魔王がやって来たので

もち雪

文字の大きさ
35 / 292
はじめての異世界

あるるのサンドイッチ

しおりを挟む
「じゃ、行くかと言う声と共に僕達は部屋の外へ出た」
 ぬいぬいは、兵士に外出したいと伝えると――。

「兵士は、しばらくお待ちください」
 といい城の方へ、走って行ってしまった。
 
「えっ? 師匠、前持って連絡しておいたんじゃないの? 」
 と言うとオリエラが言うと「いや」と頭の後ろで腕組みし暇を持て余したようぬいぬいが答える。

「し――しょう……私の外出許可だけで、三日はかかるのに……ハヤトも一緒じゃ、今日は絶対無理だよ」

 オリエラを頭を抱えて座り込んだ。その後、ぬいぬいとオリエラの軽口を聞いてると……。
 

 トントン
 不意に勇者の間の扉が、ノックされた。

「はい!はい!」

 オリエラが僕より先に、扉を開けて顔を出す。

「おい……オリエラ……」
 ぬいぬいが呟く。扉の先にはレンがいた。

「オリエラ王女、相手が誰かわからない内に、扉を開けのは危ないですよ」

「そしてそもそも、ここはハヤトの部屋です。王女であるからこそ、ハヤトの事も尊ばねばなりません」

「はい」と、オリエラは言うと……。

「ハヤト、ごめんなさい」
 彼女は頭を下げて謝った。
 
「俺は、謝る程の事じゃないと思うぜ」
 ぬいぬいが声をあげる。

「王女が簡単に謝ると、王女を侮るあなど者が出てくる」

「師匠……」

「だから、人の部屋で勝手にやるな」

「はい……」
 
「だが……」
「俺はお前の師匠だから、お前が俺に勝手やっても半分は許してやる」

「こいつはお前の弟弟子おとうとでしだから、お前がこいつの面倒をみてやる分には、構わないじゃないか?」

「もしくはお友達って奴だ」

「なっ!ハヤト」

 そこで、みんなの視線が僕に集中した。

姉弟子あねでし、よろしくお願いします」
 と、言って僕が頭を下げると……。
 
「姉弟子って言い方は可愛くないよ――」

「贅沢いうな」

「可愛さは大事だよ――」
 と、また二人は軽口を、いい始めるのだった。そんな二人のやり取りを見ていると……、ぬいぬいとオリエラは、なんやかんやでいいコンビだと、僕は思った。
 
「ところで、レンさんは何故こちらに?」

「君達が、外出したいと言ったから、私がお目付け役に選ばれたよ」

「お前それを早く言えよ、まぁいい行くぞ!」

 ぬいぬいは、素早く出発の用意をし始める。それを見て僕とオリエラも慌てて準備を始めるのであった。




 馬車の用意などは、レンさんが手配していたらしくスムーズに出発する事が出来た。
「おい、レン昼食はとったか?」
 
「午前中の会議が終わったと思ったら、兵が来たからね――。まだだよ」
 
「もー師匠は、レンさんにまで迷惑かけて――」

「だが、あるるのサンドイッチを、食べ事が出来るのだからそっちの方がいいだろ」
 
「そうだね、あるるさんの料理は、どれも美味しいかなね」
 
 レンは笑顔で同意する。レンさんは、あるるさんとも親しい間柄の様だ。
 
「そうだろうとも」
 
 いつもは、少し仏頂ずらのぬいぬいは、笑顔でそう言った。あるるさんのサンドイッチは、イチゴジャムのサンドイッチ、ハムとチーズサンドイッチやポテトサラサラダのサンドイッチまでいろいろあった。

「師匠は、何を手伝ったの? 」
 オリエラは、美味しそうにサンドイッチをほおばりながら、ぬいぬいに問いかけた。
 
「イチゴジャムのとポテトサラダを手伝ったんだが……あれじゃないか?ポテトを蒸かして、柔らかくして、他の材料を入れる工程で……魔法の配合について考えるだよなぁ……何故か」

「まぁあるるも慣れたもので、すぐ魔法の事考えていたでしょう? って最近は言うんだが……」

「水に火を混ぜると水蒸気になるけれど、植物系の魔法でじゃがいもをこうやりつつ、他の属性の魔法で美味しくなるけど、それを何か攻撃ないし、サポートの活かす事出来ないものか……」
 
 ぬいぬいは、ポテトサラダのパンを片手でつまみ上げ、目の前にかかげながら方向を何度も変えながら観察したのちに、かぶりついた。


「師匠その話は、何度も聞いたけど……師匠は、戦場の土壇場で実験するタイプだから怖いよ」
 と、オリエラの呟く声が聞こえた。

 レンさんも美味しそうに食べてはいたが、時々物思いにふけっている。
「会議と言うのは、僕についてですか?」
 
「まぁそうだよ、ハヤト」

「君を、どう有効利用するべきかについて話されている」

「いままで魔王が攻めて来る事がなく、そこで安心するのは浅はかだが……」

「下手に魔王を刺激したくないって言うのが、だいたいの意見だ」

「でだ、君の意見を聞きたい。」

「まぁご期待にはそえないと思うが、噛み合う部分もあるだろう」
 
 僕はどこまで話すべきか迷った。すべてを話すのは、僕や魔王にとって良い事ではないだろう……。
 出来たら、こちらの世界の魔界と人間界の関係については、あまり関わりたくない……。
 
 何て言えばいいのか思いつく言葉が見つからなかった。


 つづく
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

処理中です...