魔王がやって来たので

もち雪

文字の大きさ
215 / 292
新しい若き王とともに

ハーピーをなんとかして欲しい

しおりを挟む
 ギルドの受付に立つソクヤは、金髪だが、容姿に日本人の僕と似た所がある。

 そんな彼は、ある絵を僕らの前に提示する。顔や上半身は人間に近い。しかし手は翼になっていて、足は羽毛に覆われ、足先の爪は猛禽類の様に鋭く。
 
 鳥の部分は筋肉質なのに、人間の部分は乙女の様ないでたちだ。
 
「ハーピーと言う魔物です。この魔物は、うるさく、食べ物を食い漁り、しもの躾がされていません。そして今回の依頼はこちらです」
 
 彼は僕らの前に、依頼書を押し出した。
 
「は……」「わぁ……」
 書類には先程、ソクヤの話した理由をあげ、最後に、こう締めくくる。
『だから、ハーピーをなんとかして欲しい』
 
 僕は書類から顔を上げて、受付のソクヤにするべき質問をする。
 
「なんとかって?」

「依頼人曰く、なんとかは、なんとかだよっと言ってまして……」

「何で、それを受けちゃったんですか?!」
 ミッシェルが怒った。まぁ、僕も、そう思っている。では……。

「では、ギルドはどうするべきだと思っているのですか? 殺す、捕獲する? 山へ追いやりますか?」

「うちの上層部の考えは、こうです。そういう事も含め勇者様方にお願いしようと……」

「「勇者は何でも屋では、ありません!」ないんですよ!」

 僕らの声にあたりのざわめきが、止まった。

「えっ、勇者様?」その一言から、ふたたび話し出した、こそこそと、明らかにこちらに聞き耳を立てている。……気がする。

「ハヤト様、大変心苦しいのですが、皆様をお頼りするしかないのです」

「わかりました。うちの白百合同盟の仲間の元に、一度持ち帰って、1.まず、調査します。そしてどうするか結論を出します。2.それを依頼人に提示してください。そして依頼人とギルドで結論をだしてください。3.うちの見解と合わないようでしたら、よそのパーティーなりに、まわしてください。そしてもちろん1の作業だけでそれ相当の報酬を希望します。お金に汚いと思われるかもしれませんが、悪い前例は残せません」

 僕は、ルイスなら言うだろ台詞を言い切った。もちろんこんな時、ルイスがいればいいのに……と、思ったからだ。
 しかし僕はもう頼るだけの存在では無い。

 ソクヤさんは、それを自分用の控えに書きとめながら聞いていた。
 
「ハヤト様、ありがとうございます。この条件でこちらは大丈夫です。私がなんとかします」
 
「ありがとうございます。では、後日」
 ソクヤにそう挨拶して、僕らはギルドの受付を離れた。

「ミッシェル、終わったから肉まん買って帰ろう!」

「ハヤトさん、またですか? 体が肉まんになりますよ?」

 そう言って僕らは、ギルドの玄関の扉を開けて、名物の肉まんを売っている店へと足を向けた。

「……ハヤトさん、白百合同盟ってなんですか? 勇者と、『ゆ』しか合ってせんよ?」

「じゃあ、ミッシェルが、次回のために考えてよ」

「勇者って名のればいいでしょう」
 
「頻繁に、肉まん買ってたとか、後世に残るのは嫌なんだよね」

「そんなものですかね……」

 それにしてもハーピー、説明を聞く限り住み着いて嬉しい感じじゃない。

 しかしそんな存在は、僕の世界にも山ほどいた。突飛とっぴな例をあげると、熊や野良犬、人間に大切に飼われている動物でも、飼い主によっては忌々しい存在になってしまう。

 ましてやここは異世界、人間の生命にも優しいとは言えない世界だ。出来るだけの調査をして、結論を出すしかない。

 しかしそうやって提示した解決案の3は、守らない気もする。本当にどうなる事やら?

 そう考えながら進むと、美味しそうな肉まんの匂いが漂って来た。頭を切り替えて肉まんの種類を選ぶ事にするか……。
      つづく





 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

「お前の戦い方は地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん、その正体は大陸を震撼させた伝説の暗殺者。

夏見ナイ
ファンタジー
「地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん冒険者アラン(40)。彼はこれを機に、血塗られた過去を捨てて辺境の村で静かに暮らすことを決意する。その正体は、10年前に姿を消した伝説の暗殺者“神の影”。 もう戦いはこりごりなのだが、体に染みついた暗殺術が無意識に発動。気配だけでチンピラを黙らせ、小石で魔物を一撃で仕留める姿が「神業」だと勘違いされ、噂が噂を呼ぶ。 純粋な少女には師匠と慕われ、元騎士には神と崇められ、挙句の果てには王女や諸国の密偵まで押しかけてくる始末。本人は畑仕事に精を出したいだけなのに、彼の周りでは勝手に伝説が更新されていく! 最強の元暗殺者による、勘違いスローライフファンタジー、開幕!

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

処理中です...