然立ち寄った田舎町で元婚約者と再会した。
裕福な商家の娘である元婚約者が、なぜ王都から離れたこんな片田舎の町にいるのか。
元婚約者は言葉を濁した。しかし、その後に父が独自で調べた結果「元婚約者が近くにいては遺恨を残すだろう」と公爵家からの圧力で遠縁が営む農園へ追い立てられたことがわかった。
父は何も知らずのうのうと暮らしてきたことを悔いた。
元婚約者は「過ぎたことよ。今私はここで幸せに暮らしているの」と笑ったが、父は領地での仕事のたびに彼女の元を訪ねるようになった。
男女の関係はない。ただの友人として。何か困ったことはないか、と尋ねても首を振る彼女のために、かつて彼女が好きだった王都で人気の菓子を土産に、お茶を一杯飲むだけの関係。
だが、それはやがて母の与り知るところになった。母は狂乱して、その怒りの矛先を元婚約者へ向けた。
「母は女性の実家を廃業に追い込み、それを必死に止める父を責め立てた。そんないざこざの最中で、父は馬車の事故で亡くなった。その馬車には元婚約者の女性も同乗していてね。事故なのか心中だったのか、或いは他殺だったのか。調査はされていない。祖父母がうやむやなまま片づけたんだ。僕は幼心に母の狂気だけ覚えている。母は父に執着して執着して父の死を受け入れられずに精神を病んで亡くなった。ひどい話だろう? 愛とは片方だけが好きではダメなんだよ。母にはそれが分からなかったんだ」
いつも軽薄で適当なことばかり言うハリスから、想像しなかった重たい話をされてラウラは途中で姿勢を正した。
どういう意図でそんな話を語るのかわからなかった。けれど、
「失礼ですが、愛を誓わなければよかったのではないですか。妥協でもなんでも一度は結婚して愛を誓ったのですよね? 八年間幸せに暮らしてきたなら、お母様が自分は愛されていると期待して仕方なかった気がしますが」
ラウラはぽろりと言った。
好きな人に好きと言われて疑う人間の方が稀ではないか。むしろ周囲に反対されても好きな人の言葉のみを信じるものではないか。信じたいと思うものではないか。
母親が一人で悪者に仕立て上げられているようで憤りを感じた。
いや、それよりラウラはかつての自分と重なっていたたまれなくなった。幼なじみのダリルの愛の言葉をひたすらに信じていた。裏で嘲笑われていようとも、自分に捧げられた言葉だけを信じたこと。
「すみません。ただ聞きかじっただけのことに勝手な発言をして」
ハリスが沈黙するのでラウラは謝罪した。どう考えてもハリスは母親を軽蔑している口振りだった。使用人の自分が主に意見するのは拙いと感じた。
「いや。構わない。君が思ったことだろう」
しかし、ハリスは全く不快な様子をみせなかった。むしろ笑っていることにラウラは困惑した。
そして、その日からハリスはいっそうラウラに興味を持つようになった。
ハリスもまた、本当は母より父を嫌悪していたから。
確かに公爵家の横暴は酷かったし、父は非業の人だった。
が、ハリスが物心ついて八歳になるまで幸せな家族だったのだ。
自分の世界がある日突然虚構だと知ったあの感覚。
両親の死後、祖父母があらゆる噂をねじ伏せたが、人の口に戸は立てられない。
ハリスは周囲からの母に対する非難を感じながら成長した。
されど自分が面と向かい「母は悪くない」と言えば皆は同調するだけ。むきになって否定すれば余計に好奇の目が向くだけ。
だから、長年父の悲劇に同調するふりをしてきた。それで一体どうしたかったのか。何を期待していたのか。自分でもよくわからない。
ただラウラの答えを聞いて、堰き止められてきた時間が流れ出した気がした。
ハリスはラウラに対して、これまでの軽薄な振る舞いではなく、古い友人に対する親愛の情を込めて接した。
屋敷の家令も侍女長も、他の使用人達もハリスの変化を好意的に受け止めた。
ラウラの人柄によるところも大きかった。裕福な貴族の娘だというのに驕ったところがなく、素直に命じられた仕事を真摯にこなす。
これまでハリスが浮き名を流してきた女性達とは違っていた。
ラウラと関わることで、ハリスはよいように変化していった。
退廃的な雰囲気が漂っていた屋敷に、少しずつ新しい風が吹き込んでいく。
ハリスは、まるで初めて恋する少年のようにラウラに引かれていった。
そうして三年経過した。
二人の距離はゆっくりだが確実に縮まっていった。もうそろそろ関係性を進めてよいのでは? と周りがやきもきするくらいに。
そんな中、ラウラの動向を探る不審な男が現れた。
その存在に誰より先に気づきハリスは、男が何者なのか調べさせた。
そしてハリスはラウラの過去を知る。
ラウラは明るく振る舞っていても何処か暗い影を落とす時があった。それが何だったのかようやく理解した。
好いた男に金目当てで利用され没落して捨てられた。その男が再びラウラの前に現れたのだ。
「今更どういうつもりだ」
ハリスは憤り、ラウラがダリルに接触する機会を徹底的に奪った。
しかし、まるで運命に導かれたが如くふたりは接近を繰り返す。ハリスの鉄壁の防御も虚しく、ついに二人は出会ってしまう。
二人きりの時間を過ごし、帰宅したラウラはいつも通りの様子だったけれど、ハリスは焦燥に駆られた。
その後もダリルの影がラウラに付き纏う。
ラウラは何も言わなかったし、なんらの変化もなかった。
だが、思い悩んだ末、ハリスはラウラを連れて自領地へ移り住む決断をする。
表立っては、高齢な祖父に代わり領地の運営を引き継ぐためという名目で。ハリスはあくまで何も知らない風を通した。
ラウラは驚いた反応を示したが、一緒についてきて欲しいというハリスの嘆願を了承した。
そこからのハリスの行動は早かった。
半月で王都を発つ準備を整えた。
だが、誰にどう聞いたのか、ダリルからラウラ宛に封書が届いた。
忌々し気にハリスが封筒を開封すると、ダリルの苦悶が赤裸々に綴られてあった。
ラウラとダリルの間にこれまで何があったか。ラウラがどれほどの献身をダリルに注いできたか。それを踏み躙ってきたダリルの後悔と懺悔。諦めきれない思いとチャンスが欲しいという切望。最後に一度だけ。本心を聞かせてくれ、と場所と日時から指定されていた。
しかし、ハリスは重暗い表情で手紙を握り潰すと、翌朝、ラウラと共に王都を出発する。
二人が楽しげに馬車に乗り込んだところで舞台は暗転し、再びのハリスの独白で、月桂樹の物語は幕が下りる。
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