【完結】好きな子は虐めたい話

榊どら

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***

「何処が一途で健気な御令嬢なんだか」


 ふふっと笑うマリーウェザーにレオナは肩を竦めた。


「ほら、そろそろ時間よ。あんまり遅いとアンタの旦那様が蒼白になって迎えにくるかも」 

「じゃあ、もう少し待ってみようかしら?」

「え?」


 レオナはマリーウェザーのドレスのベールをただし、式場へ向かう準備を整えていたが、不穏な発言に動きを止めた。


「ねぇ、レオナ、わたくしが怒ってユリウスに仕返ししていたって思っている?」

「え?」


 他に何があるのか。

 初恋を拗らせて暴言を吐いたユリウスに、同じく初恋を更に拗らせたマリーウェザーの長期にわたる仕返し。

 それが二人の呆れた関係性だと、レオナは解釈している。

 ある意味似た者同士のお似合いだ、とも。


「わたくしね、ユリウスと婚約したばかりの頃、母に言われたことがあったの。男の子は好きな女の子を虐めるものなのって。だから、ユリウスはわたくしを好きなんだって、ずっと思っていたの」

「まぁ、有りがちな話じゃない?」

「でもそれって間違いなのよね。わたくし知ってしまったの」

「何が? ユリウス様はアンタを好きじゃないの」


 マリーウェザーが感慨深くうんうん頷いて言うので、レオナは眉根を寄せる。嫌な予感しかしない。

 耳を塞ぎたかったが、生憎ウェディングドレスの裾を持ち上げるのに両手は埋まっている。


「そうじゃなくて、好きな子を虐めたいのは男の子だけじゃないってこと」

「ちょっとそれ、」

「でも、今日は結婚式だから止めておくわね。早く行きましょう」


 レオナが呆れ返るも、マリーウェザーはいつものようににっこり笑い式場へ歩き出す。

 とんだ勘違いをしていた。和解した二人はよい夫婦になるだろう。

 おめでとう。ユリウス、と。

 だけれど、そんな理由なら彼のこれからは一体どうなるのか。

 最後にすると言わなかったか。しかし、レオナに引き止めるすべはない。


「知りたくなかったわ」


 またしてもキリキリと胃が痛む光景を見る羽目になるのか。

 朝に挨拶した際の最高に幸せに笑うユリウスが脳裏を巡るが、既に哀れな子羊にしか思えない。

 いや、しかし、今日だけは大丈夫なはずだ。マリーウェザーは嘘が嫌いなのだから。

 存分に幸せを味わい尽くすように、後でそっと進言しておこう。

 彼の受難が続く人生に幸あらんことを、レオナはマリーウェザーの背中を見つめながら切に願った。
感想 14

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みんなの感想(14件)

るる
2024.08.29 るる

好きな子をいじめる男の子、ホント迷惑よねと思ってきた人生に終止符が!!
女の子のやり方もあったのね!!
怖かったわぁ〜でもイイわぁ〜ハマるわぁ〜
ほんと、あまりの面白さ痛快さに何度も読み返しちゃいます★

2024.08.30 榊どら

感想ありがとうございます!

何度も読み返していただき嬉しいです!
そうです、虐めたいのは男の子と特権じゃないんやで😆

ユリウスはドアマットヒーローとして生きていくんや😆
マリーは綺麗好きだからたまには洗濯してくれるやで😆

お読みいただきありがとうございました!

解除
リカチャン
2024.04.28 リカチャン

このお話、むちゃくちゃ好きで定期的に何回も読み返してしまう。

2024.04.30 榊どら

感想ありがとうございます!

何回も読んでもらえて光栄です!
書いたかいがあります🥴

解除
ひろ
2024.02.04 ひろ

愛され妻と嫌われ夫が面白いのでこちらも読んでみたらドストライクなお話でした。
クセのある登場人物で非常に面白かったです!
今のお話の更新が楽しみです

2024.02.04 榊どら

感想ありがとうございます!

こちらも読んで頂き嬉しいです!
大分、クセの強いキャラですが面白いと言って頂き嬉しいです😆

連載の方も是非最後までお付き合いください!

解除

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