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第3話 「今後」
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国王の言葉通り翌日から訓練の開始となった。
奏多達はそれぞれスキルと照らし合わせ、最適と思われる武器を持たされて王城から少し離れた施設内の広場のような場所に呼び出された奏多達はそこで国の騎士との戦闘訓練を行った。
津軽や深谷はそこまで深く考えていなかったが、残りは武器の扱いに関してはまるで素人なのでスキルがあってもまるで使いこなせる気がしないと乗り気ではなかったのだが――
奏多が剣を振るうと縦横無尽とも言えるほどに鋭い斬撃が放たれる。
「……うそ」
思わずそう呟く。 自分で繰り出した斬撃の鋭さに自分で驚いていた。
「スキルがあるから大丈夫だっていった通りだったでしょ」
深谷が得意げにそういうが、奏多の耳には入らなかった。
与えられたスキルの凄まじさを肌で感じていたからだ。
スキル名は『剣術』非常にシンプルかつ効果の分かり易い代物だったが、効果は想像以上だった。
何せ体が勝手に動くのだからこれを持っていれば誰であろうと剣の達人になれてしまう。
扱い方も簡単で剣を用いてどのように斬りたいかをイメージするとその結果に最短で辿り着く動きを体が勝手に行うからだ。 ちらりと他を見ると彼女と同様に巌本は騎士の攻撃を洗練された動きで盾で受け流し、津軽は手足のように槍を振り回す。
深谷は魔法に特化しているようで火球や氷柱を生み出して飛ばしていた。
千堂は魔力弓という魔力を消費して矢を形成する特殊な武器を使用し、まるで機械か何かのように淡々と正確に的を射抜く。
最後の古藤は並べられたカードのような物を指差して裏に示された絵柄を当てていた。
どうも彼女は戦闘向きの技能を持たない代わりに変わった物を見る事ができるようになっているようだ。 この訓練は剣を振って筋力をつける事ででも技術を学ぶ事でもない。
持っているスキルを効率よく使う為のものだと悟るのにそう時間はかからなかった。
こちらの世界に辿り着いて数日だが、奏多にはこの世界の異常さが段々と見えてきていた。
日本と違い全てがスキルに依存しているのだ。 『鑑定』というスキルとステータスを可視化する技術が存在するので、生まれた瞬間からその存在の人生が概ね決まってしまうと言っても過言ではない。
鍛冶関係のスキルを保有していれば鍛冶士に剣術や槍術を持っていれば騎士や傭兵、冒険者に。
生まれた時からある程度、将来を決められてしまうシステムは日本で育った奏多からすれば簡単に受け入れられるものではなかった。
少なくとも奏多は戦闘系のスキルなんて欲しくなかったし、その所為でよく分からない相手と戦わされる事にも凄まじい抵抗がある。
この考えはスキルによって望まない道に進まされようとしているからこそだろう。
もしも望んだ生き方に沿ったスキルが与えられるなら喜んで受け入れたのかもしれない。
その辺りは考え方次第なのかもしれないが、結局の所はスキルという名の才能を受け入れるか否かの問題だった。 そして異世界から召喚された彼女達にはその権利は与えられない。
頼る相手も常識すら怪しい異世界人の奏多達はこの国の庇護を得る為に戦うしかないのだ。
だからこそ奏多も不満こそ抱えていたが、素直に訓練に参加していた。
そして挫けそうなときには幼馴染の事を考える。 優矢だったらどんな言葉をかけてくれるだろうか?
