魔王がやって来たので

もち雪

文字の大きさ
140 / 292
旅立った僕達

水面の上の二人

しおりを挟む
 多くの広葉樹を見る事の出来る湖の水辺を歩いている。

 渡し舟があったが、船頭が不在だったので、仕方なしに水鏡になった湖の水辺を僕ら行く。

 湖の水は澄み、魚が幾度も水面に顔をのぞかせる。やはりここでも、フィーナと写真を撮りたいが、そんなに何枚も撮っていると電池が足りなくなってしまう。……うん? ところで、フィーナどうやって電源を、とっているのだろうか? 後で、聞いてみよう。

 そんな事を考えて歩いていると、ぬいぬいが小走りに湖に走って行く。彼の後を追い僕が付いていくと――。

「おい、これを見ろ」

 彼は指さす先の湖には、水面の揺らめきはないけれど、水中に女性が居る。

 試しに僕は手を突っ込もうとしたら、「おい!」と、言われぬいぬいに腕を掴まれた。

「ウンデーネ、こいつの代わりに見てやれ」

 そう言って僕の後ろで、どれどれ?って言う感じに見ているウンデーネに、ぬいぬいは告げる。

 彼女は、口元に手をやり首をかしげると。「わかった」と言って、荷物を置いて手を突っ込むが、どこまでも触れる物がないようで、思い切ってそのまま飛び込んでしまった。

 そんな彼女をも、今回もぬいぬいが止めようとしたが、そんなぬいぬいだけを慌ててみんなが引っ張る。

「ぬいぬいさん、ちゃんと自分の非力さを自覚してくださいよ」と、ミッシェルは言うと、どこからともなく現れたぬいぬいの杖の一振りで、「うぇ――まずぅ……なんですかこれ!?」と、うぇうぇ言い出す。

「これは好き嫌いを直す魔法、このまずい味の後に食べると素材本来の味に気付く魔法だ」

「なんて魔法かけ」ミッシェルが話している途中で、彼の口に何か放り込むが、「うわぁぁぁ」なんか、すぅーすぅーする。これ何ですか? 「お前の嫌いなハッカ飴だが、うむ」

「全然美味しくないじゃないですか。もう!?」

 地団駄を踏むミッシェルに、ぬいぬいは、「そういう事もあるのか……」と、目を見開き驚いていた。

「ハヤト、遊んでいないで、こっちに来てください」

 向かった先では、ずぶ濡れの男性が、四つん這いになり荒く息している。
 
 僕らの来た方角から、ウンデーネが水を滴らせて歩いて来た。

「主様、水の中には女の子はいなかった。」

「ありがとうウンデーネ、では、彼女が居るのは水面の僅かな部分だけなのかもね」

 そう言うと男性は泣き出し、僕らは少し途方にくれるが、そこはルイスわかっている部分だけでも報告を始める。

「ウンデーネが、飛び込んだ後の水面は、なおも女性が我々に何か訴えるので、それにしたがったら彼を見つけて保護しました。それでも彼は女性の元に行こうとはしていましたが、女性は彼を助ける様に私達に要請しているので、彼が何も考えず湖に飛び込んだのでしよう」

「お前達に何がわかる。俺の気持ちもわからないくせに!」

「じゃー貴方は、貴方を助けようとして湖に飛び込んだ、彼女の気持ちがわかるんですか!!」

 そう言って勝手に飛び込んだ、ウンデーネを指さす。こんな時だけ感のいいウンデーネは、「頑張ったのにひどい!」と、言ってフィーナの後ろに隠れた。

「そうだったんですか、すみませんでした……」

「もう、いきなり飛び込まないでください」と、フィーナにバスタオルでウンデーネを拭く。フィーナの体の横から見え隠れする彼女は拭いて貰いニコニコだ。

 その後、彼は、責任を感じ我々を家へと招待した。彼の家は、一人で住まいには少し大きい一戸建てで、船の船頭の独占商売は結構儲かるんだな……と僕を感心させた。

 彼の振舞う、魚料理の後に彼は、水面に移る彼女の事を話出した。

「親父から船頭を継ぎ、一年位してから彼女の事に気付いたのです。そして寂しいこの暮らしの中で、彼女だけが俺の安らぎである事に気付いたのです。しかし夢中になる俺に比べ彼女は段々現れてくれなくなった……。だからつい彼女の腕を引き留めようとして湖に落ちたのですが……もしかしたらこのまま逝けたた彼女に会える気がして……しかしあまりの苦しさに、いつの間にか助けを呼んでしまった様です……」

 みんな一同黙って聞いていた。中にかモリモリ魚をたべ、生で食べそうな勢いの子も居たが……。みんな黙って居たのは事実は,ミッシェルはよく頑張った。

「とりあえず氷の魔法でも覚えますか……」

「あっ!……はい!」そもそも、こんな所に住む人は結構器用な人が多いが、恋の力は凄まじく次に朝には、彼は……。

「覚える事が出来ました!」と、日が上がりだして、すぐの僕らを起こしてまわったらしい。

 そして彼は、氷越しに彼女に触れ、泣いて喜んだらしいのだ。

 ちなみに、僕の夢は、フィーナと素敵な湖でデートする夢だったのでまぁ……仕方ないよね……。起きられなくても。


                 つづく
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

「お前の戦い方は地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん、その正体は大陸を震撼させた伝説の暗殺者。

夏見ナイ
ファンタジー
「地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん冒険者アラン(40)。彼はこれを機に、血塗られた過去を捨てて辺境の村で静かに暮らすことを決意する。その正体は、10年前に姿を消した伝説の暗殺者“神の影”。 もう戦いはこりごりなのだが、体に染みついた暗殺術が無意識に発動。気配だけでチンピラを黙らせ、小石で魔物を一撃で仕留める姿が「神業」だと勘違いされ、噂が噂を呼ぶ。 純粋な少女には師匠と慕われ、元騎士には神と崇められ、挙句の果てには王女や諸国の密偵まで押しかけてくる始末。本人は畑仕事に精を出したいだけなのに、彼の周りでは勝手に伝説が更新されていく! 最強の元暗殺者による、勘違いスローライフファンタジー、開幕!

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

処理中です...