Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第46話

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 「は? 意味が分からないんですけど? 何で俺がそんな事をしないといけないんですか?」
 
 ふわわの提案にレラナイトは何を言ってるんだこいつと言わんばかりの口調でだった。
  
 「え? だって、賭け事をするんだから釣り合う物を用意するのは当たり前でしょ?」
 
 そう言い放つふわわからは普段の緩い雰囲気は完全に消えていた。
 ヨシナリはあぁこの人笑いながらキレる人だと内心で震え上がり、このままレラナイトが白けて帰ってくれないかなと仄かな期待をしていたが――

 経験上、この手の輩の反応は大きく分けて二種類あると彼は考えていた。
 共通して他人を自身の装飾品や装備品扱い――要は下に見ているので表面上は取り繕っているが基本的に横柄な態度を取ってくる。 さて、下に見ている相手からそんな生意気な返しをされるとどのような反応を返すか? 

 答えは諦めるかキレるかのどちらかだ。 前者は善意で声をかけてやっているのにそれを無下にするなんて馬鹿じゃないのか?がっかりだと勝手に失望して離れていくパターン。
 場合によっては粘着してくるかあちこちで自分都合よく脚色した話を撒き散らす程度で済むだろう。

 このゲームでは通報という最終手段があるので精々、身内に愚痴る程度で済むはずだ。
 問題は後者だった場合。 このケースは格上といった思い込みから半端にプライドが高く、下に見ていた相手に噛みつかれたと判断して攻撃的になる。

 ヨシナリの見立てではレラナイト後者だった。 だからと言って即座に上等だとはならない。
 何故なら負けた時の事を考えてしまうからだ。 このゲームは仕様上、そう言った誓約のような物を結ばせて物品の遣り取りをすることは可能だった。 一時、それを利用し、相手に行動を強要する悪質な行為が横行しかけたらしいが、例によって早々に根絶された。 

 恐らくだが、このゲームはかなり細かい部分まで監視、または管理されており、賭けを成立させる前に同意するか否かの確認ウインドウが表示される。 それに同意した上で契約不履行を行うと厳しい罰則が科せられるので同意すると負けた方は必ずそれを実行させられるのだ。

 今回の場合、レラナイトが負ければⅡ型のパーツ一式が強制的に徴収され、ふわわが負ければ問答無用でユニオン移籍となる。 

 「ウチの力が欲しいんやったら強い所、見せて欲しいな? それともGランクになりたてのウチらが怖くて逃げちゃう? ヨシナリ君達が雑魚だって言ってたし勝てる勝負やとは思わんの?」
 「……いいですよ。 ですがパーツ一式ではなく一つに――」
 「勝てるなら別にいいんじゃない?」

 可能な限りリスクを最小に抑えようとしているレラナイトだったが、ふわわは一切譲らない。

 「取り合えず、話は纏まったね。 レラナイトさんのやる事は同意するか尻尾巻いて逃げるかのどっちか。 ウチとしてはどっちでもいいから決めるなら早うして」

 マルメルはこの場から逃げたそうにソワソワしており、ヨシナリはこの流れだと成立しそうだなと思い、ソルジャーⅡ型をどう仕留めるかと思案していた。
 レラナイトしばらく黙っていたがちらりと連れて来た仲間を一瞥し、分かりましたと頷いた。


 話が纏まったので後は互いに賭ける物を天秤に乗せるだけだ。
  
 二人の前にウインドウが表示され、条項がずらりと並んでいる。
 ヨシナリはざっと目を通すと内容は――

 ・これは互いの同意があって成立する。 
 ・もしもこれが強制、強要されて結ばれた契約であった場合、ペナルティが発生する。 
 ・同様に成立後に強要されたなどといった虚偽の申告をした場合、同様のペナルティが発生する。

 頭にそんな警告文があり、その後に細かい条件が並ぶ。

 ・ユニオン『大渦』が勝利した場合。 ユニオン『星座盤』は即座に解散し、メンバーは『大渦』所属となり、最低でも半年はメンバーとして活動する。

 これはレラナイトが後で追加してきた条件だ。 
 付け加えるならプレイヤーの行動を制限するタイプの契約は拘束期間が設けられており、最大で半年間となる。 リスクを負う以上、可能な限りリターンを大きくしようと考えたようだ。

 要はヨシナリ達もメンバーに入れて下っ端としてこき使ってやるという事だろう。
 
 ・ユニオン『星座盤』が勝利した場合、プレイヤー『レラナイト』は所持しているソルジャーⅡ型系列のパーツの所有権を全て譲渡する。

 条件を吊り上げてきたのでふわわも同様にレートを上げた結果だった。
 隣でマルメルが「ひっでえ条件」と呟いている。 確かに酷い。
 これでレラナイトが負けたらソルジャーⅠ型からリスタートだ。 下手をすれば引退を考えるレベルの損失だろう。 当然、レラナイトは文句を言ったが、吊り上げたのはそっちでしょうとふわわは文句の全てを切って捨てた。

 ――まぁ、他人を半年も拘束しようとする奴相手ならちょうどいいか。
 
 リスクを負いたくないなら素直に諦めればいいのにと思いながら続きに目を通し、ある項目を見て思わず眉を顰めた。

 ・対戦形式はユニオンの総力戦。 

 「おい、三対三って話だろうが。 何で総力戦になってるんだよ」
 
 流石にこれはフェアじゃないだろとヨシナリが声を上げる。
 総力戦は文字通りユニオンメンバーが全て参加可能な戦争だ。 
 『大渦』は十名、星座盤は三名。 戦力差三倍での勝負となる。

 レラナイトは悪びれもせずに肩を竦める。

 「いやぁ、これは互いのユニオンの明日をかけた戦いなので、それにかかわらせないなんて酷い話でしょ。 いや、俺は止めたんですよ? でも他のメンバーが自分も参加したいって聞かないんですよ」
 「ふーん。 ええんと違う? でもこれで負けたらいい訳できないね」
 
 ふわわは他に何か仕込まれていないかを確認した後、同意ボタンを押す。
 
 「ちょっ!? 何をあっさり同意してるんすか!?」

 マルメルが声を上げるがふわわは無視し、レラナイトにお前もさっさと同意ボタンを押せよと促した。
 それに気圧されたかのようにレラナイトが僅かに仰け反るが後ろにいる他のメンバーの手前、引く事が出来ずに同意ボタンを押す。 これで成立。

 後は勝敗によって天秤に乗った掛け金が勝者の手の中へと転がり落ちるだろう。
 こうして『大渦』と『星座盤』によるユニオン総力戦が始まった。
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