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新しい若き王とともに
緊急事態にやって来たかも
しおりを挟む身を切るような冬の朝の寒さの中、僕はマラソンを済ませて、剣の稽古に参加していた。
朝の寒さと打って変わって、戦う男たちの熱気の中、剣の稽古は剣道とも槍とも違う動きに動きが気持ちに追いつかない状態だった僕のもとに、緊急ギルドクエストを知らせが入った。
急にやって来たミッシェルと誰か彼は城下町生まれなのか、白い肌に明るい茶色の髪色をしている。
2人は慌てていた様で息急き切って、剣の稽古をしている師匠に「すみません、うちの勇者パーティーのリーダー来てませんか?」と、言って話しかけた。
「すみません、何か急ぎの様なので失礼します」と、僕の指導をしていてくれたセロさん言う。
「わかった。お前に急ぎと言うと、本当にやばいんだろ、片付けは俺がやっとく」
「ありがとうございます! 失礼します」
そして僕は走って2人の元へ行く、「緊急クエストです。急いで来てください」と、言われ何もわからずに幌馬車へと乗り込んだ。
そこにはパーティー全員の顔ぶれが揃っていた。
「どうしたの? そんなに重大な任務なの? ルイスまでいるし」
そうなのだ連日の会議と好き放題やれないストレスから、少し憂いをおびた詩人みたいになってたルイスがピチピチお肌で、馬車に乗っていた。
「私ですか? 緊急クエストというクエストで、勝手にハヤトに死なれても困るので、資料も今日の要点になるだろう事がらをまとめものだけ渡してこちらの馬車に飛び乗りました。後は知りません」
そう彼きっちり座りながら言うのである。
「なるほど……、で、緊急クエストって?」
「ここは、私から説明して良いでしょうか?」
彼はミッシェルと一緒について来た人物だが、この国ではこれだけフットワークの軽い人物は初めてかもしれない。
「私はセリフといいます。東の領土を貴族のナユス様のもとへ赴き、ナユス様のもとで出張、役場業務を行っております。今回、私の管轄する地区で子供の落下事故が起こり、迅速な対象を求めるという事で私に依頼がありました」
「落下事故? この平原ばかりの大地でですか?」
「はい、何かの原因かわかりかねますが、その
平原に雪山のクレバスの様な地面の裂け目が出来、そこに気づかずに子どもが落ちてしまっているのです。しかし我々の様な平地に暮らす民にはその救助は難しくそこで皆さんのお力をお力をお借りしたく」
「お子さんが落ちたのはいつですか?」
「今日の朝です」
「今日の朝?」
「はい」
彼は何気なく言うが、今日の朝、起きた事故に対応する為に草原を駆けてやって来て、緊急クエストの招集をかけ僕ら全員を集めたのか?
「お子さんの状況はどうなっていますか?」ルナがそう聞いた。
「足の捻挫はある様です。しかし問題はこの季節です。どこからか風が吹き込んでいる様で、吹き上がる風を地上からでも強く感じます。その為、子どもの体温低下と、救助の際での困難さにつながる恐れがあります。念のため毛布なども落とし、子どもに届けるようにしたのですが……」
「土の魔法で、地面を埋めたてて救出とか出来そうかな?」僕あぐらをかき、手で蓋をする仕草をしてそう言ってみた。
「それはおすすめしない」ぬいぬいは、それだけ言うと目をつぶり考えているようだ。
「なにせ昨日、出来たような岩や土の裂けなのでどれだけの強度かはわからないないので、子どもが助かった後には行っては貰いたいのですが、今は……」
「では、とりあえず僕が降りますか」
「いえ、私がまいります」
ルイスがいきなり名乗りをあげ、僕は思わず彼を見るが「私の鋼の糸の方が貴方のツタより岩を撃ち抜く性能は上です。その分落ちる事はないと思いますよ」
「フィーナとハヤトが地上からツタで、ルイスをカバーすればより安全だしね」
「では、決まりだな」
オリエラやぬいぬいも賛成し、皆の顔を見回しても反対するもの居なかったので、ルイスが降りることで決定となった。
そしてルイスは万全を期す為に、セリフに色々な事を聞く。
子どもの身長や体重はいかほどか、その土地の土の状態は粘土質なのか? 、セリフはどこの学校へ行き、どんな職歴だったのか子どものは好きか? 直属の上司は誰なのかまで。
結果、子どもの事はもちろん、セリフがホイルトツェリオに留学しており一時期は、ダイジスの下で働いていた事までわかった。
僕はそれを目をつぶり聞いていた。スフィンクスだけは、二人の横で「それすごいね」「わぁー」とか子どもらしく聞いていた。
そして僕たちの辿り着いた先には、断崖絶壁の裂け目が1メートル程口を開いていた。
その回りに人々が集まり子どもに話しかけている。
母親は涙を流しならだが、子どもには悟られないように、元気な声を作り、僕たちが来た時は「ドイルカ、新しい勇者様が来てくださったわ。あなたの事を絶対助けてくださるから後、少しまったていてね。」そう言いドイルカを元気付けていた。
遊牧民らしい父親も「息子をお願いします」と、何度も頭を下げてくる。
「あの頼んだもの用意出来ていますか?」
そうセリフが言うと、父親が「もちろん出来ています! 人がぶらさがっても大丈夫なように太い杭と崖際でロープが削れないよう丈夫な木の車輪を噛ませてあります」
「こっちも大丈夫よ。ここに入れば子どもは落ちないわ。実は待っている間にドイルカにここの中へ入るように言ったけれどこのままでは怖いらしく入らないのよ」
彼女の持って来たのは竹カゴに外から補強用の厚い布をかぶし四方の紐で吊り下げる形になっているが、小さい崖の中で10才ほどの子どもだけでそこで入る為に動くのも怖いだろう。
ルイスは上着を脱ぐと僕の軽装な方の上着に着替え、その上からロープを固定する為の安全装置をつけることになった。
「すみません、彼の好きなのぬいぐるみかおもちゃありますか? そういうものがあった方が落ち着くでしょう?」
僕がそう言うと、「俺が取りに行く」と、おじいさんが言う。
「じぃさんが行ったら慌てて何を起こすか、わからんから俺が行く」と父親が走って行った。
おじいさんが「失礼な」と、言っていさめられていると父親が帰って行ってお願いしますと言って、かごの中にいれ下ろすと、次にルイスが危な気なく降りていく。
そして彼は子どもと何か話していた後に、彼をかごの中に入れて「お願いします」と言うと、下から吹き上げる風に大きく揺れてはいたが、大人たちは彼が怖くないようようにゆっくりと持ち上げる。
そしてかごから出て来た子どもと、抱き合って喜んでいた。その横で、セリフと僕たちでルイスを見守ると、ルイスはまたもや危な気なく上がって来た。
そしてセリフを見つめにっこり微笑む。そしてセリフは少し頬を染める。
そして僕らは帰る事になった。村人たちはご馳走を用意してくれたが、僕らには前回会えなかった依頼者との用があったのだ。
そしてセリフは言った。「このお礼は是非に」
そしてルイスは答える「では、準備が出来ましたらいずれ……」
⭐︎
一週間後の夕方、城に入って行くセリフを見かけた。準備ができた様だ。そして夕食時、ミッシェルが「ウィッシュ王子の新しい秘書が増えたようですよ。ルイスさん良かったですね」と、そう言ったのであった。
つづく
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