魔王がやって来たので

もち雪

文字の大きさ
226 / 292
新しい若き王とともに

草原での修行

しおりを挟む
 僕とミッシェルとオリエラは、前衛の武器の練習をするため草原へと来ていた。

 実はルイスも「今回は会議の進行内容と、それに対する貴族の質問とその回答について、宰相さいしょうに書類と詳しい内容は口頭で伝えたので私も練習に参加しますよ」と、仏の笑顔で言っていた。

 しかし今日になり「本日の会議を始めようとプリントを配った途端に、貴族達は書類の結論に対してどう言う事だと言い出し、だからそれを今から会議で質疑応答という形でやりますよと、言っても全体的な流れは、わかっている時間の無駄だ。私の知りたい部分について知りたい! というバカばっかりで会議が進みません! ルイスさんが来てくれないとダメなんです!」と言う第二書記の懇願に折れる形で、良く切れるカミソリな冷笑を浮かべたルイスは、第二書記連れていかれてしまった。そして今、フィーナとウンディーネに見守れながら城下町から離れた景色のいい場所で練習をやっている。
 
「行くよーー!」
 
「はい!」
 
 僕は槍替わりの木の棒を持ったミッシェルにテニス位の大きさのボールをどんどん投げる。
 
 子どもの頃やったドッチボールのように当たったら死認定。ミッシェルは最初、ボールを避けれたり、はじき返すが、オリエラも投げる側に加わると難しい様でミスが多くなる。

 しかし選手交代オリエラは、次から次へと二人が投げても当てて、そして避けていく。

「オリエラ、凄いやはり相手の体の癖とか、息遣いでわかるの?」

「そうみたい。肩とか、目線や行動パターンの癖とかポイントはいろいろ見てはいるけど無意識に身につけたものだから、どうやるかとはわかんないんだよ」

「やはり積み重ねなんだね……」僕は少しがっかりした。
 
 そこへウンディーネがやって来て、「そろそろ昼食しょう」と言って来てた。

 彼女の頭には草がついていて……寝てた?

「そうだね、そろそろもういい時間だ」とオリエラは伸びをする。

「は……やっとですか……」

 そう言ってミッシェルは、ボールを拾い始めた。

「今日のお弁当何か見た? ウンディーネ」
 
「私のお弁当はフルーツのキッシュだったよ」
 
「じゃあ、なんかのキッシュか、ここのはどんな味なんだろう」
 
 そんな事を、言いながらボールや剣や槍替わりの木を片付けると、僕らはフィーナのいる紺色のシートまで荷物を持って歩いて行く。

 フィーナの横には、彼女が用意しておいてくれた、このムーンドルイのコック長の作ったランチボックスが2つに分けて重ねられている。その隣のプレートの上のコップの中のお茶も彼女が用意してくれたものだろう。……いや、ウンディーネもちゃんと一緒に手伝ってくれたに違いない。
 
 僕たちは、各自の魔法で手を洗い、いただきますやお祈りをしたりしてからみんな一緒に食べ始める。

 ランチボックスの中には、ほうれん草のキッシュや甘辛い牛肉のキッシュなどいろいろなキッシュとフライドポテトが少し入っていた。

 どのキッシュもしっとりして素材の味がひきたっていて、王宮の料理だから当たり前かもしれないが、どれも美味しくってペロリと食べてしまった。
 
 食事の後は休憩が入る。

 お茶を飲みながら、世間話をしたり、今後の話をしたりするのが、今日は僕の悩みを打ち明けるてみた。
 
「あのさ、僕は戦闘で、怪我によって途中で戦線離脱することが多いから、――をどうにかしたいんだ。なんかこうすればいいとかあるかな?」

 オリエラが、「う……ん」と言ったのちに、「うちは盾職が居ないからしょうがないよ……。学校ではまず盾職が主導でパーティー集めて、盾の考え最強パーティー作るか、不遇職がまず盾を確保してパーティー組むのが普通だったからな……」

