魔王がやって来たので

もち雪

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旅立った僕達

『大蛇の牙』を壊滅させる

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 昨日からの疲れかれなのか、ゲストハウスに辿り着くと僕は、客間の長椅子のソファでその恰好のまま眠ってしまった。そんな僕をぬいぬいがお気に入りの原木の杖で肩を叩き起こす。

 「そろそろ行くぞ」

「はい、わかりました」

 僕はそう言うと、大きくあくびをし、少しその場で柔軟をした。自警団から貸し出されている馬車に、乗り込むべく廊下にでると、ぬいぬい、ルイス、フィーナ、ルナが装備を揃えて待っていた。

「ルイス、寝てる間にいろいろ決めて貰ったみたいで助かったよ」

「いえ、主人の休養を守るのも執事の務めですので」

 ルイスは、そう言い柔らかく笑う。それが逆に怖いのは、僕の気のせいだろう。玄関の扉を開けると、通り抜ける馬車たちが見える。

 ホーエンツォレルン城の勇者の間は玄関から先は城のが見えたが、馬車が石畳の上を走るのを玄関前で見るのも、これはこれで、異世界ぽくていいとは思う。

 家の脇の馬車小屋まで行き、僕はルイスの隣の御者の席へ着いた。

 ルイスは道を覚えてしまっている様で迷いなく、ギルドへはすぐに着いた。ギルドは先ほどとは違い多くの馬車が停まり賑わっている。ギルドから人が出て来ると共に僕達の方へ駆け寄って来た男が居た。

 彼は、腕に白い布を巻き、その布と同じ物だろう物を僕に手渡しながら、「この布をつけあの馬車について行ってください」と言い、僕達の「ありがとうございます」声を聞き終わらずに、「御武運を」と言いながら、外れに置かれた馬車に乗って行ってしった。

 ルイスはふたたび馬車を走らせ、指定された馬車の横に並ぶと、向こうの馬車も走りだすが、そんな馬車からがたいのいい男が跳び降り僕達の居る御者の席がいっぱいだと確認すると、後ろの荷の方へ飛び乗った。

 彼の重さで馬車は、少しガタンと音をたてる。そしてぬいぬいの声と、「いいから、いいからかたい事を言うな」と言うギルド長のサルメスのデカい声が聞こえてきた。そしてすぐにし御者と荷台の壁の部分を隔てる小窓が開き、サルメスが話し出す。

「挨拶や名のり合いたいのは気持ちはあるが、なにぶん時間が足らねえ目星をつけた奴らの根城はもうすぐだ。まぁ計画らしい計画は無いが、住宅が密集してやがるから最低限の魔法だけにし、武器でぶっ飛ばす方向で、他の住宅への被害が最低限にしてくれ、そしてハヤト、お前は俺と来て木性の魔法でどんどんやちらを捕獲して行ってくれ。以上だ。で、何か質問は?」

 彼が言い終わと荷台に居るフィーナの声が、「私も木性の魔法が使えるので前線に出ます」と言うと――。

 「じゃー嬢ちゃんは、別の方向からの部隊へ入って貰う。そちらの部隊は、支配下に置いた部屋の確保と隠れている残党の発見が主な仕事だが、気は抜かないでくれよ、まぁわかっていると思うが」

 「では、私は回復が出来ますので、そちらにまわります。怪我人が居たらこちらまで下がる様、お願いします」

「うむ、貴方が聖女ルナ様か、これは頼もしいね」

「俺は前線に行く」
 不敵な笑いをする、ぬいぬいは杖をカツと荷台にそこに当て音を立てた。

「お前は、あの……。あんたの魔法の腕は、今度見せて貰おう。それとは別に今日の打撃の方も期待しているがな」

「では、私は部屋から出て来る者はは撃ちますね」ルイスはなんかるんるんだった。

「うむ、頼んだ」

 サルメスの言うように、今回の標的の家は近かった様だ。あまり時間もかからず先頭を走る馬車が停まった。停まった場所は大通りの道路で、先についた馬車が何台も停めてある。しかし先ほどのギルド前の様な賑わいはないので、他のアジトへ向かった馬車もあるのだろう。

 僕らは馬車から降りると先ほどの先ほどの白い布を配り、それぞれに巻き付けると強化魔法をしたのち、全員でルナによる祝福を受ける。その段階でルイスは高い塔へ向かい走って行ってしまった。

 サルメスのもとへ、新たな男が駆け寄ってくる。彼らは二言三言会話すると――。

 サスルメスが、「嬢ちゃん達はこの男について行ってくれ、わかっていると思うが決して前へ出ようなどと思うなよ」そう念を押したのち、僕達はそこで別れる。

 サルメスの後をついて真っすぐに裏路地へ向かうと家の影に3人の男達が先に来ており、彼らの中の一人が目の前の家を人差し指と中指の2本の指で指さす。

「敵はボスと後10人ほどの模様」彼の短い報告が終わると、サルメルが呆れたように言う。

「うちのギルドに喧嘩を売っておいて、おうちでねんねしてるのか? 寝ずの番で俺達の歓迎パーティーの飾りつけの用意してねとは……、うちも甘く見られたもんだ」

 別の男が、今度は、時計を見ながらカウントを始めた。5・4・3・2.1

 そして物音を立てずに、一斉に動き出す。家の鍵は、すぐさま破壊され、どんどん警戒しながらも奥へと進んで行く。下調べしてあっただろう階段の場所へたどり着くと、階段を駆け上がったと思ったら、サルメスがその大斧で次々扉を破壊しながら進む。扉の中に居る団員たちを、残りの人数で手分けしながら次々捕まえて行くが、一番の奥、ボスが居るだろう部屋から凄い音が聞こえ、壁が飛んできてそれを避けたところ捕まえた団員にそれが当たると言うアクシデントが起きた。
 
 そいつの足を抱えて、ずりながら隣の部屋へ連れて行き、蔦でグルグル巻きの団員の隣に寝かせると、念のため回復を書けたのちその場を離れる。ふたたび部屋から出ると壁はだいぶ無くなっており、そこから大立ち回りをやっているサルメスと向こうのボスが見えた。

 壁などがあり、到底使う事の出来ないと思われた、武器を振りまわす二人。異世界やば……。

「サルメス、助けはいりますか?」

 僕は、そう声をかける。

「いらん、それよりそこのブランデー達を確保してくれ、そいつは極上な味だからな!」
 そう言うと白い布を付けた、4人でせっせとブランデーなどを運ぶ。全部運び終わる前にかたが付いた様で、部屋に戻ると先に瓶のふたを開けて飲んでいるサルメスがいた。

「勝利の夜に乾杯だ」

 そう言ってボスを片手にずって行く。慌ててそのボスの足を持ってついて行った。

 戦闘が、終わると酔っ払いの群れとイライラしている、御者達とで朝日の中ギルドへと岐路に着いた。

 僕らの馬車を走る横を、サルメスが御者席に座る馬車が駆け様としている。

「勇者、お前も飲めー!」とボトルを投げて寄越したが、荷台から彼が酔っぱらって落ちないか心配である。


           つづく
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