魔王がやって来たので

もち雪

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それでも少しずつ歩む日々

魔王組の世間話

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 フィーナは、月を見ていた。

 彼女の白銀しろがねの髪も、黄金こがね色の瞳も、月の光を受けキラキラと輝いていた。
 しかし彼女の気持ちは、晴れず人間界にいる恋人の事を思うと心が沈む。

 私もハヤトの様に自由に世界を旅が出来たらいいのに……そう思うと気持ちが、もっと沈んでくる。
 結局のところ、自分は故郷に居た時のまま何もかわらない。

 それが魔界で一番の力を持つ魔王様のもとに居ても……。恋人のハヤトだけが自由に、そして、危険を冒して私のもとへ来る事になってしまった……。

 会えない時間はどれくらいになるのかわからない。それほどまでにここ魔界と、人間界の距離は遠いのだ。

 そんな長い時間の中で、もし……もしだけれども……ハヤトのそばにいる人を……ハヤトが好きになってしまったらどうしょう……。そんな事を最近ふと考えてしまうのだ。

 その時、テラスに1つの影が出来る。そして空からよしのさんが、落ちて来てテラスの手すりを破壊しながら着地する。彼は、振り返りフィーナを見ると。

「あっ、悪い大丈夫か? 、ってお前、月を見て泣いていたのか? 相変わらず暗い子供だな……」

「泣いてなんかいません……少し目にゴミが入っただけです」

「泣くほどなら会いに行けばいいだろう?」

 人間界から来た、着物を着て耳まで剃り上げ残りの髪を後ろで結い、狐目で時に鋭く眼光を光らせる。そんな元勇者は鳥の様に自由で、フィーナのしたくて、できない事をいとも簡単にやればいいと言う。

「でも、里の者に気付かれてしまって、そして私が捕まってしまったら……そう考えると……」

 そう言ったフィーナの肩に優しく両手が添えられる。

「大丈夫よ。貴方を、捕まえに来るのはどうせ暗殺部隊や拉致専門の狐の部隊でしょう? それならサクッと捕まえるか、殺しちゃいましょう♪」

 そう言ってシルエットは、ウェーブのある濃い紫の髪をふわりとなびかせ、艶っぽさのある優しい微笑みをした。

「でも……他の狐達と結局は、遺恨を残し上手くいかなくなるのでは?」

 フィーナは、不安げにシルエットとよしのを見つめる。

「全然大丈夫だろう? お前の両親に手をかけた次点で、もうガッチガッチに遺恨あるしな」

「そうそう、そう言う時はもうやられたら、やり返すしかないわね!」

 よしのとシルエットは陽気にそう返すのでした。そしてシルエットは、人差し指を天に向け、左右に振りながら。

私達は、何も狐を挨拶がてら皆殺しにしに行くんじゃないの! フィーナの身の危険を感じたから成敗しただけで、それが運悪く狐なのかもしれない?ってだけなのよ。大丈夫問題ないわ」

「だがな、フィーナ」

 よしのさんが、真面目な顔でフィーナを、見る……。

「狐の里に乗り込んでしまったらすぐに終わるぞ? たぶんシルエットと俺とでいける! いける!」

 フィーナは、真面目な顔をして、よしのを見る。

「実は、それも考えた事はあるのです。でも、従兄もいますし、私の事で魔王様が出てしまうと問題になるような気がして……」

「はぁ? あいつは、魔王だろ? 自分の部下が嫌な気分でいたら難癖つけて一族滅ぼすのが魔王じゃないのか? ひょってんのか?!」

「でも、ヤーグ様が目指すのはそんな世界では、無いからせめて暗殺にしましょう! 居候になっているんだから、そこは汲み取らないとねぇ」

「やっぱりそうですよね……」

 パン、シルエットとは両手を打ち鳴らす。

「ここで私だけで話していてもしょうがないでしょう? 魔王様を入れてお話をしましょう!」

「そうですね!」

「内緒で、狐の里へ行けばいいのに、面倒くさい奴らだな……」

 こうして、魔王組は、魔王ヤーグに相談する事になった。月は明るく三人を照らす満月の晩の事だった。

       つづく
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