魔王がやって来たので

もち雪

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僕の日常にやって来た魔王 (本編はここからです)

魔界に咲く、スターチスの花

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 魔王は、「ごほん」ともったいぶる様に咳払いをした、何か言いにくい事でもあるのだろうか?

「以前来た時から、部下の様子が変だったので、やはり同じ年頃の友達などについて悩みがあるのかと思い、貴様に相談するのが最善と思い来たが……。貴様と会って合点がいったわ」

 魔王の相談と言うか、愚痴はその一言から始まった……。

 長身で、整った顔立ちの魔王は、何もせずとも人は威圧を感じさせる。そんな彼に、フィーナの不安定な様子に関係がある事について、見ただけで合点がいく自体についてかいもく見当もつかない事を問われてもただ、ただ戸惑うばかりだ。
 
 それでも魔王の言葉を意味を考えていくと、心当たりは……。フィーナと初めて会った日の、二人だけで過ごしたあの甘い時間だけ。あの時間の思い出が、残っているのなら魔王を恐れるより、正直、うれしい。
 大切に箱に入れてリボンをつけて、いつか彼女一緒に見る事が出来たなら、とても素晴らしいことかもしれない。
 
 しかしフィーナ彼女が、手渡しくれたピンク色の花々さえ残っていない……受け取ってすぐに消えてしまっている。
 
 もしかしたら……魔王なら彼女のきもちについて何か(理由が)聞けるかもしれない。でも、何て言えばいいのだろう。
 そんなことを考えるのももどかしい……彼女をただ待つだけの時間に、自分に苛立ちを覚える程に時間は過ぎてしまっていたから。
 
「どういう事ですか?」
 
「貴様、フィーナからスターチスの花を貰ったな?」
 
 魔王は、あのスターチスと言う花について、確信と知識があるのだろう――それはいったい何なのだろうか……。

「はい、ですが……あの花は消えてしまいました」

「やはりか……」
 
 魔王は、少し考えこむ。スターチスと言う花について考えているのだろうか、それともその花を贈るような関係である、僕と彼女について考えているのか?
 
 
「あの花には、いつたいどういう意味があるのですか?」
 
 僕に促されるままに、魔王は話し始めた……。
 
「まず、フィーナの種族の『白銀狐しろがねきつね』について語らねばならない」
 
「はい」
 
「白銀狐は、長寿で、その能力も高いという事は、魔界では有名だ」
 
「白銀狐が運命の相手に、『花』を渡す事はあまり知られていない」
 運命の相手と聞き、僕は心ときめいた。
 
「その『花』を、受け取った伴侶に白銀狐達は残りの寿命の半分と、彼らの能力の一部を受け渡すだろうと言う事までがわかっているが……。どちらかが死ぬと伴侶も死ぬ、だが別種族伴侶なら生き残るのではないか?」

「伴侶が了解した形でなければ、毒となるとなるだろうと言う話も聞いたが、推測の形でしかわかっておらん。」

あの子フィーナも幼くして、白銀狐家から連れ出されているので深くは知るまい……。だが、能力を受け渡すと言う部分は、本当の様だ……お前から以前とは違う力を感じる……」

「つまり魔界を統治する魔王さえ知らない秘密を、僕は彼女と共有してしまったんですね」
 不思議と笑みがこぼれる。

「残念ながらそのようだ……」
 (何が残念なのか……こんな男に娘はやれん! 的なアレなのか? )
 
「神話の時代の王の様に、我を討つ相手を無効化する為に自ら相手にへ塩を送ってしまうとは……なんと愚かな事をしてしまったものだ……」
 
 そう言って魔王は、机に肘をついて顔を伏せたが、彼の艶やか髪の間から見る事の出来る口元は、明らかに口角が上がり笑みを浮かべているのがわかる。

 
「それは……まあ良い」
 
 顔にかかった髪を払う為、額から髪をかきあげると……。
 
「あの子には悪い虫が付かぬ様、配下に置いていたのになんたる事だ……」
 
 今度は僕の顔を見ながら心底、残念そうに言った。
 まるで、大切に育てた娘が碌でもない男を連れて来た時の父親の様に……。

(花によって僕の力の増大についての心配より、娘の恋の心配……。でも、大丈夫です。娘さんは僕が大切にします、お父さん!)

 僕が、口では言えない気持ちを、魔王に対して目で訴えてかけていた時に……。


 その時、不意に僕の携帯電話のアラームがなる。
 
「あっ……お話の途中ですが、学校に……大学へ行く時間に……。」

 僕は、事と次第によっては休む事も覚悟していたが、魔王の返事は意外なものだった。
 
「仕方ない……」
 
「今日は、わざわざ来ていただいたのにすみません」
 
「何を勘違いしておる?  我も、大学とやらに着いて行くのだぞ?」
 
「へっ?」
 僕はその時、鳩が豆鉄炮を食らった様な顔をしていたのだろうか?
 
「なんだか今日のお前も浮き足だっているから、事故にでもあったらどうする?」
 
「この世界の視察の件もあるから、一緒について行ってやろう」
 
 フィーナさんに対してのそれ態度をみて薄々感じていたが……この魔王は、大変過保護はなのかも知れない……。

 つづく
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