119 / 292
それでも少しずつ歩む日々
聖女の鞄
しおりを挟む
とうとう恐れていた事態になってしまった。王の命を受け聖女ルナ様が、この魔王城支部化していた勇者の間に降臨してしまった。
ルイスは、滞りなくルナ様をもてなすが……、この勇者の間で魔王属性一番高いのは、ルイス、君だからな。ってそんな現実逃避をしている暇はなかった。
「ようこそいらっしゃいました。ルナ様 歓迎いたします」
「ハヤト、ルナと呼んでください。そして敬語もでなくても構いませんわ」
「わかりました。ルナ、僕から改めて紹介させてください、僕の執事のルイス アルトと僕と契約してくれたウンデーネです」
「お久しぶりですルナ様」
「お元気でしたかルイス、本当にひさしぶりですね」
「ウンデーネです。よろしくお願いします」
そんな緊張しつつも和やかなムードの中で――。
今日のウンデーネは、少しおすましウンデーネだ、しかし座って居るソファーは一人用だけど、聖女ルナ様側にピッタリとくっついている。
「ウンデーネ、もちょっと反対側に寄ると楽に座れるよ」
「そんな事ないです」
そう言ってにこにこ笑っている。どうも、ウンデーネは、好みの魔力の強い若い女の子には、必要以上にベタベタしてしまう様で、見ていてこちらがヒヤヒヤする。
「今日のここへ来たのは他でもありません。勇者のパーティーに同行するヒーラーとしてわたくし、ルナが同行する事に決定しました」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」僕は、そう言うとルナを見る。
「ですが、ルナ。僕は魔界に行きますが、それは私利私欲の為であって世界は救う事はないでしょう。それでもなお貴方は僕とともに行ってくれるでしょうか? 冒険に」
僕がそう言うと、彼女はにっこりと笑った。彼女の周りに花が舞うように見える。
「ハヤト、貴方の事は勇者と皆が言っていますが、正確には違います。貴方は神によって『選ばれた者』であり、その選別には『異世界から来た人物』、『この城の召喚の間に現れた人物』である事が重要なのです。今、成さないけれど『生涯のおいて成す者』を『成さない者』の区別はとても時間がかかり、困難を極めます。その困難の内の死から貴方を遠ざけるのが聖女なのです。私達、聖女達は可能性を育む者です。わかっていただけますか?」
「なんとなくですが、わかります」
「では、私も今日からここでお世話になります」
そして彼女は僕の目の前に1つの鞄を置いた。その鞄は僕が向こうの世界からに荷物を入れた鞄より小さく古めかしい物だった。
「失礼ですが!」
僕は、思わず自分が大きい声を出していた、自分自身が驚いた。
「あ……すみません、もし帰れる事があれば、旅の終わりが来たら、貴方はどうするおつもりですか?」
彼女が旅の終わりに、教会でへ帰るのであれば僕は何も言う事出来なかった。旅先で必要最低限の物だけ買うのをただ見守って旅をしよう。彼女は教会に帰り、死ぬまで慎ましく生きるのだから……。
でも、彼女が旅が終わってそれでも、外の世界で生きるなら、僕は彼女の良い友人として、彼女の好きな物を知ってもいいかもしれない。だから一緒にこれから必要なものを楽しく買い物に行くのもいいのではと思った。
「私は……」
彼女は言いよどみ、そんな彼女の代わりにルイスが「聖女様の多くが旅立ちとともに、教会の名簿から外れます。その理由は我が一族や他の貴族とも被りますが、我々は次の代に子孫を残す事、稀なる血を運ぶ為の箱舟となる事を義務とされています。老後の我々が、そしてその地に住まう領民の安全を守るためにそれは必要な事です。だから進んでそれを享受せねばなりません。なので、彼女は勇者一行の誰かか、この国の王子と結婚する事になるでしょう」
「そのようです」
彼女は少し困った顔をして笑った。その隣で、ウンデーネは、複雑な表情で僕らを見ている。彼女にとって恋や愛があるから全ての事は我慢出来ると、他のウンデーネとは違う価値観を取り入れてきたのに、自由であると思って疑わなかった人間の真の姿に少なからずショックを受けている様だ。」
「あの……僕達と一緒に買い物に行きませんか? 明日」
「そして貴方の冒険の為に必要な物を買いましょう」
そう言うと、彼女は自分の鞄を見てほんの少しだけ眉間に微かなしわを作ったが。
「心遣い感謝しますわ、ハヤト」とそう言ってほほ笑んだ。
彼女の今後の運命には僕は立ち入れない。でも、友人としてなら何かできるかもしれないと、僕は少し傲慢にそう思っている。
つづく
ルイスは、滞りなくルナ様をもてなすが……、この勇者の間で魔王属性一番高いのは、ルイス、君だからな。ってそんな現実逃避をしている暇はなかった。
「ようこそいらっしゃいました。ルナ様 歓迎いたします」
「ハヤト、ルナと呼んでください。そして敬語もでなくても構いませんわ」
「わかりました。ルナ、僕から改めて紹介させてください、僕の執事のルイス アルトと僕と契約してくれたウンデーネです」
「お久しぶりですルナ様」
「お元気でしたかルイス、本当にひさしぶりですね」
