悪魔の頁

kawa.kei

文字の大きさ
29 / 65

第29話

しおりを挟む
  「――はぁ、それで俺達を操ってこき使おうとしたって事ですか」
 「……そうよ。 私の悪魔じゃまともに戦うなんて無理だし、殺人のリスクも負いたくなかったからしょうがないじゃない」

 祐平の質問に櫻居は開き直ったようにそう答えた。
 取りあえず彼女を保護する事は決めたので、歩きながら自己紹介と情報の共有を行っている。
 櫻居は水堂と話したくないのか距離を置こうとするので止むを得ず祐平が聞く事となった。

 ――とは言っても祐平達にとってあまり実のある内容ではなかったが。

 彼女は怪物の他、魔導書を持った二人組と遭遇しただけだった。
 片方の能力は不明だがもう片方は『58/72アミー』のようだ。
 今回と同様に誘惑しようとしたのだが、どうやったのか感付かれて攻撃されたらしい。

 「……今思えば、あんたみたいに何らかの手段で私の悪魔の能力を判別したか伏せてたのがバレたんでしょうね」
 「でしょうね。 そうでもないならあっさりとあんたを受け入れてたと思いますよ」
 「はぁ、どうしてこうついてないのかしら……」
 「他人を操ってこき使おうなんて考えるからだ」
 「なによ! しょうがないじゃない。 私の悪魔にはそんな能力しかないし、知られたら警戒されるのが目に見えてたから開き直って操ろうとしたのよ! そういうあんたこそちゃんと私の事を守りなさいよ!?」
 
 口を挟んだ水堂に櫻居はややヒステリックに返す。

 「はいはい、やるだけはやるって」
 「本当に頼むわよ? あんた達に見捨てられたら私、死ぬんだからね!?」
 「分かった分かった。 妙な事をしなけりゃちゃんと面倒みてやるよ」

 言い合う二人を見て祐平はそういえばと思い出した。

 「ところで話は変わるんですが二人はここに来る前ってどこにいました?」
 「ん? 集められる直前って事か? だったら俺は飯食おうとショッピングモールのフードコートに居たな。 面接終わって帰る途中でこの有様だ。 こうなるなら他で食えば良かったぜ」
 「櫻居さんはどうですか?」
 「私もフードコートでコーヒーを飲んでたわ」
 「……って事は消えたのはあのフードコートに居た面子って事か?」
 「そうみたいですね。 俺も飯を食いにフードコートに入ったら意識が飛んで気が付けばあそこでした」 
 
 ここに連れて来られた共通点は考えるまでもなくあの場所だろう。

 「つーか、魔導書のナンバリングを考えると行き渡る人数がいれば誰でもいいって感じだな」
 「そうですね。 もしかしたらフードコートの中にいる人間が一定数に達したらあそこに飛ばされる仕組みになっていのかもしれませんね」

 その点に関しては祐平はほぼ確信していた。
 魔導書の総数を考えれば多すぎても少なすぎても駄目だったはずだ。
 ぴったり規定の数に達したと同時に転移する仕組みだったのだろう。
 
 つまりあの場にいさえすれば誰でも良かったのだ。
 行かなければ回避できたと考えるなら、来なければよかったと後悔が湧き上がる。

 「……何よそれ。 偶々、あそこにいたから私達はこんな事になったっていうの?」
 「もしかしなくてもそうだろうな。 あのクソ野郎が何を企んでるのかは知らねぇが、見つけたら一発はぶん殴らないと気が済まねぇ」
 「――というか、あの男の目的って何なの? 魔導書も元々、アイツの持ち物でしょ? それをわざわざ私達に配ってこんな潰し合いをさせる意味が分からないわ」
 「つっても魔導書の代償を考えれば数があったって仕方がないだろ。 第五位階なんて使ってみろ、寿命なんて即座に吹っ飛ぶらしいぞ。 確かに凄い代物ではあるが、ぶっちゃけ割に合わねぇんだよ」
 「そこは俺も気にはなっているんですよね」

