魔王がやって来たので

もち雪

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はじめての異世界

食堂での夕食

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 6時の鐘が城に響き渡たる。
  
「夕食の時間は、5時からだからもうあらかたの兵士は、夕食を食べた頃だろ。食堂に行くか?」
  
 ぬいぬいは、そう僕に問いかけたが……。
 何時間も魔法を撃ち続けている僕は、息も絶えだえである。

「ハヤトさん大丈夫ですか?」
 兵士のシルスさんが僕を心配して声をける。

「でも、驚きましたよ――初心者なのに、こんなに何時間も魔法を撃つ事が出来るなんて……」

「そうだな! さすがたいしたもんだ」
 そう言ってぬいぬいが、僕の背中をパンパン叩き激励を飛ばす。

「お――い 夕ご飯に行くぞ!」
 ぬいぬいが、ベンチに座るオリエラに声をかける。

「待ってました!」
 オリエラが両手を広げながら走ってくる。

「シルス、お前は食事は、どうする? 仕事の都合もあるだろ」

 ぬいぬいに、そう聞かれたシルスさんは――。
「もう仕事上がりなので、そこの仲間に伝えれば良いので一緒に食べましょう」

「そうか」
 ぬいぬいは、シルスさんの背中を少し嬉しそうにポンポンと軽く叩く。

「今日のご飯は何かな」
 オリエラが嬉しそうに、僕たちの前を歩く。

「オリエラは、家族とは一緒に食べないの? 」

 僕がそう言うとオリエラがくるっと振り返り、後ろを向きながら歩きながら……。

「そうなの、私は落とし子だからね」
 
 そう言ってニコッと大きく笑う。そして前に振り返って、前を向いて歩きだす。
 
「オリエラは、王ともっと遠くの山岳地帯の領主の娘との子だ」
 
「領主は、オリエラを隠して育ていたが、予言によってあばき出されされて……」

「今、魔法学校の寮に住みながら、俺の弟子をしている」
 ぬいぬいは、そう言って押し黙った。僕もなんて言っていいのかわからず、みんなに続き歩いた。

 少し歩くと話し声や笑い声が聞こえて来た。美味しそうな匂いにお腹が鳴り出す。

「ハヤト、晩ごはんはね」

「プレートを持って並ぶと、食堂の係の人が次々におかずや、ご飯をのせてくれるの」

「今日はシチューか……夏のシチューも美味しいよね」

「ちゃんと前を、見て並べぶつかるぞ」
  
 そう言うぬいぬいは、どう見ても給食を待つ小学校にしか見えない。次々に載せてもらい、どんどんプレートが山盛りになる。

 シルスは仲間が来るたび挨拶しているのは、とても彼らしい仕草だ。周りの兵士たちは僕に対してもわりかし、普通に挨拶をしてくれる。何日かたって、僕に対しての警戒心は、薄れつつある様でほっと胸をなでおろす。

 今日のメニューは、シチューとパンかご飯とヨーグルトサラダ。飲み物は、オレンジジュースと牛乳と水、紅茶のどれか選べる。

「いただきます」
 と言って食べ始めるのは僕ぐらいで、みんな長いお祈りをしている。

 みんなを待ってご飯を食べ始めるが、僕はみんなに馴染めているか居ないのか少し不安になった。
 
 シチューには、エビが入って居るのだが……エビが模様が、シマウマのそれだ……。

「あのエビってシマシマの模様ですか? 」
 
 僕が聞くとシルスさんが「その種類は、エビとは明確には違う種類だけどエビだね」
 
(エビなのか、エビはないのか……それとも翻訳の機能がバグっているのだろうか?)
 
 味はエビだった。異世界なので、そんな言葉についての誤差があるのだろうか?

 シチューは、美味しくとろとろで、パンはこっぺぱんで少し硬いような気もしたけど、だいたい僕達世界と同じ味だった。ヨーグルトサラダは、少し爽やかで、夏には爽やかになるミント系の葉っぱを入れるらしい。
 牛乳は、今まで飲んだものよりも少し美味しい。
 
 でも、その少しが、僕の気持ちを幸せもしてくれる、少しなので、味覚は不思議だ。
 ちなみに、ぬいぬいに聞いたら今日のオレンジは、少し酸味が強かったらしい。
 しかし毎日、お茶だったので……牛乳がこんなに美味しいと思わなかった。

「牛乳美味しいですね……」

「ハヤトさん牛乳飲めるのですか? 」

「えっ?」
 
 僕が驚きの声をあげると、何故かシルスさんは小さい声で……。

「以前の勇者さんが、牛の乳なんか飲めるか!? と言って暴れた伝説がありまして……。だから、毎年、勇者様専用のお茶の収穫のお祭りとか、ある地方もあるくらいですよ!」

 召喚後の大立ち回りといい、お茶といい前の勇者どんな人だったんだ……。理解に苦しむ。


 ★☆★☆★彡

 ―― 魔王城 ――

「はっくしょん」

「よしの風邪か? 獣医呼ぶか? 」

 鳥のよしのを心配そうに、魔王が見守る。

「いや、魔王だから、それくらい治せよ」

「むぅ」
 
 フィーナは、よしのの、魔王へ対する無礼な態度にふくれっらになった。
 
「なんだよ、また怒ったのか? この前貰ったお菓子やろうか? 」

「もう、子供では、ありませんのに……」
 
 そう言ったが、後で、よしのにお菓子を貰うフィーナであった。

   つづく
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