優矢だったらこんな状況をどう受け止めるだろうか? 傍にいる時は空気か何かのようにあって当然の存在だったが別れてから彼女の中で幼馴染の存在がどんどん大きくなっていった。
「――神野君。 君はこの状況、どう思う?」
その日の訓練を終え、食事を摂ろうと食堂に向かっていた奏多だったが偶然、巌本と一緒になったのでそのまま同席する事になった。
しばらくは互いに無言で食事を口に運んでいたが、ややあって巌本が躊躇いがちに話を振ってきたのだ。 奏多は周囲に視線をやると騎士が数名いるがこちらに意識を向けている感じはしない。
「……正直、乗り気はしません。 魔族って生き物と戦う事もそうですが、大きい生き物を殺す事に抵抗があります」
「その反応を見ていると安心するよ。 君と同年代の津軽君と深谷君は随分と乗り気だったので、あの年頃の子は皆似たような感じなのかと構えてしまうからね」
「あんな反応する男子は多分ですが結構いますよ」
そう返すと巌本は苦笑。 奏多は表にこそ出しはしないがあの二人の事があまり好きではなかった。
どちらも露骨に奏多を意識しているのかやたらと視線を感じる上、津軽に至っては「奏多ちゃん」と馴れ馴れしいのは不快なので彼に関しては嫌い寄りだ。
当の二人はスキルを扱えるのが嬉しいのか、訓練に入る熱意も強い。
「否応なく我々は戦わねばならない。 これは全員に聞いておきたいと思っているが、魔族との決着が着いた後はどうするか考えているかい?」
つまり召喚された目的を達成した後の話だ。 同時に考えるまでもない話だった。
「日本に帰ります。 向こうには残している人もいるのでいつまでもここにいる訳にはいかないので」
奏多は自分がモノレールの事故に巻き込まれた事は察していたので、同じ事故に巻き込まれた優矢が心配だった。 あの状況では間違いなく無事には済まない。
だから戻って助ける必要がある。 スキルによって強化された自分の能力ならあの事故から優矢一人ぐらいを助ける事ぐらいはできるはずだ。 仮に怪我をしていたとしても治癒魔法があるので死んでさえいなければ何とかなる。 上位の治癒魔法は手足や臓器の欠損さえ癒らしい。
だから、奏多は帰らなければならない。 幼馴染の待つ日本へ。
巌本はそれを聞いて安心したように笑って見せた。
「それを聞けて良かった。 実は全員にこの戦いが終われば日本への帰還を勧めるつもりだったんだ」
意図が分からずに首を傾げると巌本は苦笑したまま話を続ける。
「魔族という明確な敵がいる今はいい。 決着が着き、敵がいなくなった後、この国の者達は果たして我々をいつまでも客人扱いしてくれるだろうか?」
それを聞いて奏多の背筋が冷えた。
巌本の言う通りだ。 結果的に命は救われたが、こんな誘拐まがいの方法で異世界から人間を呼び出す者達がまともな訳がない。
用事が済んだ後、彼等は果たして自分達を手元に置きたいと思うだろうか?
奏多達はそれぞれスキルと照らし合わせ、最適と思われる武器を持たされて王城から少し離れた施設内の広場のような場所に呼び出された奏多達はそこで国の騎士との戦闘訓練を行った。
津軽や深谷はそこまで深く考えていなかったが、残りは武器の扱いに関してはまるで素人なのでスキルがあってもまるで使いこなせる気がしないと乗り気ではなかったのだが――
奏多が剣を振るうと縦横無尽とも言えるほどに鋭い斬撃が放たれる。
「……うそ」
思わずそう呟く。 自分で繰り出した斬撃の鋭さに自分で驚いていた。
「スキルがあるから大丈夫だっていった通りだったでしょ」
深谷が得意げにそういうが、奏多の耳には入らなかった。
与えられたスキルの凄まじさを肌で感じていたからだ。
スキル名は『剣術』非常にシンプルかつ効果の分かり易い代物だったが、効果は想像以上だった。
何せ体が勝手に動くのだからこれを持っていれば誰であろうと剣の達人になれてしまう。
扱い方も簡単で剣を用いてどのように斬りたいかをイメージするとその結果に最短で辿り着く動きを体が勝手に行うからだ。 ちらりと他を見ると彼女と同様に巌本は騎士の攻撃を洗練された動きで盾で受け流し、津軽は手足のように槍を振り回す。
深谷は魔法に特化しているようで火球や氷柱を生み出して飛ばしていた。
千堂は魔力弓という魔力を消費して矢を形成する特殊な武器を使用し、まるで機械か何かのように淡々と正確に的を射抜く。
最後の古藤は並べられたカードのような物を指差して裏に示された絵柄を当てていた。
どうも彼女は戦闘向きの技能を持たない代わりに変わった物を見る事ができるようになっているようだ。 この訓練は剣を振って筋力をつける事ででも技術を学ぶ事でもない。
持っているスキルを効率よく使う為のものだと悟るのにそう時間はかからなかった。
こちらの世界に辿り着いて数日だが、奏多にはこの世界の異常さが段々と見えてきていた。
日本と違い全てがスキルに依存しているのだ。 『鑑定』というスキルとステータスを可視化する技術が存在するので、生まれた瞬間からその存在の人生が概ね決まってしまうと言っても過言ではない。
鍛冶関係のスキルを保有していれば鍛冶士に剣術や槍術を持っていれば騎士や傭兵、冒険者に。
生まれた時からある程度、将来を決められてしまうシステムは日本で育った奏多からすれば簡単に受け入れられるものではなかった。
少なくとも奏多は戦闘系のスキルなんて欲しくなかったし、その所為でよく分からない相手と戦わされる事にも凄まじい抵抗がある。
この考えはスキルによって望まない道に進まされようとしているからこそだろう。
もしも望んだ生き方に沿ったスキルが与えられるなら喜んで受け入れたのかもしれない。
その辺りは考え方次第なのかもしれないが、結局の所はスキルという名の才能を受け入れるか否かの問題だった。 そして異世界から召喚された彼女達にはその権利は与えられない。
頼る相手も常識すら怪しい異世界人の奏多達はこの国の庇護を得る為に戦うしかないのだ。
だからこそ奏多も不満こそ抱えていたが、素直に訓練に参加していた。
そして挫けそうなときには幼馴染の事を考える。 優矢だったらどんな言葉をかけてくれるだろうか?
優矢だったらこんな状況をどう受け止めるだろうか? 傍にいる時は空気か何かのようにあって当然の存在だったが別れてから彼女の中で幼馴染の存在がどんどん大きくなっていった。
「――神野君。 君はこの状況、どう思う?」
その日の訓練を終え、食事を摂ろうと食堂に向かっていた奏多だったが偶然、巌本と一緒になったのでそのまま同席する事になった。
しばらくは互いに無言で食事を口に運んでいたが、ややあって巌本が躊躇いがちに話を振ってきたのだ。 奏多は周囲に視線をやると騎士が数名いるがこちらに意識を向けている感じはしない。
「……正直、乗り気はしません。 魔族って生き物と戦う事もそうですが、大きい生き物を殺す事に抵抗があります」
「その反応を見ていると安心するよ。 君と同年代の津軽君と深谷君は随分と乗り気だったので、あの年頃の子は皆似たような感じなのかと構えてしまうからね」
「あんな反応する男子は多分ですが結構いますよ」
そう返すと巌本は苦笑。 奏多は表にこそ出しはしないがあの二人の事があまり好きではなかった。
どちらも露骨に奏多を意識しているのかやたらと視線を感じる上、津軽に至っては「奏多ちゃん」と馴れ馴れしいのは不快なので彼に関しては嫌い寄りだ。
当の二人はスキルを扱えるのが嬉しいのか、訓練に入る熱意も強い。
「否応なく我々は戦わねばならない。 これは全員に聞いておきたいと思っているが、魔族との決着が着いた後はどうするか考えているかい?」
つまり召喚された目的を達成した後の話だ。 同時に考えるまでもない話だった。
「日本に帰ります。 向こうには残している人もいるのでいつまでもここにいる訳にはいかないので」
奏多は自分がモノレールの事故に巻き込まれた事は察していたので、同じ事故に巻き込まれた優矢が心配だった。 あの状況では間違いなく無事には済まない。
だから戻って助ける必要がある。 スキルによって強化された自分の能力ならあの事故から優矢一人ぐらいを助ける事ぐらいはできるはずだ。 仮に怪我をしていたとしても治癒魔法があるので死んでさえいなければ何とかなる。 上位の治癒魔法は手足や臓器の欠損さえ癒らしい。
だから、奏多は帰らなければならない。 幼馴染の待つ日本へ。
巌本はそれを聞いて安心したように笑って見せた。
「それを聞けて良かった。 実は全員にこの戦いが終われば日本への帰還を勧めるつもりだったんだ」
意図が分からずに首を傾げると巌本は苦笑したまま話を続ける。
「魔族という明確な敵がいる今はいい。 決着が着き、敵がいなくなった後、この国の者達は果たして我々をいつまでも客人扱いしてくれるだろうか?」
それを聞いて奏多の背筋が冷えた。
巌本の言う通りだ。 結果的に命は救われたが、こんな誘拐まがいの方法で異世界から人間を呼び出す者達がまともな訳がない。
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