魔王がやって来たので

もち雪

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王の命

例の事務員の解雇

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 晩御飯時、用事を終えて帰って来たルイスを待って食事をとっていると、ルイスが僕に尋ねた。

「ハヤト、兵士用事務員の所へ行ってくれましたか? 」

「あ……彼ね、いろいろ事情があって行かなかったんだ……、彼からは早く来るように言われていたけれど……やはり……まずかった?」

 僕は、ステーキを切る手を止め、ルイスの聞き返すが、彼は少し口のはしを上げて笑った様に感じる顔で――。

「いえ、スーテキと同じで寝かせた方が良いものありますが、今回はそれでしょう」

「そうなのか――じゃぁ良かった」

 僕は、少しの不安があったもののまぁ……ルイス返事を聞く分には、そこまで心配する事もないものの様だと思えた。そうとわかれば目の前に肉の味がたまらなく旨い、このステーキを切る事に意識を集中させた。

 ウンディーネは、今日も小食と言っていい量の食事を、美味しそうに食べている。彼女の好きなフルーツもあって昼と、うって変わってご機嫌だ。
 僕が、大豆への水やりや魔法をかけている間も楽しに、雑草を抜いていたしだいぶ機嫌が戻った様だ。

「ぬいぬいからは、明日こちらへ出向くとの伝言の返事がありました。王様の件はやはり、早急に準備を進めるそうですが、やはり勇者を死刑囚の様に死なせるわけにはいかない様で、すぐ儀式をどう行うかについての返事は難しいとの事でした。後の事は明日、行けばわかります、今、ここで話しては興が削がれますしね」
 
 ルイスは、手帳から事務手に事柄を読み上げていき、そう言って締めくくった。ルイスが言うとだいたい、不安な予告に聞こえてくるので、眠れなくなりそうだが、それも訓練と思い深く追求せずに寝る事にした。

 次の朝一番に、兵士用事務所に、出向くと怒声が聞こえて来た。ドアの隙間から覗いても普通に仕事をしている職員ばかりで、ルイスに急かされるのもあって室内にはいる。窓口には、例の彼はおらず少し待たされる事になってしまう様で辺りを何気なく見ていると、彼を呼びに行くはずの女性は、怒声が聞こえる部屋の扉を叩き中へ入っていってしまった。しばらくして小さくなった彼と彼の上司らしい人物が一緒に出て来た。上司の彼は立派な体格をし、きれいに髪を整えた人物だった。

「すみません勇者様とウンディーネ様に、うちの職員が無礼を働いてしまったようで……」 「僕は!」そう昨日の彼が話に割って入ろうとすると、「事の重大さがまだわからないのか!?」と、上司が彼の襟首を掴んで彼の足は少し宙に浮いた。

「ミスタージョルジュ、もうそれくらいで」とルイスが、声をかけるまで、みんながただふたりを見ていた。ジョルジュ氏に手を離された、彼は襟元に手をやり咳き込み涙ぐんでいる。

「ジョルジュさん、彼は何もしてないですよ、どうしたんですか?」

「ですが実際、近場で貴方に生意気な口を聞いた人々が多くいるのです。何もしてないって事はないでしょう。彼には、再三注意をしてきました。それも今日までです、彼は今もって私の権限で首です!」

 あんなもの言いの仕方だけで、辞める事になるものなのか……と、困惑し、僕はルイスを見る。彼が首を振ったらこれは、僕の口を出すべき問題ではないのだ……。

 ルイスは、僕の前に進み出る。(おっ?)

「ミスタージョルジュ、私どもの口を挟む問題では、無いと思いますが……我らの事で……一人の若者はが路頭に迷うのは、主人の意思にそぐわない事ではあるのです」(お? お?)

「ですが、こちらの決定を我々が、ひるがえして良いはずはありません……なので……」(なので?)

「ミスターミシェルをこちらで預かるって事で、どうでしょうか?」(どういうこと?)

「えっ? 僕が勇者のパーティーに入るんですか? それはちょっと……」
 
 ミシェルは、そう言ったが、もう誰も彼の言う事など聞く者おらず、さっさと荷物は作られてミシェルに渡された。何をやったら、そこまでな事になるのか?ルイスに算段はあるのかわからないまま手続きは、済んだ。

                  つづく
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