魔王がやって来たので

もち雪

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それでも少しずつ歩む日々

『おしゃれ着の店クルスス』

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(なんで!? なんでなんだ――ルイス!!)

 僕は、心の底からそう思っている。今、僕達が居るのは、城下町で手頃な値段で服などが買い揃える店、『おしゃれ着の店クルスス』。

 名前に、同じ文字が2回並ぶ時はだいたいぬいぬいと同じ子供の様な見た目の種族と、何らかの関係があると言っていい。

 今回もクルススが小さい種族の女性だった。

 今、彼女を中心として、魔族組の2人と、聖女、王女とウンデーネそしてルイスが一緒に服を選んでいる。

「今のこの城下町の流行は、自然を取り入れる事ね。基本のナチュラルな色合いとして茶色や緑色を使ってもいいのよ」

 そうクルススが言うと、ルイスがそれに付け加える。

「最近は、秋のらしさを伝えるモチーフを使う事を好まれますね。葡萄のピアスやリンゴの柄のワンポイントが、どこかに入ってるとか」

「そうそう、雑貨品には特にそう言う傾向があるわね」

「そうなんですね」「これはなかなか良いじゃない」

 と、楽しく洋服を選んでいるなか、僕はその様子を少し遠くから眺めていた。この光景は実家で暮らしている時、よく見た光景だが、ルイスはその輪の中心で楽し気に話している。

 たぶん執事の仕事の見せどころなのだろうが、こう明らかに立ち位置が違うのみ寂しいものがある。ファッションに関しても詳しい執事ってカッコいい。

 何故ルイスはそこまで完璧であろうとするのか、彼の原動力について興味はるが、彼の深淵については一般人が覗くべきではないだろう。でも、狐の里に行く前の前の晩位なら聞いてもいいだろう。前の晩は、フィーナと話す予定だが、さすがに二晩続けて前、後編でルイスの自分がたりが語られる事はないだろうと考えての日程調整だが……どうだろう。

「ハヤト、これどう思いますか?」

 フィーナが、魔法使い用の白いワイシャツと、その上に着るローブを彼女の体に合わせる。ローブは、ウエストの横の部分が、靴の靴ひもの様な感じしぼる事が出来、ある程度体にそう造りになっている。スカートは、たぶんギャザーが入っているか、フレアースカートになっているかで、布が存分に使われているミニ丈のスカートだった。

「袖の蔓の様な刺繍もきれいに入っているね。フィーナに似合うと思うよ」

「ふふ、じゃー試着してきます」

「いってらっしゃい」

 僕は考えを改めた。いままでは女性用について妹が、語りだすのを聞いたりするだけだったが、これからはかわいい彼女が、僕の選んだ洋服を着てくれる。

 僕は改めて女性服を見た。ミニスカートや、ふぁふぁのスカートも見てみた。

 そして彼女の好みと僕の好みの合った洋服を選ぶ。

 ………………着て貰いたい洋服、彼女の好みの洋服より、服が多すぎて、わけわからん。

 そして僕は、きれいなアクセサリー見ているウンデーネを見た。彼女は水の様な髪が美しく、そして長い。

「ウンデーネ、これは髪を結ぶアイテムなんだけれど、どれが欲しい?」

主様あるじさまは、どれが好き?」

「選べないから、君の顔の横に置いてみよう」
 そう言って僕とウンデーネはあーだ、こうだ言って流行りの葡萄のモチーフの物を選び。

「ウンデーネ、社会勉強だからこれクルススさんにお金渡して買って来て」

「わかった、行ってくる」
 そうして僕は、ウンデーネの背を見送った。

「ハヤト」

「わっ」
 振り向くと、フィーナが立っていた。可愛い!そして眩し――い。

「どうしたんですか?」

「ウンデーネに自分の物を、買いに行って貰ったんだけど……ちょっと妹の事を、思い出して……」

「そうだったんですね……」
 彼女は少し、視線を落とし考える仕草をする。彼女の長いまつ毛……絵画の様な彼女。

「やはりそのローブも似合っているね。買う?」

「あっ、はい。お願いします」

「うん」そう答えた後、僕は彼女を見つめている、考えている僕は少し動作が緩慢かんまんだ。

「ハヤト?」

 彼女の少し不安げな表情、それを感じて安心させるように、僕は明るく言う。

「フィーナ、君は、お店で買い物をした事があるよね」

「いえ、子どもの頃は山に住んでいたので、行った事がなく。魔王城では、日本のカタログを見て選んだものを、買って来て貰っていたり、魔界のデザイナーが城まで来ていたので、お店で買うのは初めてです」
 そう彼女は恥ずかしそう言った。

「じゃーフィーナも買って来ようか、はいお財布。足りなければルイスに立て替えて貰おう」

 僕達は、女主人クルススさんの所まで来ると、ルイスをみつけた。僕は、フイーナに「じゃ頑張って」と言って送り出すとルイスのそばにまで、行って横に並ぶ。

「ルイス、ルナとシルエット見た?」

「お二人とも、もう買いましたよ」

「そうなんだ、良かった」

「ハヤト、何でも自分でしようとしないでください。それでなくても貴方は、あっちへふらふら、こっちへふらふらしているのだから」

 「そうだね、有能な執事が居てくれてたすかったよ。ありがとう」

 ルイスは、不意に笑う。

「ところで、ルイスは自分の分買ってる?」

「だから」 ルイスが、少し苛立つ振りをする。

「有能な執事には皆、なかなか口出せないでしょう? そのあるじの僕くらいしか」

「自分の面倒は、自分でみます」

「それは知ってる。でも、確認くらいいいでしょう? あるじなんだから」

「そうですね」ルイスは、肩を落として受け入れたようだ。

「後、ハヤト、これだけ使ったので、今月のギルド報酬から引き落としますね」

「これは凄いね、こんなに女の子の為に買ったの初めて! じゃ、よろしくお願いします」

 そんな会話をしながら、フィーナがやって来るのを待って僕は店をでる。

 外は、小雨が降りだして、その中を少し濡れながら、僕達は城までの道を歩いて帰って行った。



              つづく
 
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