「えっ!? そんな感じなのにミッシェルも槍をやろうと思ったの!?」

 驚いている僕に、ミッシェルは子どもに教えるようにやれやれ感を出しながら話し始めた。
 
「いいですか、ハヤトさん。盾はムッキムキか、家に伝わる、盾が無いのと魔王クラスには無理なんですよ。盾ジョブが欲しいならハヤトさんやって下さいよ。そして盾に反撃スキルや、盾の硬度バンバン上げてくださいよ」
 
「そんなことやったら帰って来た時、バジリオ師匠に、次はどんな顔して会えばいいの!? 最後の訓練の時、二人して師匠に激励されたじゃない!」

「あっあれですね。僕はそろそろハヤトさんに師匠からの伝言伝えないといけませんね……。オホォン! ハヤト、伝説の槍の武器が無かった場合、今の状態ではパーティーを安全に活動していくのはこんなんかもしれない。ジョブを転向する事も考えろ。リーダーが、考える事はパーティー全体の事であって、己自身の事ではない。だそうです。」

 「なんで、今……、そして僕に直接ではなくミッシェルに?」

 ミッシェルは、大変困惑した顔をしている。言いにくい事なのだろうか? 

 「僕がこの伝言は、あのハヤトさんが枝豆尽くしの皿を作りだした、祝賀パーティーの時です。師匠は、まず僕に『ハヤトの居場所は知らないか?』と言ったのですがどこにも居ないので、『フィーナさんとバルコニーにでも行ったのではないでしょうか?』と言うルイスさんの意見を聞き、バルコニーへ行った様ですけど、すぐ帰って来て僕に伝えて帰りました。次の日早いという事らしくって」
 
「あっ……」

 僕とフィーナは、顔を見つめ合わせた。
 
 その後、ちょっと無口な、僕とフィーナだった。

              つづく
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

「お前の戦い方は地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん、その正体は大陸を震撼させた伝説の暗殺者。

夏見ナイ
ファンタジー
「地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん冒険者アラン(40)。彼はこれを機に、血塗られた過去を捨てて辺境の村で静かに暮らすことを決意する。その正体は、10年前に姿を消した伝説の暗殺者“神の影”。 もう戦いはこりごりなのだが、体に染みついた暗殺術が無意識に発動。気配だけでチンピラを黙らせ、小石で魔物を一撃で仕留める姿が「神業」だと勘違いされ、噂が噂を呼ぶ。 純粋な少女には師匠と慕われ、元騎士には神と崇められ、挙句の果てには王女や諸国の密偵まで押しかけてくる始末。本人は畑仕事に精を出したいだけなのに、彼の周りでは勝手に伝説が更新されていく! 最強の元暗殺者による、勘違いスローライフファンタジー、開幕!

婚約破棄&濡れ衣で追放された聖女ですが、辺境で育成スキルの真価を発揮!無骨で不器用な最強騎士様からの溺愛が止まりません!

黒崎隼人
ファンタジー
「君は偽りの聖女だ」――。 地味な「育成」の力しか持たない伯爵令嬢エルナは、婚約者である王太子にそう断じられ、すべてを奪われた。聖女の地位、婚約者、そして濡れ衣を着せられ追放された先は、魔物が巣食う極寒の辺境の地。 しかし、絶望の淵で彼女は自身の力の本当の価値を知る。凍てついた大地を緑豊かな楽園へと変える「育成」の力。それは、飢えた人々の心と体を癒す、真の聖女の奇跡だった。 これは、役立たずと蔑まれた少女が、無骨で不器用な「氷壁の騎士」ガイオンの揺るぎない愛に支えられ、辺境の地でかけがえのない居場所と幸せを見つける、心温まる逆転スローライフ・ファンタジー。 王都が彼女の真価に気づいた時、もう遅い。最高のざまぁと、とろけるほど甘い溺愛が、ここにある。

処理中です...