魔王がやって来たので

もち雪

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新しい若き王とともに

満月の夜、狼追いしぼくら

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 草原、遊牧民の冬場の滞在場所に僕らはいる。
 
 僕たち、勇者パーティーに貸し出された、彼らの大きなテントの中モコモコ羊の洋服を着る僕。モコモコ羊の洋服を着るスフィンクス。
 
「羊くちゃい」
 そう言ってスフィンクスが不平を漏らす。

「うん、羊臭い」
 
 「仕方ないですよ、この洋服は、寒い季節に毛をかった羊に着せるやつですから」

 立っている僕らの前で、彼女は椅子に座りそう言う。

 フィーナは、羊の洋服にする前の素材を僕にあわさせて、手で縫ってくている。

 今、袖の部分を荒く指サックをはめなが、チクチク縫っていてるところだ。
 
 そして今回のギルドクエストは、羊が狼男ぽいものに襲われる事件多発し、去年の2~3月に生まれた子羊を背負い、逃げてしまうという話だ。

「その場で食べないなら人間なんでは?」

「しかし狼の様に毛むくじゃららしく」

「狼の毛皮を被った人間では?」

「それが子羊を背をって凄い早さで、逃げてしまうのです」

「馬鹿力の足の速い人では?」

「もう、ハヤトさん、そんな足の速い、馬鹿力の人間なんてみんな怖いに怖ってるじゃないですか! 四の五の言わず受けましょう! 報酬がいいですし!」

 そう言うミッシェルに寄り切られ、僕らは狼男捕獲作戦に乗り出した。

 そして前もって準備をしていると、スフィンクスがやって来た。

「えっ、子羊? 子羊見に行くの?」

「うん、行くよ」

 スフィンクスも子どもだな。子羊が好きなのか。

 スフィンクスの口からよだれが出る。

「子羊は美味しいんだよね」
 スフィンクスもまだ魔物ぽい事言うんだな……。

 「ラム肉のステーキ美味しい!」
 スフィンクスのその言葉を聞き、僕は慌ててルナを見る。

「教会の付き合いで、食事に行ったら用意されていて……」
 ルナが、もじもじしながら言う。結構珍しい。

「でも、これからない様にそこはちゃんとはっきり言いましたから! 食文化を学ぶ事は大切ですが、今ではないとちゃんとはっきり言いました。 でも、好意で毎回違う事で贅沢な事をなさるんですよね。悪気はないと思いますが……」

「ルナ、そこは怒るのではなく、そうされて悲しいと伝えた方がいいよ。伝え方を変えると伝わるって事があると思うよ」

 ……たぶん、ルナに怒られるのが喜びの人ぽいし……。

「そうですね。今度そう伝えてみます。ありがとうございます。ところで、その狼男の件ですが、わたくしも参加しょうと思っています。お昼は教会へ行ってしまう分頑張らせていただきます」

 そう言ってルナは深々と頭を下げた。

「マスター行くなら、僕も行く!」

 「ありがとうお願いするよ。僕の世界では教会のシンボルの銀のアクセサリを溶かして、銀の弾丸と言う遠隔武器の矢じりの様にして、狼男に打ち込む事で倒せるという話もあるから、ルナが居てくれた助かるよ。スフィンクスもね敵は早いし、空から追いかけられると助かる」

 しかしスフィンクスが、現地につき羊たちの群れへと行くと羊たちは川の中の大岩から離れる川の流れのように、スフィンクスから離れていってしまう。

 そこで今回の作戦には欠かせないスフィンクスのため、試しでスフィンクスの匂いを消すために羊の匂いたっぷりな洋服を着せる事になったのだ。

 羊たちはおかげで、洋服を着た事で少しは警戒が解け、逃げて行かないレベルになった。

 こうして僕とスフィンクスは、真夜中の今、羊の毛糸の帽子を被り生まれた1年目の羊たちがいる柵の中にいた。
 
 子羊はいい。僕らを見て頭突きとかしても、まだギリギリ耐えられるレベルなのだ。

 しかしここで、思わぬ問題が起きた。

 ルナに従い、早寝、早起きの良い子のスフィンクスは、夜遅い時間になると寝んねタイムになってしまうのだ。

 下手に起こし、その声で犯人に気づかれるわけにもいかず、そのまま寝かせる事に。

 あたたかい寝るスフィンクスと、何故かスフィンクスが寝ると集まる、羊達に暖をとりながら待つている、満月の下、狼男が現れた。

 スフィンクスを揺らして起こそとするが、彼は起きずに、狼男が羊を担ぎ後ろを向いた時、「スフィンクス、起きない!」小屋から出て来たルナがそう叫ぶ。

「Yes sir! 」

 ――イエッサー? 軍隊かな? とりあえずスフィンクスは、ルナの一言で起き、「乗ってパパ!」そう言って空を駆け上がるのだった。
 
 もちろん狼男はルナの声には気づいたが、自分の足のはやさを過信してか、羊を降ろす事は無かった。

 空から見降ろす中で、狼男を探すのは獣の目も合わせ持つスフィンクスには簡単だったようで、楽に追尾出来ているようだ。

 森の上をグングン進んで行く。

 そして岩場の上で、僕らは降り立つ。

「森の外れの岩場の下の小屋に入って行ったのね」と、スフィンクスは見上げ言うのである。

 あ……授業参観で、子どもが発言した時の気持ちってこんな気持ちなんだ……。

 誇らしいような、離れて行っちゃったような……そんな気持ち。

 そう思っていると「パパ、僕のいう事聞いていない。マスターはちゃんと聞いて聞いてくれるのに」

 そうむくれるスフィンクス。

「ルナは、ルナ比べないで欲しい」

「だって、だって」

「それにしてもスフィンクス頑張ったな。これで狼男が捕まりそうだ」

「僕にかかれば簡単だよ!」

 そう、どこかで聞いた事ある台詞を立場を変えて話す僕。やはりこういう会話って、言われて来た言葉がだいたい出るもんなんだな。

「あっ、みんなが来たよ」
 僕には真っ暗な森であるが、スフィンクスはみんなの動きが見えるようだ。

「行こう! スフィンクス」

 僕はスフィンクスの背に再びまたがり、空を駆け上がると、みんなのもとに降りる。

 一番先にやって来たオリエラが、スフィンクのたてる翼の音を聞きつけ空を見上げているので、僕は手をふると彼女も手を振る。

 そうしている間に仲間が、どんどん集まり――。

「では、いつも通りで」
「「はい」」

 そしてしばらく待つと小屋の扉が開く。その瞬く間のあいだに、オリエラが男の首筋へと剣を突き付ける。

「こんばんは。自害しても無駄なので、さっさと投降してください」

 僕は彼の目の前に立ち、彼の足元から上がったツタは、もう胸元まで行っている。

「子羊確保したよ」と小屋の入り口から現れたウンデーネが、めぇーめぇー言ってる子羊を抱っこして言っている。

 その後ろから、「こんなものも出て来た」そう言ってぬいぬいが狼ぽい毛皮を男の目の前に投げ捨てる。

 僕の世界ならウンディーネとぬいぬいが捕まるレベルだが、異世界セーフである。

 おねむリタイアのスフィンクスとそれに付き添うルナは、「」先に「もう寝ちゃーう」と言って今回の宿泊地へ飛んでいく。

 こうしてその男連れて夜の闇を残ったメンバーで帰った。

 途中で、本物の狼が現れたが「狼可愛い!」と言って子羊を持って追いかけるウンディーネに、キャインキャイン言いながら狼は去り、今回の依頼者の家に無事辿り着いたのであった。

     つづく
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