 水堂の言う事はもっともだ。 魔導書の力は凄まじい。
 使い方によってはいくらでも悪用ができるだろう。 だが、代償が非常に重いのだ。
 その為、軽々しく扱える代物ではない。 持ち主であるならこの催しを主催した男が知らない訳がないのだ。 

 「手持ちの情報だけで推測するなら、あの男の目的は俺達を潰し合わせる事でそのリスクをどうにかしようとしているとかですかね?」
 「……あぁ、それはありそうだな。 ここで死んだら魂がストックされるとかそんな感じか?」
 「七十二人分の寿命があるなら第五位階を使用するハードルもかなり落ちるのであり得ない話じゃないですね」
 「ちょっと、私達は生贄って事?」
 「もしかしなくてもそうだろうよ。 あいつの言葉を聞いただろう? 明らかに俺達に殺し合いをさせる腹積もりだっただろうが」
 「仮にそうだとしたら殺し合うのはマジで止めた方がいいですね。 数が減れば減る程にあいつの思う壺ですよ」
 「ま、方針自体には変更がないからなんも変わらんがな」
 「増やすのはいいけど、誰彼構わず引き入れるのは危険よ。 殺し合いに積極的な奴は絶対にいるでしょ?」
 「まったくだ。 出会い頭に誘惑して操ろうとするやつもいたから気を付けねぇとな」
 
 櫻居は小さく言葉に詰まるが、彼女の言う事は正しい。 
 現に一度、襲われているので見極めはしっかりと行う必要がある。
 無理に引き入れて内部分裂を招いてしまっては本末転倒だ。
 不和の種になりかねない要因は可能な限り、排除するべきだった。 付け加えるならそういった能力を持った悪魔も存在するので人格的に問題がなさそうでも魔導書によって仲間割れを誘発される事にも気を付けなければならないのだ。

 「やる事は変わらねぇけど、前途は多難だな」
 「そうですね。 どうにか信用できそうな人と合流できればいいんですけど……」
 「ま、幸いにも魔導書の能力は見れば分かるのはデカい。 後は話した感触で見極めれば、かなり絞り込めるはずだ」
 「何をしてくるのか分かるならいきなり襲われる確率はかなり減らせますし、場合によっては先手を打てますからね」
 「そういえば私の魔導書の能力が分かるのは潟来君なのよね?」
 「まぁ、そうですね」
 「なんでそっちの男が知ってたの? 見た感じ話し合っているようには見えなかったけど……」
 
 櫻居の質問に水堂はさぁなと肩を竦め、祐平は苦笑。
 
 「ちょっとな。 必要になったら教えてやるよ」

 不機嫌そうな櫻居を無視して水堂は会話は一段落と口を閉じた。 
 祐平も同様に口を閉じて周囲の警戒に戻る。 ポジションとしては水堂、櫻居、祐平の順番で進んでいた。 これは櫻居を信用していない事もあるが、彼女を守る為の措置でもある。

 有事の際は祐平がフォローに入ると同時に彼女が背後から水堂に対して何かをするのも防ぐ意味でも有用だ。 櫻居は居心地の悪さを感じていたが、殺されなかっただけマシだと言い聞かせて水堂の背を追った。 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

レオナルド先生創世記

ポルネス・フリューゲル
ファンタジー
ビッグバーンを皮切りに宇宙が誕生し、やがて展開された宇宙の背景をユーモアたっぷりにとてもこっけいなジャック・レオナルド氏のサプライズの幕開け、幕開け!

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

花鳥見聞録

木野もくば
ファンタジー
花の妖精のルイは、メジロのモクの背中に乗って旅をしています。ルイは記憶喪失でした。自分が花の妖精だったことしか思い出せません。失くした記憶を探すため、さまざまな世界を冒険します。 記憶を取り戻して真実を知った時、ルイとモクの選ぶ道は?

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

処理中です...