Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第780話

 ――状況は最悪だった。

 いや、自分の見積もりの甘さが招いた事かとヨシナリはアバターの下で表情を歪める。
 残っているのは自分とふわわ、ユウヤに――アルフレッドも反応が生きていた。 
 アイロニーもいるが最後の一機の反応がまだ残っている以上、援護は期待できない。
 
 ベリアルがやられた事でもう合体も使えなくなったが、悪い事ばかりではない。
 まずはタカミムスビの機体――アマノイワトの性能に関しては大半が割れた事だ。
 重装甲に推進装置は重力制御プラス補助のスラスター替わりにエネルギーウイングを使っている所為で通常機の倍以上もあるのに同等以上の機動性。 そしてそれを支える巨大なジェネレーターが複数とコンデンサー。
 
 ただ、転移は多用しない点から負担が大きいと思われる。 
 防御は斥力フィールドとエネルギーフィールドの複合により物理、光学の両面で強い。
 センサーシステムに関してはシックスセンスかそれに類する高感度の物を積んでいるはずだ。

 そうでもなければあの反応の早さは説明できない。
 この時点で破格とも言えるスペックだが、まだ武装群が残っている。
 一番目立つ両肩のコンテナ。 

 ミサイルではなくガトリングガンを複数詰め込んで弾幕を張るだけでなく、ベリアルを完封した転移、エーテルに対してのカウンターとも言える機構の搭載。
 転移は空間に対して何らかの作用を及ぼし、転移先の座標を特定させないのだろう。

 エーテルに関しては詳細不明だが、半物資である特性に作用するものと思われる。  
 攻撃用のオプションにも見えるがどちらかというと妨害に重きを置いた装備なのかもしれない。
 頭部。 恐竜の様に巨大な口があるのだが、これに関しては不明。

 噛みつくのだろうか? ヨシナリの予想としては何らかの飛び道具が入っていると思われる。
 腕。 ブレード状の指が伸縮し、斬撃を繰り出す。 
 振り回す際に関節が伸び縮みしており、大きくしならせる事ができるようで、見た目以上に攻撃範囲が広い。 爪というよりは鞭と捉えた方がいいだろう。

 胴体。 背面、胸部、脇腹を中心に全体にレーザーの発射装置。
 周囲に浮遊している反射板を利用して通常ではありえない角度からの攻撃を繰り出してくる。
 
 他にまだ見せていないギミックがありそうだが、判明しているのは機体表面を赤熱させる事でふわわの斬撃を無効化した機構。 ふわわの液体金属刃は長さと切断力に優れてはいるが、彼女の技量によって成立しているだけあってその手の妨害に対して非常に脆い。

 ――そもそもアレは真似できる物じゃないからな。

 そもそもあれだけ伸ばして綺麗に切断できるのがおかしいのだ。
 タカミムスビもそれを分かっているからこその対処だろう。 
 恐らくは完全に溶かす必要はなく、ブレード部分を熱で僅かに変形させるだけでも切断力の大半を喪失させる事ができるはずだ。 ふわわの一撃はそれほどまでの繊細な達人技と言える。

 そして尻尾。 
 八本の太いワイヤーのような物が束ねられたような代物で遠隔操作で先端を操って手数を増やしている。 先端は槍の穂先のような形状だが、内部に電磁パルスを発生させるニードルを撒き散らす。
 
 これに関してはふわわが破壊した事もあって問題はない。
 情報がある程度、揃った事で今度はどう崩すかの話だ。 
 正直、機体性能に依存しているだけで純粋な技量ならベリアルやユウヤの方が上だと思っていたが、こうして見るとそれが勘違いだった事が分かる。

 恐らくは反応などの細かな点で比較すると劣る点は多いだろうが、タカミムスビの真髄はそこではない。 彼は手札の切り方が上手いのだ。
 ベリアルを仕留めたギミックに関してもそうだが、最初から使わずに確実に処理できるタイミングまで温存していた点からもそれは明らかで相手を観察した上でどう処理するのが最適なのかを見極める能力が飛びぬけている。
 
 ポンポンのような指揮官向きの視野の広いプレイヤーは何人も見て来たが、このレベルは始めてだ。
 残ったユウヤ、ふわわもそれをよく理解しており、隙を晒さないように立ち回っている事が分かる。
 レーザーはいつまでも躱せる代物ではなく、防ぐには張り付かなければならない。

 中衛が居ない事もあってふわわが斬り込み、ユウヤが死角から隙を伺っているが周囲を浮遊している反射板が張り付くようにポジショニングを行っている事もあってそちらにも意識を割く必要がある以上、思うように動けていない。

 アルフレッドは少し離れた位置でセンサーシステムによる支援に徹しているのはユウヤが近寄らないように指示を出しているからだろう。 これに関しては問題はない。
 彼に関してはやられた時のリスクが大きすぎる。 最低限、撃破の目途が立つまでは下げた方がいい。

 『いや、素晴らしいね。 ソルジャータイプでここまで動けるものなのかと感動しているよ』
 「その割には無傷で凌ぐやん」

 タカミムスビ両肩のコンテナで弾幕を張りながら腕を鞭の様に振り回して近づけまいとする。
 挙動から下がらせてレーザーで仕留めるつもりだ。 
 それを理解しているふわわは付かず離れずの距離を維持している。

 弾幕を凌げているのは強化装甲によって展開された磁界のお陰だろう。
 驟雨のような弾丸が直進せずに逸れている。 それを上手く使って凌いでいるのだ。 
 弾幕を集中したい所だが、範囲を絞るとふわわはそこを突くと分かっているからこそタカミムスビはそれをやらない。 

 『凌ぐ、ね。 この状況でそれを言えるのは大した自信だ。 ただ、君は少しその自信を客観視した方がいいのではないかな?』
 「なーに? 道徳の授業でもしてくれるん?」
 『そんな所だ。 わざわざ教えてあげるからしっかりと美味しく育ってくれたまえよ』
 「煽るやん」
  
 ふわわの動きが鋭さを増す。 
 左を大きく振ってユウヤを追い払い、弾幕で圧をかけて右を振り回す。
 挙動は鞭に近いが先端の動きが不自然なぐらいにシャープだ。
 
 恐らくは尻尾と同じように先端に推進装置が付いていて外から操っているのだろう。
 ふわわは驚異的な反応で掻い潜り、躱し際に太刀を一閃。 伸びきった所を狙ったが斬れていない。
 ――効果自体はあったようで先端の動きが一気に悪くなった。

 「後二回で斬り落とせるかな? それで? ウチに何を教えてくれるん?」
 『焦ってはいけないよ。 もう少し懐に入れた時のお楽しみだ』

 流石に切断は困るのか腕の動きだけで変化を付けた。
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