魔王がやって来たので

もち雪

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それでも少しずつ歩む日々

祝賀パーティー

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 まだ人の居ない、城のダンスホールに僕達は集められた。

 演出家と名のる人物を紹介され、挨拶を交わし、しばらく話していたのち彼は言った。

「勇者様、今日は言葉少な目で少しぶっきらぼうな感じで、威厳をだしてみましょうか?」

 そうしたらルイスが、ブホォってなってクックックッ笑いをこらえきれない、って感じで笑っている。そんな彼は白いタキシードが、眩しい。新郎か!? 「どうしたんですそれ?」って聞くと。

「あぁ、アルト家から送らて来たんですよ、ミッシェルもそうですが、まぁ最後かもしれない舞台に、花を添えたかったのでしょう。いつもアルトで居るなら執事の服を常にって言われてきましたが、今回だけはお前の好きな服を着なさいって3着も送られて来たので、これにしました」

 いつも繊細な造りの彼が、今日はより繊細に見える。それは僕が彼の印象そう感じそれを投影しているからなのか……。
 とりあえずあれだな。ほぼ普段着は、僕とぬいぬいだけになってしまった。

 ぬいぬいは、今回貰った準備金+扶養金をあるるさんとあるとくんの生活として残した以外は、殴打用のごっつい感じの杖に全額入れたらしい。

 MMOのゲームでも居たが何故、白魔導士は、杖のスキル(殴打)を最大限に上げてしまい、何故運営は、最高のスペシャル技(物理)を白魔に与えてしまうのか……。

 えっと……何の話だっけ? 白魔は、心のメイン職だけど、黒魔あいまいだが……。

 そんなわけで僕は、緋色のマント跡がYシャツに魔法学校のズボンのいでたちで、ベルトとなんか安全・防犯の為と言われいろいろ固定された槍を背に立っていた。

 演出家にお辞儀による(槍での、相手の頭上への)物理攻撃が、指摘されやりなれない敬礼を強制されたのち、祝賀パーティー開催された。

「勇者として奮闘ふんとうします」、敬礼

「安全な世界を作るべく頑張ってまいります」、敬礼

「お言葉感謝いたします」、敬礼

 そのルーティンワークを切々とこなした。

 アニス王と王妃、俳優、女優の様だった。

 ミッシェルの両親、なんだろう威厳があり過ぎてこわい。ご兄弟も俳優、女優様だった。

 アルト家のご家族は、なんか作画が違っていた。ほぼ、今はもう懐かしい違う世界の思い出のVtuberな感じでほぼ2次元だった。

 挨拶が終わり。

 一息つくと、クロゼットルームへ行きそこの兵士さんの槍を外して貰い戻って来ると、みんなが人だかりの中心にいる。

 僕は、彼女を見つけて人をかき分け近づくと、彼女が僕に気付いて僕の名を呼ぶ。

「ハヤト、こんなに一度に、人を見たの初めて」

 彼女の高揚した頬が赤い。僕は思わ彼女の頬に触れてしまい、彼女の目が丸くなる。今日は髪飾りで、隠れているので狐の耳が見れなくて残念。

「人酔いをするといけないから、バルコニーに行こう」

 僕は彼女の返事を聞かずに、歩き出す。「勇者様!」と、呼び止められはするけれど、敬礼を返すとそれ以上何も言われなかった。

 空いてるドアの隙間から飛び出すと、秋を迎え始めたこの夜の星空のした僕達が居るのに丁度いい居場所になっていた。

 下をうつむく彼女は少し緊張している様で、少し強引すぎただろうか?

「フィーナ?」

 そうするとか彼女の右手がゆっくりと、僕の左手の指、1本、1本に絡まる。

 うつむく彼女が、いきなり顔を上げて背伸びしているのか、僕の顔の近くの彼女の顔が近づいて彼女の長いまつ毛や吐息……、すべてが僕の胸を熱くする。

 「ハヤトは、ここまで来てくれた……でも、私は時々わがままになってしまいます。私はハヤトのすべての一番でいたい……それどうしても手に入れ」

 彼女は、言い終わる前に……初めてのキスを彼女に、したのは無礼だっただろうか? 彼女の唇は、僕が触れている頬より柔らかい。

 名残惜しく、彼女の唇と離れるが……。

 「ちが……」彼女の顔が赤い、素敵な耳たぶまで赤い……。

 彼女の手は、今だあったかくやわらかい。

「うん」

「ハヤト、でも、みんなと関係を壊すべきではないと、わかってはいるんでする」

「ごめんね……」

 僕はそう言ってふたたび、フィーナにキスをした。
 長い、長いキス、止まらないキス。

 違う角度から彼女の顔を見たくなった時、その唇を離した。

 さすがに僕らの吐息は、目に見えるようで、内心すこし恥ずかしくなったが、それでも余裕のあるふりをした。

「僕もわかっているけど、止められなかった……」
 
 彼女は、僕に抱きつく。きゃしゃな首もとにどうしても目がいってしまう。

「怖かったり、ドキドキしたり不思議な気持ちです。でも、少し傲慢だった気持ちが落ち着いて来たかもです」

 僕は彼女の優しく抱きしめ。

「落ちついたら駄目だから、もう一度キスしょうか?……」

「もう、ハヤトはすぐ調子に乗るんだから」

 そう言うと彼女は僕の腕の中から離れる。名残惜しいけれど、そろそろ歯止めはきかなくなそうで――。

 次の瞬間、僕が感じたのは、彼女からの短いキスの感触だった。

 そして彼女はいたずらぽく笑う。

「あっ顔が赤いですね」

 唇に手をやる、僕を体をくの字にして横から覗き込むフィーナ。

 なんて小悪魔、なんて天使なんだまったく!
 

 ベランダにもたれかかり、ふってきそうな星空を二人で見上げる。

「主様、フィーナ、何で二人で、ここにいるの? ウンディーネも呼ぶべき」

「ハヤトさん、聞いてください!」

 と、社会不適合者の僕のパーティーメンバーが、次から次へとバルコニーに集まって来る。
 
 それを見て僕は笑い転げる、そしてやっぱ――仲間っていいな。

 僕の彼女には負けるかもしれないけれどと、思ったのだった。

      つづく
 
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