魔王がやって来たので

もち雪

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王の命

新メンバー

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 僕達、ミッシェルを仲間に引き入れた愉快なご一行は、兵士専用事務所の応接室に通された。
 
 机を挟んで、長椅子と入り口側に一人掛け用の椅子が2脚あった。すぐさまミッシェルが、長椅子に座るが、僕とルイスで彼の両脇を持って立たせる。彼とウンディーネ用に丸椅子がすぐ用意された。向かい合った一人掛けの席に、ジョルジュさんと優秀そうな事務員が立ち滞りなく、挨拶は済まされる。

「では、座りますか」

 一応こちらが上座なので僕からそう言ったが、本当の意味での力バランスは、今もって曖昧なままである。

「ルイス様から申請がありギルド身分証明カードのここでの書き換え申請の特別許可がおりました事をここでお知らせします。すぐ様書き換えに移らせていただくとともに、ウンディーネの仮の住民許可がおりましたので、書面にてのお知らせにかえさせていただきます。ですが……、これはあくまでも仮の許可であり、扱いはハヤト様の配下である事に変わりありません。以上の事にわからない点、認められない点はございませんか?」
 
「ご助力感謝いたします」

 そうルイスが頭を下げていうので、僕も同意する旨と、彼らにお礼を伝える。2回のスライムによる粘着液から生還したギルドの身分証明のカードを差し出すと、事務員の男性は、「右利きでよろしかったですか?」と、僕に尋ねる。

「はい……」と、僕が答えると彼れは「かしこまりました」と、言うと手のひらを重ねてゆっくりとも片手を持ち上げる。そこには、半透明の何かが徐々に姿を現す。全体的が、彼の手の中で姿を現した時。それはふわふわとした白いキラキラとした羽根ペンだった。

「ハヤト様、こちらの筆記用具を受け取っていただけませんか?」

「はい……」
 
 僕は手を伸ばし彼の出現させた羽根をゆっくり引き抜いた。そのペンは僕の為にある用に、しっくりと手に馴染む。そしてそれが当然である様に、ギルドのカードへと文字を走らす。ここまで来るとひと段落が、ついたとばかり皆、お茶を飲みだしたりしているが、僕だけなおも気の置けないままである。

 いつも間にかウンディーネが、机の横に座り筆の動きを見ている。青い目が大きく見開き宝石の様だ。
 
「ルイス、見てここ、ウンディーネって書かれてる。ルイスの名前はどこかな……あら、ないみたい残念ね。」
 
 ウンディーネは、ルイスを挑発する様にみている。
 
「良かったですね。ウンディーネ、私は先祖と同じ様にハヤトとの冒険譚には名を連ねると思いますが、その配下ってポジションは貴方にお似合いなので譲りますよ」

「未来なんて、関係ない……生きてるうちに、どれだけ一緒にいられるかが大切なの」
 
 ウンディーネが、少し怒っているから……ウンディーネの負けぽいな……だが、なんの勝負だ!?
 
「まぁ……二人ともなんか仲がいいよね」僕が、そう言うと二人揃って「そんな事ない!」「そんな事はありません」と答えた。そう言うところが仲が良いと思うのだけど、この二人が認める日は来るのだろうか?

「ハヤト様……」

 そう事務員の男性に、名前を呼ばれて僕は、僕の手の内のペンがもう影も形もない事に気付く。彼は、机に置かれたギルドカードを拾い上げると僕に両手で僕に手渡す。

「お名前と住所の、間違いはございますか? 間違いが無いようでしたら、ひとまず終了でございます」

「間違いは、特にありません、お世話おかけしました」

 ここで僕らが立ち上がろうすると、職員のジョルジュさんが、ふかぶかと頭を下げる。

「こちらこそよろしくお願いします」と言うので、皆でミシェルを見るが……彼は不貞腐れたように立っていた。その時、ルイスが、ミシェルの足を思いっきり踏み「痛い」、ミシェルは、座りこみ足を庇った。

「どうしたんですか? ミシェル貴方の挨拶待ちなのですが?」

「何で僕が……」と言うミシェルの横には、うちの狂犬ウンディーネが、これ以上ないほど冷たい目で見ているの気づき、彼は身を震わす。

「今まで、ありがとうございました。あの……何でもしま――」と、言ったところで、ルイスと僕にふたたび両脇を抱えられミシェルは、元職場に別れを告げた。

「バイバイ」と言うウンディーネに、女性事務員は手を振り、先ほどの男性職員は何もなかったように仕事を始めた。

 こうして僕達は、正式に新メンバーを迎えたのだった。

 
          つづく
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