Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第44話

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 「え~、そうなん? ウチとしては面倒事をヨシナリ君達に投げてるから逆に寄生してるつもりやったわ~」

 ふわわはからからと笑う。 
 明らかに受ける気がない様子だったのでヨシナリは平静を装いながらも内心でほっと胸を撫で下ろす。
 勧誘してる連中の指摘は正しいとも思っていたからだ。 彼女の近接戦闘における技能は群を抜いている。
 
 それを最大限に活かすフォーメーションが今の形だ。 
 そう言った意味では戦闘面で彼女に依存しているとも言い換えられる。 
 実際、ヨシナリは時間稼ぎを念頭に置いた戦い方を意識していた。 何故なら待っていれば彼女が勝手に片付けてくれるからだ。 

 「それにしても上位のユニオンからのお誘いも多いし、もしかしてちょっと揺れてるんじゃないですか?」

 マルメルがからかうようにそう言うとふわわはないないと手を振る。
 
 「こういうのってガッチガチに縛ってくるんでしょ? ウチはゆる~く楽しくやれればいいから、人数多くて一部の人の言う事聞いて前に倣えってやるのはちょっと好きじゃないかなぁ」
 「全部がそうとは限りませんけど、デカい所は割とそういう傾向にあると思います。 ほら、多分ですけどもうちょっとしたらイベント戦が復刻されるだろうし、集団での動きが重要になるって考えてる奴は少なからずいるかと」

 個別に戦っても圧倒的な物量で圧し潰されるのは前回、前々回のイベントで全てのプレイヤーが身を以て思い知ったはずだ。 ならば対抗する為に団結するのは自然な流れといえる。
 特にユニオンには専用の通信回線が用意されるので指示出しが非常にスムーズに行えるので、集団として規律のある行動がとれるだろう。 それにより戦力の損耗を抑えられるのは大きい。

 低ランクだと序盤に無策に突っ込んで返り討ちとなるケースが多かった事もあったので、それを減らせるだけでも中盤から終盤の展開に少なくない影響が出る。
 特に前回はSランクの登場まで粘れた以上、十時間以上は耐える事が出来たのだ。
 
 残り二時間足らずの時間。 それを埋める為に彼らは最大限の努力を行うだろう。
 
 「まぁ、俺も他に移るとか考えられねーよ。 ヨシナリがⅡ型装備買ってくれるし?」
 「はは、どっちにしろ何かする際は事前に一言くれ。 俺は二人がどんな選択をしようともそれを尊重するつもりでいるから」

 ヨシナリはそう言って取り合えず話題を切り上げた。
 仮に抜けるというなら残念ではあるが、それはそれで仕方がない。 
 あくまでゲームなので楽しいと思う方へと行けばいいとヨシナリは考えていたからだ。

 「取り合えずウチは全部に断りの返事を入れてるから心配はしなくていいよ~。 ぶっちゃけるとこの話したのも抜ける気はないけど隠すのも違うと思ったからやし」
 「あ、もう断った後だったのか。 どうでもいいけどふわわさんには個別の勧誘来るのに俺には来ないのな。 俺って結構、頑張ってると思うんだけどなぁ……」
 「なぁにぃ? マルメル君、モテモテのウチがうらやましいん~? ん~?」
 「ちょっとだけっすけどね。 ほら、俺も『君の力が必要なんだ!』とか言われてみてぇな~って思って」
 
 ヨシナリがマルメルの肩をポンと叩く。

 「マルメル、君の力が必要なんだ! マジで」
 「ヨシナリ!」
 
 男二人が抱きしめ合う。 その様子をふわわがあっはっはと笑って眺める。
 取り合えず勧誘の類は受けない。 そんな方向で話が纏まりつつあったのだが――
 
 『こんにちはー! ごめん下さい! 誰かいませんかー!!』

 不意に割り込んできた第三者の声に断ち切られた。 
 声の出どころは壁に付いているスピーカーだ。 
 ここはユニオンホームなのでメンバー以外は内部に入る事は出来ないが、声をかける事は可能だった。

 要は来客という事だ。 要件に関してはその場の全員が即座に察しており、表情の見えないアバターにもかかわらずマルメルは『どうするよ?』とちょっと嫌そうな様子だった。
 流石に無視するわけにもいかなかったのでヨシナリはやや不本意ではあるが応答する為に立ち上がった。

 
 ――面倒な事になった。

 それがヨシナリの抱いた偽らざる感想だった。
 来客は六人。 三人のグループが二つ来ていた。 流石にこのホームだと狭いので外に移動し、広いカフェテリアで全員が席について向かい合う形となっている。

 片方はユニオン『五宝剣ノルマン・コンクエスト
 リーダーのグリュックとそのお供が二人、もう片方が『大渦ヴァッサーファル』。
 こちらもリーダーが直々にお出ましだった。 プレイヤー名は『レラナイト』とお供が二人。

 「まずは急に押しかけるような真似をして申し訳ない。 俺はグリュック。 五宝剣のリーダーをしている」
 「レラナイトです。 大渦のリーダーをやっています。 よろしくお願いします!」
 「どうも、ヨシナリです。 星座盤の代表をさせてもらってます」
 
 正直、もう方針は決まっているので、断りのメッセージを送ろうとした矢先に直接来たのでヨシナリの中ではこの二人に対する印象はあまり良くない。 返事を待たずに現れている時点で急かしに来ているのだ。 好印象を受けろというのが無理な話だろう。 
 
 「えーっと、お二人が来られたって事は返事が欲しいって事ですよね? だったら先に言っておきたいんですけど、俺達は解散する気はないんで誘って貰えた事は嬉しいですが諦めてください」

 面倒だったので先に結論を出しておく。 
 内心で諦めて帰ってくれないかなと思っていたが、直接来るようなタイプにはあまり効果がない事も薄っすらと理解はしていた。 

 「なるほど、話は分かった。 けど、こちらとしても簡単に引き下がれない。 取り合えずこちらの出す条件を見てくれないかな?」

 そう言ってグリュックはデータを転送して来た。
 文章ファイルで開くとユニオン『五宝剣ノルマン・コンクエスト』に入る事の利点などが列挙されていた。 装備品の貸与、上位プレイヤーとの共同ミッション参加、イベント戦での支援などなど。

 それっぽい事が書いてあったが、具体的に何をやらされるかが書いていない点が死ぬほど怪しかった。
 ついでに言うなら装備品は貸与なのも微妙にセコいなとも思ってしまう。
 ただ、こういった手法を取ってくる相手に関しては比較的ではあるが対処は楽だ。

 「分かりました。 熟読した上で後日、メッセージでお返事させていただきますね」

 こう言っておけばこの場は治められるだろう。 
 後は二、三日寝かせてお祈りメールを送っておけば終了だ。
 グリュックというプレイヤーがまともならそのまま引き下がるだろう。 

 問題はもう一人の方になるのだが――
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