魔王がやって来たので

もち雪

文字の大きさ
156 / 292
旅立った僕達

海の見える丘で

しおりを挟む
 ソイルドソレルの街のギルドは、ホイルトツェリオ城下町のギルドの様に兵士だった者が集まるある程度規律が保たれたギルドと違い、ここは海を渡りあらゆる荒くれ者が集まるギルドである。

 そんなギルドの応接室で、僕とぬいぬいは、僕達の担当のヴァリス嬢が面談していた。

「ヴァリスさん僕たちこの街で結構、ギルドクエストをこなしましたよねぇ? そろそろ僕たちも次の街へ移ろうと考えています。クエストの進み具合っていかがなものですか?」

 彼女は、背筋を真っ直ぐにし、戸惑いの表情を浮かべる。

 「そうですよねー、わたしもそろそろ言われるじんゃないかな? と思ってました」
 彼女は、ピアノでも弾く様に指をこまめに動かす。

「では、そろそろ出発しても?」僕は、腰を浮かし気味に返事をまった。

「私もそう言ってあげたい!……そう言ってあげたいんですが……、何せ、人手不足でこの街は海からも陸地からも人が集まる分、有能な人もいますが、そうでない人も大勢居る。しかし彼らを教える教官が限られています。そうすると育成が全然間に合わない。本当に私もどうしようか!と思ってました。」

「はぁ……」僕は嫌な予感をひしひしと感じていた。と言うか、困った事態決定だった。

「でも、みなさん勇者様一行が現れて、私達も歓喜、感涙ですよ。最近ではまだ? って言われても怒鳴られる事は無くなりました。ありがとうございます。勇者様」

 彼女は僕たちより、辛い事態に瀕していた様だ。何故、こうもギルドはブラックなのか……。

「わかりました……。今日ある分で、優先順位高いクエストの説明書ください……」

 僕は左手で顔を覆いながら、右手を差し出す。

「はい、これです」

 ヴァリス嬢は、用意してましたとばかりに、背中のバインダーを僕の右手に乗せた。

「お前、いい鴨だな。俺達、この世界の人間にはありがたいが、時が過ぎるのは早いぞ」

 僕の肩に手を乗せ彼は言うが、小学生みたいな既婚、子持ちに言われても実感がわかない。

 僕は、このギルドクエストを持ってルイスの元に行かねば、彼は何て言うだろう……。

             ☆

「やはりですか、彼女手強い感じですからね。でも、ハヤトも人がいいだけでは駄目だって気づけましたよね?」

「本当に面目ない……」

 ――わかってはいるが、さんざんRPGゲームやり込んでいるので、いつもこっちの選択をしてしまう。刷り込み効果なのだろうか?

 そして僕たちは海についた。海では、やはり海の近くのお店の商工会の人たちが待っていた。それぞれ割烹着や白衣を身に着けている。

「頑張ってください。勇者様」「この街を救ってください」

 彼らは口々に僕らそう言うと、商工会の偉い人に連れられて、海へ向かう僕たちを彼ら拍手で見送った。

「やはり人助けはいいものですね」「ね!」

 と、ぬいぬいとルイスに言ってまわった。

「わかった、わかった」「子犬の様で可愛らしいですね。ハヤトは、木の棒でも投げましょうか?」

 と、言う返事だった。海岸線に来た。海のはドーンと大きなタコがいた。

「「デビルフィシュ」」パーティメンバーに、動揺が広がる。

 ――あ……なるほど、海外ではそう言いますよね……。

「みんな、タコ食べた事ないの?」

「我を食べると言ったのか人間よ」「私は、食べた事ありますよ」

 タコとフィーナの話が重なった。もちろん、フィーナを取った。

「へぇー狐の里で食べたの?」

「我を無視するな下等な陸上生物よ」「いえいえ、魔王様が焼く機械と材料と作り方の本を買ってくださったので、みんなで一緒に作って食べました。」

「魔王様?」「へぇーやっぱ魔王は、何でもありなんだ……」

 僕は、魔王に若干引いた。タコも若干、意味は違うが魔王に引いてた。

「その様な見え透いた嘘を、魔王様がそんなアットホーム事をするか!?」

 そう言うと、タコは、水面をバシバシ打った。水が当たると普通に痛い。

 「するのに!」フィーナは、少しふくれつらだった。

 「おい、いつまでもくっちゃべってないで、さっさとやって次のクエスト行くぞ!」

 ぬいぬいが、そう言い地面を、魔女の料理をかき混ぜる様な手つきで、地面に幾何学模様の絵を描いていく。

「落ちろ!」

 その言葉と共に3本の大きな光の剣が、タコを貫いた。

 「この略式魔法方陣は、剣が三本か……略しすぎな……」
 
 そう言って魔法陣を、ごそごそ書いている。

 素早いルイスは、なんか偉い人へ挨拶をし、何かいっぱい貰っている。

「では、皆さん次へ行きますよー!」

 そして僕達を乗せ馬は行く。その道中に、頂き物の海鮮料理を食べた。ルイスが食べている間は僕が馬を操った。

 そんな僕らの珍道中。

         つづく
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

「お前の戦い方は地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん、その正体は大陸を震撼させた伝説の暗殺者。

夏見ナイ
ファンタジー
「地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん冒険者アラン(40)。彼はこれを機に、血塗られた過去を捨てて辺境の村で静かに暮らすことを決意する。その正体は、10年前に姿を消した伝説の暗殺者“神の影”。 もう戦いはこりごりなのだが、体に染みついた暗殺術が無意識に発動。気配だけでチンピラを黙らせ、小石で魔物を一撃で仕留める姿が「神業」だと勘違いされ、噂が噂を呼ぶ。 純粋な少女には師匠と慕われ、元騎士には神と崇められ、挙句の果てには王女や諸国の密偵まで押しかけてくる始末。本人は畑仕事に精を出したいだけなのに、彼の周りでは勝手に伝説が更新されていく! 最強の元暗殺者による、勘違いスローライフファンタジー、開幕!

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

処理中です...