「ウンデーネです。よろしくお願いします」
そんな緊張しつつも和やかなムードの中で――。
今日のウンデーネは、少しおすましウンデーネだ、しかし座って居るソファーは一人用だけど、聖女ルナ様側にピッタリとくっついている。
「ウンデーネ、もちょっと反対側に寄ると楽に座れるよ」
「そんな事ないです」
そう言ってにこにこ笑っている。どうも、ウンデーネは、好みの魔力の強い若い女の子には、必要以上にベタベタしてしまう様で、見ていてこちらがヒヤヒヤする。
「今日のここへ来たのは他でもありません。勇者のパーティーに同行するヒーラーとしてわたくし、ルナが同行する事に決定しました」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」僕は、そう言うとルナを見る。
「ですが、ルナ。僕は魔界に行きますが、それは私利私欲の為であって世界は救う事はないでしょう。それでもなお貴方は僕とともに行ってくれるでしょうか? 冒険に」
僕がそう言うと、彼女はにっこりと笑った。彼女の周りに花が舞うように見える。
「ハヤト、貴方の事は勇者と皆が言っていますが、正確には違います。貴方は神によって『選ばれた者』であり、その選別には『異世界から来た人物』、『この城の召喚の間に現れた人物』である事が重要なのです。今、成さないけれど『生涯のおいて成す者』を『成さない者』の区別はとても時間がかかり、困難を極めます。その困難の内の死から貴方を遠ざけるのが聖女なのです。私達、聖女達は可能性を育む者です。わかっていただけますか?」
「なんとなくですが、わかります」
「では、私も今日からここでお世話になります」
そして彼女は僕の目の前に1つの鞄を置いた。その鞄は僕が向こうの世界からに荷物を入れた鞄より小さく古めかしい物だった。
「失礼ですが!」
僕は、思わず自分が大きい声を出していた、自分自身が驚いた。
「あ……すみません、もし帰れる事があれば、旅の終わりが来たら、貴方はどうするおつもりですか?」
彼女が旅の終わりに、教会でへ帰るのであれば僕は何も言う事出来なかった。旅先で必要最低限の物だけ買うのをただ見守って旅をしよう。彼女は教会に帰り、死ぬまで慎ましく生きるのだから……。
でも、彼女が旅が終わってそれでも、外の世界で生きるなら、僕は彼女の良い友人として、彼女の好きな物を知ってもいいかもしれない。だから一緒にこれから必要なものを楽しく買い物に行くのもいいのではと思った。
「私は……」
彼女は言いよどみ、そんな彼女の代わりにルイスが「聖女様の多くが旅立ちとともに、教会の名簿から外れます。その理由は我が一族や他の貴族とも被りますが、我々は次の代に子孫を残す事、稀なる血を運ぶ為の箱舟となる事を義務とされています。老後の我々が、そしてその地に住まう領民の安全を守るためにそれは必要な事です。だから進んでそれを享受せねばなりません。なので、彼女は勇者一行の誰かか、この国の王子と結婚する事になるでしょう」
「そのようです」
彼女は少し困った顔をして笑った。その隣で、ウンデーネは、複雑な表情で僕らを見ている。彼女にとって恋や愛があるから全ての事は我慢出来ると、他のウンデーネとは違う価値観を取り入れてきたのに、自由であると思って疑わなかった人間の真の姿に少なからずショックを受けている様だ。」
「あの……僕達と一緒に買い物に行きませんか? 明日」
「そして貴方の冒険の為に必要な物を買いましょう」
そう言うと、彼女は自分の鞄を見てほんの少しだけ眉間に微かなしわを作ったが。
「心遣い感謝しますわ、ハヤト」とそう言ってほほ笑んだ。
彼女の今後の運命には僕は立ち入れない。でも、友人としてなら何かできるかもしれないと、僕は少し傲慢にそう思っている。
つづく
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
「お前の戦い方は地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん、その正体は大陸を震撼させた伝説の暗殺者。
夏見ナイ
ファンタジー
「地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん冒険者アラン(40)。彼はこれを機に、血塗られた過去を捨てて辺境の村で静かに暮らすことを決意する。その正体は、10年前に姿を消した伝説の暗殺者“神の影”。
もう戦いはこりごりなのだが、体に染みついた暗殺術が無意識に発動。気配だけでチンピラを黙らせ、小石で魔物を一撃で仕留める姿が「神業」だと勘違いされ、噂が噂を呼ぶ。
純粋な少女には師匠と慕われ、元騎士には神と崇められ、挙句の果てには王女や諸国の密偵まで押しかけてくる始末。本人は畑仕事に精を出したいだけなのに、彼の周りでは勝手に伝説が更新されていく!
最強の元暗殺者による、勘違いスローライフファンタジー、開幕!
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる