Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第758話

 下がった敵機が何かに引っかかったように動きを止めた。
 張られたワイヤーアンカーだ。 
 ついさっき動きを止めたドローンの物で、剥がすの諦めて限界まで伸ばして誘い込んだのだ。

 上手い。 
 牽制に出したドローンを無理に守ると思ったらこう使うつもりだったのか。
 ヨシナリはなるほどと感心しながら映像を注視。 
 敵機は回避を諦めてバトルライフルを向けるが、エイムの動きが鈍い。 

 ユウヤが鼻を鳴らし、ベリアルが小さく嘆息、ケイロンは「下らん」と小さく呟いた。
 気付いている者は分かっていたようだ。 アイロニーは残った腕を盾にそのまま突撃。
 近接の間合いで跳躍した斜め上からの体当たり。 

 まともに喰らった敵機はぐしゃりと上半身を砕かれて大破。

 「うぇ、すっげぇ威力」
 「アイロニーの機体は元々かなりの重量機だ。 重力制御でごまかしてるが、フィジカルの強さなら相当だぞ」

 アイロニーはふんすふんすと鼻を鳴らす。 
 恐らく上から行ったのはぶつける際に重力制御を切って機体の重量をそのまま武器として使う為だろう。 何でこんなに重いんだという疑問に関しても凡そ答えは出ていた。

 彼女の機体は腹に様々な薬品を合成する為の工場を抱えているのだ。 
 それがかなりの重量を持っているのだろう。 固いのは漏出防止の為か。
 結果、隠密タイプとは思えない堅牢さとケイロンとぶつかっても当たり負けしないパワーを得たのだろう。 

 目の前の敵機を撃破した後、ちらりと上を見る。
 どうやら戦況の確認を行ったようだ。 アルフレッドが後退、ヨシナリは抑え込まれている。
 状況を素早く把握すると後退――マルメルの援護に向かう。 

 前線はケイロンとユウヤが居るから問題ないと判断したようだ。
 初見の印象はドローンや隠形を駆使して高みを見物を決めるタイプかと思ったが、必要とあれば接近戦もこなし視野も広い。 タヂカラオとは別のベクトルで周りが見えている。

 正直、支援メインでの活躍を期待していた事もあって想定以上の能力を見せつけられると嬉しくなってしまう。 
 アイロニーはマルメルを挟撃している敵に対してタイミングを見計らい割り込んで隙を作る。 
 即座に駆け付けずに近寄った後にドローンによる包囲網を作った後にアクションを起こした。

 仕掛けのタイミングも上手い。 マルメルは足止めに専念するつもりなのが明らかだ。
 アルフレッドが離脱する時間を稼ぐ為に体を張って敵の足止めを目的としている。
 その為に出し惜しみをせずに景気よく弾をばら撒いていた。

 敵としては息切れまで待って弾が切れたタイミングで刺せばいい。
 マルメルの残弾が心許なくなり、弾幕が薄くなった所で前のめりになった所を拘束。
 ここで素晴らしいのはマルメルの火力なら動きさえ止めれば数秒で敵を粉砕できると分かっている点だ。 

 だから、無理な割り込みを行わずに撃ちやすい方――正確には突撃散弾銃の射界に近い方を狙って動きを封じた。 残りの敵機はアイロニーを警戒して探そうとした瞬間に横合いから体当たり。
 マルメルの死角をカバーしつつ、敵を詰みに行くのを同時に行っている。

 ――最高かよ。

 本当にこれまでソロでやって来たのかと疑いたくなるほどに集団戦に長けた動きだった。
 
 「いや、マジで助かりました。 いよ! 救世主!」
 「ロジカル! 君こそ見事だ。 あそこで綺麗に合わせてくれると助けた方も気持ちがいいぞ!」

 映像では体当たりを喰らって体勢を崩した敵機をマルメルが仕留めている所だった。
 足止めを自力で突破からの戦況を判断してからの後方への援護。 ケチのつけようのない仕事だった。

 「いや、お見事です。 言う事ないですね」
 「プラクティカル。 指摘は可能な限り真摯に受け止める用意があるぞ?」
 「それはまたの機会に」

 次と映像を切り替える。 位置的に近くの方がいいかと切り替えるとベリアルの姿が映し出された。
 フォーカスされた事でベリアルは「ふ、俺の番か」と呟く。
 敵機はエネルギーブレードを両手に二本持ち――二刀流で正面から斬りかかっていた。

 「こいつ、ベリアル相手に正面からとか正気かよ」
 「ですねー。 ベリアルさんと接近戦とか姉と斬り合うのと同じぐらい命知らずじゃなきゃできませんよ」

 マルメルとシニフィエ正気かと言わんばかりに敵機に視線を向けるが、ヨシナリは別の事が気になって仕方がなかった。 
 敵機の腰に奇妙な装置が取り付けられており、定期的に光って不可視の何かを撒き散らしている。
 
 「闇の王よ。 貴公が離れた位置を戦場としたのはあの忌まわしき光の所為か?」
 「あぁ、戦友よ。 あの走狗共はどうやってか我が現身たるプセウドテイの纏う闇から身を守る護符を持って来たようだ。 俺一人ならば何の問題もないがアレが撒き散らす光は周囲を蝕む」

 ――なるほど。

 「正面から打ち合ったのはその為か?」
 
 ベリアルは答えない。 だが、その態度が雄弁に語っていた。
 
 「なるほどなぁ」
 「ヨシナリせんせー、解説を頼むぜ」
 「はいはい、ぶっちゃけた話、あの敵ってベリアルからすれば大した事ない相手だったんだ」
 「そりゃ俺でも分かるよ。 ベリアルが接近戦で簡単に負ける訳ないだろ」

 マルメルは常識だろうと言わんばかりに応えた事でベリアルが「ふ、分かってるな」とちょっと嬉しそうにしていたのに微笑ましい気持ちになりながらも話を続ける。

 「後で言うつもりだったけど、もう言っちまうとな。 この連中、俺達個別に何らかの対策を持って来てるんだよ。 ――で、ベリアルの場合はこの腰の装置。 多分だけど、片方が電磁パルスを撒き散らして定期的に電子系の装備を無効化する代物。 もう一つが多分だけど空間に干渉するタイプのジャミング装置だ」
 「あ、それウチの時も使われたわぁ」
 「それは後で触れますんで今はこっちでお願いします。 で、それを使って何をするのかって言うと、多分だけど転移妨害。 ――合ってるだろ?」

 そうでもなければベリアルが転移も分身も使わないなんて相手を舐めたような動きはしない。
 使わないのではなく使えなかったのだ。 
 恐らく前者の電磁パルスの方に分身に対する何らかの作用があったのだろう。
 
 ――結果、正面からの打ち合いとなった。

 ベリアル個人の能力対策としては満点に近い。 
 転移と分身――流石にエーテルのコントロールまではどうにもならなかっただろうが、その二つを封じるだけでもかなり大きいだろう。

 ――まぁ、それで勝てるかどうかは別の話だがな。
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