妹とゲームする

kawa.kei

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第25話 四巡目総評

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 逸子は照れ隠しなのか「わたしってば何を言ってるのかなー? いやぁ、ちょっと疲れたから寝るね」と言って切り上げて部屋へ戻っていった。
 継征は苦笑して逸子の放り出したコントローラーを拾ってゲームを再開する。

 後ろで散々、見ていたのでやり方は頭に入っているので問題ない。
 さっきの話を聞いて思ったのはちょっとした安心だ。 継征自身もこの距離に安心感のような物を抱いていたので逸子自身が無理をしていないのであればそれでいいかなと思ってしまう。

 永遠に続くかは分からないが、今はこの時間を純粋に楽しもう。
 継征はそう考えてカチャカチャとコントローラーを操作する。

 「……これ、面倒くさいな」

 勝利の難しさに継征はそう呟く。
 その後、トロフィーをどうにか二つほど取得してから継征は眠った。
 
 翌日、顔を合わせた逸子は少しだけ照れていたが、どうにかいつも通りに振舞おうとしており、継征もそれに合わせたのでこの様子だと帰宅した頃には元通りだろう。
 その先は特にこれといって変わった事が起こる事はなかった。 家に帰り、逸子が絶界をプレイし、黙々とトロフィーを稼ぐ。 本当にそれだけの時間だった。

 週末を迎え、六月から七月へと代わった所でついに逸子は絶界のトロフィーを全て埋め尽し、トロフィーコンプリートを達成。 

 「お、終わった?」
 「……みたいだな」

 逸子はトロフィーがすべて揃っている事を確認すると大きく息を吐いて脱力した。

 「ふい~。 長かったぁ。 いや、もうこれきつすぎでしょ」
 「あぁ、よく頑張ったな」

 まるで長い刑期を終えたかのような安心感があった。
 スマートフォンで時間を確認すると土曜日の夜。 何だかんだと一週間を丸ごと使ってしまったようだ。 逸子はうーんと伸びをすると継征の方へと振り返る。

 「さ、次はお兄ちゃんの番――」
 「おいおい、忘れたのか? 俺はウイニングストライカーⅡしか引いてないぞ」
 
 あれをもう一回とか冗談じゃないと継征は首を振った。

 「そうだね。 ならリサイクルへ買いにいこっか」
 
 異論はなかったので継征はあぁと頷いて外出の準備を始めた。
 
 「もう夏だねぇ。 ちょっと歩くだけで汗出るよ~」
 「だなぁ。 熱中症でぶっ倒れた奴がいるってニュースとかでもやってるからお前も気をつけろよ」
 
 そんな他愛もない会話をしながらぼんやりと今回クリアしたゲームについて考えていた。
 ウイニングストライカー、ウイニングストライカーⅡ。
 これまでプレイした中で最大の強敵だったと断言できる恐ろしいゲームだ。

 普通にクリアするだけでも難易度の高いゲームだったが、トロフィーコンプを狙う場合は理不尽なクソゲーへと変貌する。 純粋な性能差という暴力で圧倒してくるサクセスモードと一試合こなした上で十分の一以下の理不尽なガチャを強いてくるオリジナルモードという二つの地獄を突破した後に待ち受けているのはネームドなしでワールドカップを優勝しろという更なる地獄だった。

 ネームドを使って弱点をしっかりと研究した上での辛勝できる難易度なのに性能で劣るモブを使って優勝という性能差を技量で極限まで補えという無茶振りをしてくる鬼のような仕様は継征と逸子を絶望させるには充分な破壊力を誇っていた。 総評としてはトロフィーコンプを狙わないのであれば難しいサッカーゲームだが、狙うのであれば地獄のクソゲー。 少なくとも継征は二度とやらないと心に決めていた。

 絶界―運命の切り札―。
 実際に存在するカードゲームをゲーム化した物だ。 
 プレイするに当たってルールを理解する事が必須ではあるので、興味がない、前知識がない場合はルールを覚えるところから始めなければならないので敷居は少し高い。 
 
 ――とはいっても序盤にチュートリアルを用意してあるのでそこでしっかりと基本の動きを覚えていればプレイする分には問題はないだろう。
 本来なら初期の少ないカード資産を勝利を重ねる形で増やしていく必要があったのだが、追加ディスクという名のイカサマがその手間を省いてくれる。 

 追加ディスク。 後で調べたが発売から三ヶ月後に一週間刻みで十種類も発売されたらしく、紙のカードを付録として同梱する事でゲームをやらないユーザーにまで買わせようとしたようだ。
 メーカーの目論見通り、とんでもない数が売れたらしい。 そして特典だけ抜かれたディスクが中古市場に大量に出回ると。 お陰で簡単に入手できたので文句はないが何とも言えない気持ちにはなった。

 ともあれ、その追加ディスクを最初から導入する事で初期に苦戦するカード資産の問題を解決できたのはかなり大きい。 お陰で序盤は特に苦戦せずに勝ちまくりだった。
 追加ディスクで得たカードを組み合わせワンキルデッキを組む事で手札事故を起こした時を除き、大抵の相手は瞬殺だ。 逸子も気持ちよさそうに勝利を重ねていたが、ストーリーを片付けてトロフィーの拐取作業を行おうといったところで雲行きが怪しくなり、その後は地獄だった。

 絶界というカードゲームは歴史が長く、多種多様なカードが存在する。
 その中に特定のカードを手札に揃える、フィールドに揃える、特定の手順で使用するといった様々な条件を満たす事で通常の手順を飛ばして勝利する事ができる特殊勝利というものがある。

 専用のデッキを組む必要がある事と細かな立ち回りが要求されるのでカードの性能を把握する必要がある事もあって達成は難しい。 ある意味、上級者向けのデッキといえるだろう。
 それを一度だけとは言え、全種類見なければならないのだ。 パワーカードで楽々勝ってきた逸子には中々にハードルの高い作業だった。

 そもそも細かいルールを把握していなかったのでその特殊勝利条件に付いてを調べるところから始めなければならなかったのでとにかく時間がかかった。
 後は上手く揃えばいいのだが、こればかりは乱数に期待せざるを得ないのでいい手札が来るまで試行を繰り返すだけだ。 総評としては普通にクリアする場合は徐々にカードを集めて時間をかけていくタイプのゲームで絶界が好きなら良ゲー。 追加ディスクを使ったのなら簡単すぎるヌルゲーだ。

 そしてトロフィーを狙うのであれば地獄の刑務作業を強いられる虚無ゲーと化す。
 普通に楽しむ分には問題はないが、極めるとなると苦痛が伴うといったところだろうか?
 一応、ストーリーもあったが、アニメのダイジェスト版なので前知識がないと良く分からない以上の感想が出てこなかったのでそちらの評価はできなかった。

 そんな事を考えているとリサイクルが見えてきたので次はもっとましなゲームを引きたいなと僅かな希望を込めて二人は店へと向かった。 
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