魔王がやって来たので

もち雪

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さよなら海の見える街

子守唄

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 暗闇を歩く僕らの前に、微かな明かりが見えた。それが正解であるようで、僕らはその村へと足を踏み入れた。

「ここでいいはずです」

 ルイスがある家の前で、そう言う。その家には蝋燭の明かりだろう。電気の明かりと比べる微か光だが、それでも窓の外を明るく照らす。

 この場所で、この窓だけからこぼれ出る光、他の窓は風を遮るのみの役目しか今もたない。

 僕はその明かりの灯った家をノックする。

「はいはいはい」と出てきたのは、まだ幼い少年だった。

「こんばんは、夜遅くすまないが、ここへ辿りついたばかりで泊まる家がないんだ。床での上いいので、寝かせてくれるかな? 彼にはそれが必要なんだ」と、後ろのぬいぬいを彼に見せる。

「いいよ、入って」
 少年は簡単に、僕らを入れてくれた。

 室内へ入って見てみると、その家はぱっと見は、僕の知る平均的な村の家の様に思えた。レンガの床にかまどがあり、かめ、かまどのための薪がはじに重ね置きしてある。

「僕はハヤト、彼はぬいぬい」

「こんばんは」ぬいぬいの言葉数は少ない。

「どこから来たの?」と、その子は僕の手をとり、その子は言った。

 彼の髪は、短く揃えられ、服は粗末なものだが、不潔というわけではない。

「海の方から来たんだ。君も一緒に行く?」

「行かない、お母さんを待っているから……」

 僕はその子と目線を合わせる為に座る、そして彼の両手を掴む。

 少し、痩せているかもしれないが、問題になるほどじゃない。

「それは残念。お母さんはどこにいるのか思い出せたら、僕が君をそこに連れて行く。そう言うのはどう? それにはまずお母さんの居場所を、思いだして貰うしかないけどね」

「それも駄目、お母さんは隠れてなさい。と言ってお別れしたから……」

「それはどこで?」

「お願い! それ以上聞かないで! 怖いから! ヤダ!!」

 彼の叫び、それと同時位で、僕の額が熱くなる。

 そして何かが僕の頬をつたった、慌てて手で拭き取ると、手の甲は赤く染まった。

「おい、大丈夫か?」

「大丈夫じゃない。血を拭き取りたいから……ぬいぬいからも井戸まで、案内してくれるようその子に頼んで」

 少年は、「水ならあそこに」と、瓶を指さすが、瓶の水はすでに底をついている。

「なんで……」少年の記憶はやはり、全てを覚えているわけではないのか?

「なんでか思い出せそう? それくらいなら待てるよ」

 僕は彼に過去を思い出して貰うために、質問をし続けているが自分でも彼をせかしていると思ったが、正解はいつも通りわからない。

「ダメ、ダメ、ダメ!」

 彼がそう言うたびに、物が飛んでくる。ポルターガイストなのか? 僕らは机を盾にして隠れいたが、長くもちそうにない。

 やはり人間との会話で、正解を探すのは難しい。

「これは駄目そうですね…」

「だから言っただろ…」

「でも、ぬいぬいが子どもに扮して彼の心に入り込む事はしてないじゃないですか?」

「いいから早く呼べ!」

 不安だな……彼女に任せるのは、しかし1番それが正しい。だが彼女1人を危険に晒すの絶対に避けたかったのに!

 しかし打つ手がなくなり、彼女を呼ぶ羽目になってしまった。

「ルナ来てください! 失敗しました!」

 ガタン!バシン!

 木片がこっちまで飛んでくる。

 ルナ、ルイス……2人が、室内に入って来た! 刀で、壁をぶち破って!?

 えぇっ……師匠の弥一さん知らせて良いか判断に迷う上達ぷり。

 絶対ルイスの武士道は『THE SAMURAI!』みたいな題名の付く、海外の間違った認識でとらえられた、とんでもない強さを秘めた感じの侍として極められている。

 異世界だからこうなってしまったのか、ルイスいや、彼の一族の血がとんでもないのかどっちだ!?

 ルイスが、壁をぶち壊し、刀を納めるとルナが少年の前へ出た。

「母ちゃん……?」

 ――あんな若い母ちゃんがいるか?! って言いたいが、異世界だからないるのかも?……。

「こんばんは、私は聖女と認定されました。シスターです。こちらで助けを必要としていると聞きやって参りました」

「聖女様……」
 少年は、ルナに対して祈った。教会はここでも強く根付いているようだ。

「お母さんに会いたいです。でも、僕はどうしたらいいのかわかりません。帰るべき道がみえない……」

 少年はルナをみて安心したのか、彼の目から次から次へ大粒の涙が流れる。

 彼はさめざめと泣き、その手はルナへと繋がれている。

「では、私と外へ行ってくれますか? 貴方を帰す準備はそこに用意してあります」

 彼が進むべき道の扉をルイスが開け、ルナと少年は一緒に外へ出る

 ルナはその位置まで来ると、右手を肩の高さまで上げ、呪文を唱えると魔法陣が発動する。

 魔法陣へと彼を立たせたら、彼と手をつないだまま詠唱を始めるが……彼女はいきなり黙ってしまう。

 少年はルナの目を見つめると、ルナは少年をある方向へと向かせると途切れ途切れにある歌をうたいだす。

 優しく、静かに……、少年は驚く様にルナを見た、しかしルナはある方向を見て一生懸命に歌をうたっていた。繰り返し繰り返し。

 少年も僕もその方向を見るが、僕には何も見えないが……でも、少年は違ったようで……「お母ちゃん?!」と、言い、ルナの手を離しその方向へ走り出したと思ったら突然、消えていた」

「終わった様です……」ルナは少年の向かった先を見ていった。そして彼女は天を見上げる。
 僕には満天星空が見えたのだが、彼女はどうだろうか?

 それからは広場でテントをはり仮眠をとるがいろいろな声が代わる代わるに僕へ助けて欲しいと、訴えかけるので、僕は寝られず……他の男性陣は僕の「わかりました」と言う返事で寝られなかっただろう……と、思っていた。

 明けた朝。

「ぬいぬい、おはようございます。昨日はうるさくして、すみませんでした」

「ハヤト、力のない者は、死者の声聞かない事は正しい行いだが……キレちらかすのは違うからな」と、諭され。

「え?…………」

「やはり記憶がないんですね?! 皆、寝ているハヤトさんの回りで泣く、わめくは大変だったんですよ」

 僕は、聖女ルナ程ではないが、勇者の心が自動的に魂を労い、助ける……いや、僕自身の優しさの性質で全てを受け入れるものかと思ったがどうやらそうではないらしい。まぁ、寝起きが悪いって性質は発動したらしいが……。

「えっ……それはすいませんでした……。もしかしないでもルイスも……?」

「ルイスさんは……ハヤトさんの回りが慌ただしくなった初期に「外で寝ます!」って宣言しすぐ出ていってしまいました。たぶん村で泊まるってなった時点、場所を確保していたのでしょう……」


 と、言う事もあり、予定より多くの魂を相手に慰霊祭を朝、昼と執り行う事になった。

 そしてゴーストになってしまった者がいないかと、確認の為にもう一晩泊まった。

 その間に、誰かがルナのにあの歌の事を聞いた。

 彼女は「私もあの歌については知りません。誰かが近くで優しい声でうたっていたので、あの少年に必要なのはこの歌だと思い歌ってみました」と、彼女はそう言ったそうだ。

 続く
 
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