魔王がやって来たので

もち雪

文字の大きさ

大中小

79 / 292

王の命

日常にあるつまづき

しおりを挟む

　食堂のランチへ今日も並ぶ、銀色のおぼんに、魔法で割れない皿達、今日のメインは、豆の入ったトマト味スープ。

　野菜とビーフの肉が一緒に煮込まれ、トマト味が、強く主張せず、肉の味が全体を包み込んでいる。豆もすごく柔らかいのにちゃんとその形を保っている。ついつい豆を銀杏の串刺しみたいにやってしまうが……。僕は、小学生なのか……。

　コッペパンを沁み込ませても美味しい。いつもちょっと硬いパンが、スープをくぐらせる事ですごくいきて来る。凄くうまい、逆にコッペパンの中にスープの肉と少しの野菜を、挟んでみたらどうなるんだろう。そこに暖かいチーズを一枚乗せる。美味しのかもしれないが……カロリーってどうなるんだろう。

　いやいや。僕はパンを持ちながら首を振る。ウンディーネが、不思議そうにスープのスプーンを止めて見ている。

「いや……凄くパンとスープが合うなっと思って」

　僕は、すぐに言い訳をしてみた。

「ウンディーネは、どう？　美味しい？」

「主様あるじさまと食べると温かい事が美味しく感じるの……ウンディーネは、食事をとる必要がないけど、誰かを好きになると、彼の世界を知る事なる。だから美味しくて、楽しくて、不思議気持ち」

「それはうれしいな……ありがとう。教えてくれて」

「うん……」
　そう言ってウンディーネは、少しうつむいて恥ずかしそうにスープを飲む。そして嬉しそうに、美味しそうに少し彼女は笑った。

（もう――――かわいいかよ！）
　
　普通に食事をしている時に、嫌な態度を僕もされたくない。だから、普通に答えるのが……これは、凄く危うい事で、もう……どうすればいいのか……。

　もう黙って付け合わせのフィシュアンドチップスを食べる。…………また、フィッシュアンドチップスを頼んでしまった。　今日は、ローストビーフか、フルーツの盛り合わせか選べるたのに……。

　今日は、タルタルソースも付いて来てたんで、つい……。前回は、レモンのみだったかどんな味が確かめたくなるのは仕方ない事だよな……やっぱ。味は、メイン自体は、似た感かな？

　タルタルソースは、ゆで卵が、ざっくり混ぜられていて、そんなにマヨネーズが加えられていないから、好きな味なんだよな……。

　ポテトに付けても、魚に付けても美味しい。

　「こんなところに居た！」
　
　声のする方を見ると、兵士専用事務の制服を着た男性が立っている。年齢は、僕と同じくらいか、もしかすると僕より若い。クルクルふわふわの栗色の髪が可愛らしい印象だ。

「ルイスさんですよね？」

「いや、ハヤトですが、こんにちは」僕は、立ち上がり彼に挨拶をする。

「そうだった、あの人がルイスだった」
　
「もう何なんですか？　あの執事さんまったくもう」
　やはり彼は、ルイスに怒っているようで、顔は赤く、頭から湯気が出そうなくらいだ。なんか話が、長くなりそうなので思わす座った。

「うちの執事が、何か失礼な事でも？」

「彼、僕が仕事で少し手が空かず、待っていただけで……『私が、その仕事をお手伝いしましょうか？　貴方がやるより早く終わると思いますよ。私、貴方より有能何で』言うんですよ？　ひどくないですか？」

「はぁ……」僕は、それしかいう言葉がなかった。目の前では、ウンディーネがきつい目つきで、彼を睨んでいるし地獄！

「で、何か御用ですか？」

「あっ、すぐに事務所に来てくださいお願いします。では！」

　名も告げず、彼は帰っていた。彼の背中は、帰りの際も怒りをあらわにしていたし、内容も告げなかった。ルイスが、無礼な態度をとる事も仕方ない事だろう。ルイスもともと無礼な人だし。

「何あれ？　主様あるじさまに、あんな態度は良くない！　彼には素敵な水辺を紹介したいけど、どう思う？」ウンディーネは、少し楽しそうに話すが……彼女は美しだけの存在ではないので……困ったものだ。

「彼は、そこでどうなるの？」

「私達の隣人が、がぶっ、もぐもぐ」ウンディーネはかわいい仕草で表現してくれるが、だが明らかに駄目な行為である。

「それは、駄目だから……身近な人、例えば、僕で想像してみてよ」

　僕は少し呆れながら残りのポテトを食べながら見守る。

「主様あるじは、あの人間と違うし、ウンディーネには、主様に……そんな事……想像出来ない……」

　そう言うと、ウンディーネは、目にいっぱい涙をためて……それが少しずつこぼれ落ちる。彼女にハンカチを渡すが、次々涙がこぼれる様で止まらず、僕は周りの目が痛い。

「ウンディーネ、お皿を、片付けて来るからちょっと待っててね。」

　僕がお皿を持って行くと、食堂のおばちゃんが、僕を呼び止めて、携帯用のお茶をくれた。お茶はほかほかで今、入れてくれたのだろう。

「精霊のウンディーネとは、うまくいかない事もあるかもしれない。でも、負けるんじゃないよ！」

　彼女はそう言って僕を励ましてくれた。
　
「ありがとうございます」僕は一礼してその場を後にした。

　うーん……皆さん、僕とウンディーネの関係どんな風に想像していらっしゃいます？　困った。

「ウンディーネ立てる？」

「うん、大丈夫ごめんね。　ウンディーネもっと人間の気持ち、勉強するね」

　その後、ウンディーネとウンディーネが、最初に現れた噴水で二人で座ってた。水辺で、彼女の故郷につながるこの噴水しか、彼女の喜びそうな場所を僕は思いつかなかったのだ。もちろん人通りが多かったが背に腹は代えられない。

　それによって僕が無視していたものがある。兵士専用事務職員の呼び出しをだが……。それが僕達が人目のある噴水前に居た事により、噂として加速し、事務職員の彼が勇者に、話しかけた事によって、勇者のウンディーネが泣いてしまい、その為は勇者と彼のウンディーネは噴水前で長時間失意にくれていたと言う噂にまでなってしまったのである。

　　　　　　　　　　　　　　　　　つづく

しおりを挟む